ラグビーリパブリック

筑波大が慶大を3年連続で破る。ブレイクダウンを制して34-12で勝利。

2021.09.27

筑波大のXファクター。圧巻のスピードを持つルーキーWTB大畑亮太(撮影:矢野寿明)

モールでペナルティトライを奪い喜ぶ筑波大。FWが攻守に渡り躍動(撮影:矢野寿明)

 ビッグプレーがいくつも飛び出した。

 WTB大畑亮太の爆発的なスピード。SH山田響の驚異的なランニング。FB松永貫汰の正確なドロップゴール。

 ただこの一戦のハイライトは前半のラストシーンだ。

 12-17のビハインドで迎えた慶大は前半40分過ぎ、敵陣ゴール前のスクラムから得意の肉弾戦に持ち込む。だが筑波大の粘りのディフェンスを前になかなかゲインできず、フェイズを重ねた。

 24フェイズ目、ついにボールを後逸すると、筑波大のスピードスター、WTB大畑亮太が素早く反応してキック。驚異的な加速でそのまま相手を追い抜き、もう一度キック、ゴール前でボールを確保した。慶大の必死のタックルで大畑は止められるも、FB松永貫汰主将がサポート、オフロードパスを受け取り、ポール下に飛び込んだ。

 9月26日、足利陸上競技場で筑波大が34-12で慶大を破った。これで筑波大は対慶大で3年連続の白星を飾った。

 慶大の栗原徹監督は試合前、「2年連続負けているので、チャレンジャーとして精一杯向かっていきたい」と意気込んでいた。だが冒頭のシーン。点差を詰めるところを逆に離され、挑戦者のメンタルは削られた。

「得点されたことだけではなくて、精神的にもダメージは大きかった」

 一方の筑波大は、初戦の帝京大戦でブレイクダウンの強さを証明。ただ規律の面で課題を抱え、帝京大戦では13のペナルティを重ねていた。FB松永主将は「前に出る意識がチームとして強く、プレッシャーはかけられていた。だが、横とのつながりが薄く、ブレイクされたシーンが多々あった。そこを2週間で改善してきた」と話す。
 その成果として、慶大戦では大きな突破を許す場面が減り、ペナルティは3にまで抑えていた。

 大畑は前半最後の大仕事を「前にいたのが大きい外国人選手(WTBアイサイザ・マプスア、190㌢)だったので、しっかり前に出ながら早めにつぶすことを意識していた」と振り返り、「ディフェンスやキックチェイスのところでは持ち味(スピード)が出せた」と話した。

 前半は緊張感のある好勝負だった。

 先制パンチは筑波大。キックオフを慶大がいきなりファンブル、筑波大はそのチャンスを逃さなかった。ラインアウトを起点に、再三の好タックルを見せたNO8楢本鼓太朗が飛び込む。2分で7点を奪った。

 追いかける慶大はLOからコンバートしたWTBアイザイア・マプスアの高さを活かす。SH山田響が190㌢の長身WTBに合わせてハイパントを上げる、コンテスト、慶大に入った。その好機からもう一人留学生、CTBイサコ・エノサがパワーある突進でトライまで持っていた。

 両チームとも相手の持ち味であるディフェンスを警戒し、キックをひとつの突破口と考えていた。慶大はコンテストキックを多用。筑波大のSO浅見亮太郎も戦前、「(慶大のディフェンスは)素早く前に上がってくるので、裏へのキックは狙っていきたい」と話していた。
 だがそれはお互いに相手のチャンスも生んでしまった。

 前半15分、1つ目のビッグプレーが生まれた。
 SO浅見がふわりと浮かせたキックに慶大は反応。チェイスのないまま自由にさせてはいけない2人が動く。FB中楠一期が確保して中央を走り、SH山田につないだ。
 山田は自陣から1人、2人とライン際で交わし、そのまま走り切ってトライ。逆転に成功した。

 逆に27分、今度は筑波大が慶大のハイパントからトライを奪う。こぼれ球にCTB川合カイトが好反応、オフロードでFB松永に渡した。松永は一気に加速し、サポートに走るWTB大畑にラストパス。追走を許さない速さで走り切った(14-12)。

 慶大のHO原田衛主将は「2本はアタックのミスから一発で取られた。ディフェンスは止められていたから、しっかり切り替えていこう」と仲間に告げ、12点差で迎えた後半に臨んでいた。

 開始直後からゴール前のチャンスは何度もあった。だがここもブレイクダウンで筑波大のプレッシャーを受け、スコアできず。筑波大のブレイクダウンターンオーバーはなんと12を数えた。
 加えて慶大はキックでも精彩を欠き、攻め手を失った。筑波大は前半33分に、対抗戦前から準備してきたというFB松永のドロップゴール、後半12分にはSO浅見のPGが決まり、キックの正確性でも上回っていた。

「想定はしていたが、予想以上にしつこくてタフなブレイクダウンだった。キックはプレッシャーの中で、シンプルなスキルミスも多かった。こぼれ球の反応も筑波さんの方が上回っていた」と栗原監督は唇をかんだ。
「いただいた課題をしっかり練習して、次戦までにひとつでも多く成長したい」と語った。

LOから転向のWTBアイザイア・マプスア。190㌢の上背で空中戦では脅威に(撮影:矢野寿明)
自陣からの鮮やかなランで独走トライを決めたSH山田響(撮影:矢野寿明)