個々のキャラが立っていておもしろい。
9月26日、関東大学リーグ戦1部が開幕し、熊谷ラグビー場Bでは2試合がおこなわれた。
1試合目は日大が中大に50-22のスコアで勝ち、2試合目は大東大が流経大に29-7と快勝した。
日大は、持ち前のパワフルさを序盤から発揮し、前半だけで5トライ。31-3のスコアでハーフタイムを迎え、勝負を決めた。
今季、FLからHOに転向した2年生の井上風雅が好パフォーマンスを見せ、チームを勢いづけた。7分、19分、23分とトライを挙げた。
すべて『PKからタッチ(前進)→ラインアウト』の流れ。塊になって前進するモールの最後尾で舵をとった。
中でも2つ目のトライは、この人の持ち味が色濃く出るものだった。
このときはモールが崩れたと見るや、すぐに右に持ち出した。タックルを受けても相手を弾き飛ばし、すぐに立ち上がる。そして、また前進。いっきにトライラインを越えた。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた170センチ、95キロの2番について中野克己監督は「彼らしいプレーを出してくれた」と評価し、次戦に向け、「次は前半だけでなく、後半も活躍してほしい」と期待を寄せた。
FL飯田光紀主将も「風雅が前に出てアタックのリズムを作ってくれた」と話し、チームに勢いを与えた後輩のプレーに目を細めた。
敗れたとはいえ、中大も潜在能力を随所に見せた。
結果的にパワーに押し切られたが、前へ出る防御で相手に圧力をかけた。反則で攻め入られる機会を作ってしまったが、自分たちのスタイルを持っていた。
アタック面を見ても、強気のランで何度も防御を突破したFB杉本崇馬など、局面を変える力を持つ選手たちがいた。
途中出場のCTB水野陸も、その一人だ。
188センチ、123キロのPR茂原隆由主将も愚直なプレーと重いタックルで体を張った。同主将は「スクラムで押せたものもあった」と話し、「もっと意志を強く示して戦っていきたい」と、今後への思いを口にした。
2試合目で快勝した大東大は、後半37分まで29-0と相手に得点を許さなかった。
コロナ禍の影響で夏合宿を実施できず、準備期間に実戦経験を積むこともできなかった。しかし、春から力を入れたディフェンスがチームに安定感をもたらしていた。
先制点は前半6分だった。
大東大はスクラムからNO8リサラ・キシラ・フィナウが前へ出る。ラックから出たボールをSO落和史が大きく逆サイドへ振った。
WTB松田武蔵が好走。流経大ゴールラインに迫った。そして、ラックから持ち出したSH稲葉聖馬がインゴールへ入る。個々の長所が重なり合ったトライだった。
前半39分にもボールをワイドに動かしてトライ(LO塩見成梧)を奪った大東大は、17-0としてハーフタイムに入った。
後半4分には相手のキックボールを受けてカウンター攻撃。CTB戸野部謙が左サイドを走り切ってインゴールに入り、勝負を決めた(ゴールも決まり24-0)。
運動量で相手を上回った。
HO酒木凜平主将は、チーム内にあった空気をこう話した。
「一人ひとりから声が出ていました。僕がラインアウトでミスして相手ボールになった時も、FW、BK全員で守り、すごくいい雰囲気だった」
キャプテンは、仲間のエナジーを感じながらピッチに立っていた。
タックラーがすぐに立ち上がる。セカンドマンがすぐに駆け寄る。
アウトサイドで何度か見られたターンオーバーは、意識とフィットネスの高まりがあってこそのものだ。
主将は、「やれる力はあると思っていた。それを実戦で確かめることができて自信になった」と笑った。
流経大はコロナ禍による準備不足が露わになった。掲げるダイナミックラグビーを体現できなかった。
特に外への動き、切り返しの動きに反応が遅れた。
ゲームキャプテンを務めたFB河野竣太は、「立ってプレーできなかった。強いコンタクトからのオフロードパスでつなぎたかったが、準備が足りなかった」と悔やみ、公式戦を戦いながら強くなっていくことを誓った。