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初白星狙うクリーンファイターズ山梨。オト ナタニエラら、魅力ある男たち多数

2021.10.04

今なお現在進行形、オト ナタニエラ(43歳)。「山梨に勝利をプレゼントしたい」(撮影/山形美弥子)

50:22キックでゴールに迫る横河武蔵野。HO清水新也を猛追する山梨のHO増田和也キャプテン(白衣・左)。(撮影/山形美弥子)
ポイントからそのままボールを持ち出し、積極的に仕掛ける山梨。(撮影/山形美弥子)
ハイパントキャッチと鋭いランで魅せたFB梶原僚太。(撮影/山形美弥子)



 トップイーストリーグAグループのクリーンファイターズ山梨が9月26日、横河武蔵野アトラスターズと敵地(東京・武蔵野市)で対戦し、0−38の大敗を喫した。リーグ開幕から3連敗と苦戦が続いている。

 この日は開始早々から、FB梶原僚太がハイパントキャッチと鋭いランで敵陣に攻め入り、山梨は積極的なアタックを見せていた。
 ポイントを作ってそのままボールを持ち出し仕掛ける手法は、相手の意表を突き効果的に働いた。ブレイクダウンの格闘でも、ボールの所有権争いに勝つシーンが見られた。

 横河武蔵野にチャンスが生まれると、FLオト ナタニエラ(43歳・元日本代表)、NO8マパカイトロ パスカ(41歳)らベテラン外国出身者勢が激しいタックルで圧倒し、相手の勢いをスローダウンさせた。

 自陣へ攻め込まれてもインターセプトで危機を脱し、自陣深く追い込まれてもSH岡新之助タフォキタウが相手スクラムの一瞬の乱れを突いてボールを奪い返すなど、局所的に切り取ると、山梨の奮闘には目を見張るものがあった。

 しかし、反則や危険なプレーもたびたび見受けられ、ミスが多かったことは否めない。
 山梨のキャプテンを務めるHO増田和也は、前半21分の横河武蔵野の先制トライを阻止すべく、素早く反応して猛追するも守り切れず。
「セットプレーの安定をテーマにしていましたが、チャンスの時にミスやペナルティを重ねてしまった。キャプテンとしてもチームをいい流れに持っていけなかったので、次戦は修正していきたいと思います」とコメントし、「ひたむきなプレーでチームを引っ張る存在になりたい」と結んだ。

 ゲームキャプテンを務めたFB梶原僚太も、「敵陣に入っていけるところまでは良かったのですが、そこで我慢できなくて、ペナルティやミスを犯して、そのたびに自陣に戻されて自滅してしまった」と悔やみ、「前半だけでもペナルティを9本犯しましたし、一人ひとりが規律を守り、反則しないように改善しないと、このままでは勝てない」と焦りを口にした。

 加藤尋久監督は、「ディフェンスは頑張っていましたけどね…」と、もどかしさを表す。
「自分たちの頑張りをどう得点につなげていくかという、ゲームで戦ううえでの理解がまだまだ薄い。頑張ってはいるけれど、その頑張りがマイボールにつながらないとか、得点につながらないとか、そういうところがもっともっと成長しないといけない。ただその中でも、要所、要所で良いアタックができるようになったし、良いボール絡みができるようにもなってきた」

「でもまだまだ全体としてつながっていない。良いプレーはするけれども、全くダメなプレーもしてしまうから、相手のチャンスになってしまう。80分通して良いプレーが普通にできるようになっていかなきゃいけない」

 チームへの愛情と歯がゆさがひしひしと伝わってくる。
 選手たちは肩を落とすも、まっすぐに加藤監督を見つめ、言葉に聞き入っている。指導に食らいついて行こうとする情熱が窺えた。

 FLオト ナタニエラは、「久々の試合で60分くらい出させてもらって、反省点がいっぱい見えた。思うようにいかないのがラグビーですけど、チームに自分のプレーを伝えていくのを目標に頑張っていきます」と話し、「自分がデコイになった時に、ボールが動かない間、周りがいかにボールをうまく裏のスペースに運ぶかというのがうちの課題でもあるんですけど」と続けた。

「山梨からマン・オブ・ザ・マッチを選ぶとしたら?」の問いに加藤監督は、「オトですね。久々のゲームでしたが、一番体を張っていた。それができなくなったら彼の引退の時ですが」と言って破顔した。

 横河武蔵野のPR高田和輝(29歳)はこう話す。
「オト選手は僕が中学生くらいの時に東芝、日本代表でプレーしていたのを知っているので、現役でプレーしていることにびっくりします。コンタクトも強烈ですし、ベテランらしい、いやらしいプレーもしてくるので、一番警戒していました。他のメンバーも、『ネラさんのところだけはアタックに行くな』と言っていました」

 オト曰く、自身のポジションは「ラグビー」。加藤監督から誘われ、2019年3月に山梨のコーチに就任した。
 コーチをやるうちにプレーもしたくなり、選手を兼任。選手としてラグビーを楽しみながら、コーチとしてチームメイトたちの成長を促す。「山梨ファミリーに勝利をプレゼントしてあげたい」と望む。
 一方で、今年ラグビーを始めた高校生の長男にも、「パパも頑張っている姿を見せてあげたい」と、はにかむ。

 東芝時代の戦友・廣瀬俊朗は、グラウンドの外からエールを送る。
「ネラトコおじさん。この歳で激しくプレーしているのは、ほんまに尊敬です! プレーや普段の取組みからたくさんのことをチームメイトは学べるのではないかと思いますし、ネラもラグビーを楽しんでプレーしてくれたら嬉しいです!」

 クリーンファイターズ山梨は10月、セコムラガッツ(10日)、東京ガス(31日)と、いずれもホーム・御勅使南グラウンド(山梨・南アルプス市)で激突する。
 怯むことなく、ますます勇猛さを増して、その手で勝機をつかんで欲しい。
 
 
チーム紹介
「クリーンファイターズ山梨」は1991年創設(前身は株式会社東京洗染機械製作所ラグビー部)。2011年に関東社会人1部リーグで優勝し、ジャパントップイーストDiv.2へ昇格。2016年にはトップチャレンジリーグ増設に伴いDiv.1に昇格。2019年トップイーストDiv.1にて5位の成績を収め、今年度グループAへ。
チームカラーは山梨名物ブドウをイメージしたワインレッド。マスコットマークは山梨の県の動物カモシカ。地域密着型の社会人チームとして、企業で働きながらプレーする選手で構成される。教師、半導体関係、JAフルーツ、日帰り温泉、TV局など、選手の職業は多岐にわたる。
練習は、火・木・土・日に、県営御勅使南ラグビー場、Uスポーツクラブグランド、山梨学院大学ラグビー場などでおこなっている。

GM/監督
加藤尋久(元日本代表)
熊谷工、明治大学を経て神戸製鋼でプレー。指導歴は、7人制日本代表ヘッドコーチ、セコムラガッツ監督、東海大コーチ、キヤノンコーチ、日本大監督、青山学院大監督を経て、2019年よりクリーンファイターズ山梨のGM/監督を務める。

強気のプレッシャーで荒ぶるSH岡新之助タフォキタウ。(撮影/山形美弥子)
NO8を務めたマパカイトロ パスカ。試合の感想は「難しい…」の一言。(撮影/山形美弥子)
オフロードパスを試みるLOファカラウエマーマ・タウモエフォラウキテ。(撮影/山形美弥子)
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