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齋藤直人のプロ意識。日本代表再始動まで「4勤3休」で準備。

2021.09.25

日本代表の9番を競う齋藤直人。写真は今年5月下旬の合宿時(撮影:長岡洋幸)


 好きなチョコレートを食べるのは、試合の後などわずかな瞬間に限る。そう語る言葉に性分をにじませた。

「太りやすいんで、結構、がまんしています。そういうの(食べていい条件)を決めてないといくらでもイケちゃうんで…」

 齋藤直人は自己管理の人だ。

 24歳のラグビー選手で、攻撃の起点であるSHへ入る。運動量とパスの精度を長所に、今年は日本代表としてテストマッチデビューを果たす。

 6月26日のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦で途中出場(エディンバラ・マレーフィールド/●10-28)。続く7月3日のアイルランド代表戦では先発した(ダブリン・アビバスタジアム/●31-39)。

 ツアーから帰国後の隔離期間を終えると、「代表に長くいる(中村)亮土さん、(春先は辞退した流)大さんには『休むことも大事』と言われますが、そのへんのバランスがまだわからなくて」。夏の雌伏期間は、4勤3休をベースにスケジュールを組んでみた。横浜市内の実家で愛犬の散歩に出かけるほかは、なんらかの形で身体を動かした。

「休み方は人それぞれだと思うんですが、自分はいっぺんに1~2週間、休む、みたいなスタンスが苦手で。1週間のうちの動く日を決め、最初のほうは4日くらい動いて、3日くらい休む…のようにしました。全く動かないわけではなく、少し動きながらも休む、と。正直、今回は代表に選ばれたのも初めてで(勝手がわからず)、来年以降はもう少しいい過ごし方ができるんじゃないかという気もしますが、今回は本能に任せるというか…。(休みを減らして)動いていてもいいなと思ったので、この形にしました」

 取り組んでいたのは、日本代表サイドから渡されたフィットネス、ウェイトトレーニングのメニュー、さらにはスキルアップやスピード強化の個人練習である。

 アイルランド代表戦では、自陣からのボックスキックをノーバウンドでタッチラインの外へ出してしまった。ルールに倣い、陣地を蹴った地点の近くに戻されてしまった。悔しさは忘れない。

「まず強みのパススピードは継続してトレーニングしました。あとはキックの精度(を課題にした)。キックは苦手意識こそなかったんですが、アイルランド代表戦ではプレッシャー下でミスをしてしまったので…。その他は、スピードトレーニングもしました。(走る時に)お尻を使える感覚は、少しずつよくなっているなと感じました」

オンライン取材に対応する齋藤直人

 話をしたのは9月23日。見据えるのは、招集された29日からの日本代表候補合宿(宮崎)である。ナショナルチームの始動時期は、感染症の影響で予定よりも約2週間、後ろ倒しになっている。

 それでも齋藤はこうだ。

「合宿自体は楽しみにしていたんですけど、(延期は)しょうがないことだと思って。本来、合宿をしていたいまの期間はチーム(所属する東京サントリーサンゴリアス)の練習に参加させてもらって。それまで個人的にやってきたフィットネスやウェイトで鍛えた身体を、よりゲームに近い動きに慣れさせることができています」

 10月23日には、2019年のワールドカップ日本大会以来となる国内での代表戦をおこなう。

 場所は昭和電工ドーム大分。相手はオーストラリア代表である。ワラビーズの異名をとる同国代表は、南半球の強豪4か国によるラグビーチャンピオンシップの一角だ。近年は22歳のCTBレン・イキタウ、25歳のLOアイザック・ロッダら若手の台頭が目立つ。

 齋藤は早大卒業前の2020年1月以降、日本のサンウルブズの一員となって国際リーグのスーパーラグビーに参戦。オーストラリアのレッズと試合をした際は、対面のSHに現代表のテイト・マクダーモットを迎えた。

「対戦できるように(日本代表候補合宿内での競争を)がんばらなきゃいけない」と前置きし、齋藤は意気込む。

「(最近の)ワラビーズはすごく若返っている印象で、自分と同年代やそれより下の選手がたくさん出ている。あとはサンウルブズでレッズと試合した時の9番(テイト・マクダーモット)もレギュラーつかむかつかまないかくらいのところに来ている。楽しみです」

 11月以降は、欧州で3連戦をおこなう。7月までの遠征では練習場が荒い天然芝で、滑りにくいポイント取り換え式のスパイクが必要だと認識。この秋はその経験を活かし、より入念な準備を施す。

「それまで日本ではあまり取り換え式を履いてこなかったのですけど、8月、9月は慣らしで履いてみました」

 自分を律する。正しい計画を立てる。今年3月に社員選手からプロ選手に転じたが、契約形態とは無関係にプロ然としている。

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