ラグビーリパブリック

筑波大の新SO、浅見亮太郎はルーキーでも堂々プレー。3年連続慶大撃破へ、キックで導く。

2021.09.25

筑波大SOの浅見亮太郎はスパイク好き。帝京大戦ではNIKEのティエンポを履いた(撮影:松本かおり)

 対抗戦の初戦。真紅のジャージー。デビュー戦。ルーキー。スタンドオフ…。

 委縮してもおかしくない。緊張とプレッシャーが大いにかかる舞台だったはずだ。それでも、新たに水色ジャージーの10番を背負ったルーキーは、堂々としたプレーを見せた。

 9月12日、無観客の熊谷ラグビー場。関東大学対抗戦の初戦、帝京大戦で筑波大の浅見亮太郎はSOで先発した。7-17の惜敗に終わるも、浅見は接戦の中で巧みなキック、大胆な仕掛け、激しいディフェンスで存在感を示した。何より1年生としての緊張感を感じさせなかった。

「緊張もしましたけど、しても意味がないというか(笑)。自分の仕事をきちんとやることだけだと思っていたし、それができれば勝てると思った。思い切ったプレーはできたと思います」

 開始1分過ぎに奪ったトライは浅見が起点になった。
 敵陣ゴール前の5㍍スクラムから、浅見自ら仕掛けて突っ込む。ラインは割れなかったが前進、次のフェイズでFL岩田真樹がトライを奪った。

「あそこはチームとして準備していて、前が空いたら自分でいこうと。結果的に届かなかったですけど、サポートがいるのも分かったのでチャレンジしました」

 その後も「長所であるキックを使って、どんどん自分の色を押し出せばいい」と、持ち味を存分に生かす。ゴールラインの手前ギリギリで落とすキックも披露した。
「自分のキックがチームの戦術になっているのは理解しているので、キックがうまくいかなかったら試合に負ける。それは自分が一番分かっているつもりです」

 だからキックの練習は欠かさなかった。全体練習の前には必ずキック練から入り、練習後にも最後まで残って蹴り続けるのが浅見の日課だ。

 スパイクにもこだわりがある。練習、試合、雨と時と場合によってスパイクを履き替える。流経大柏入学後、同級生のSO山下真之介(立命大)に影響を受けた。
「山下がとてもスパイクに詳しくて。オフの日は一緒にスパイクを買いに行ってました。カンガルーの革のスパイクがお気に入りで、アディダスのコパとかナイキのティエンポを履いてます。キックの感触、足のフィット感が良い」

 千葉県出身。小学生の時に神戸に引っ越した。家の近くにたまたま西神戸ラグビースクールがあり、1年生から通い始めた。

 高校は仲間が関西の強豪校に進学を決める中、関東の流経大柏を選んだ。中学の時点で、大学は対抗戦でプレーしたいと強く思ったからだ。
「対抗戦の試合や秩父宮の早明戦などをテレビで見て、憧れました。関東の高校に行けば、(対抗戦所属の)大学の進学にもつながると感じましたし、近くで見られる。BKの強いチームにも行きたかった。筑波に決めたのも同じ理由です」

 浅見の1年時に、流経大柏はアシックスカップで優勝。BKは確かに強かった。
 さらにその年の花園では、創部初の4強入りを果たす。浅見はFBで全試合に先発するも、「個人としては良いプレーはできなかった」。
「リザーブに3年生もいてプレッシャーがありました。結果としてベスト4までいきましたけど、(FBが)自分ではなかったらもっと上までいけたと思うこともあった」

 2年時の最初は中学ぶりのSO、後にCTB 、3年時の昨季は再びFBに戻った。もともと器用なタイプなのだ。
 特技は散髪。高校の時に遊びで始めたが、「YouTubeを見たりして」上手くなった。寮でチームメイトの髪を切るのは、大学でも続き、すでに1年生同期の半数以上は浅見にお世話になったという。

 共同キャプテンとしてチームを引っ張った3年時の花園は、準々決勝の常翔学園戦(〇21-17)、準決勝の大阪朝高戦(●10-14)と、第100回大会を彩る好ゲームを見せた。朝高戦では最後の最後まで攻め続けるも、インゴールまで届かなかった。
「あそこで取り切れなかった悔しさがあるから、ワーナー(ディアンズ)が日本代表(候補・NDS)に選ばれたように、みんなそれぞれの場所で頑張れてる」

 筑波大入学直後はFB松永貫汰主将のリザーブも、フィジカルの強さを買われてCTBへ。
「体をぶつけるラグビーらしさがあって、しっくりきていた」
 SOを急遽任されたのは夏からだ。SOのけが人が相次ぎ、浅見に白羽の矢が立つ。それまでの正SOは同期の堀日向太だった。
「堀とは同じ寮(学生寮)にいるので、一緒にご飯を食べながらスタンドのことを話したり、練習の動画を見ながらアドバイスをもらってます」

 短い期間で大役を任されても動じずにプレーできたのは、堀のほかに上級生の影響もあったという。
「先輩たちがめちゃくちゃ優しくて。全員に話せる機会があって、1年生にも話を振ってくれる。(思い切ったプレーができたのは)1年生だから、というのを先輩たちが見せないようにしてくれたおかげでもあります」

 筑波大は序盤に大一番が続く。一息つく暇もなく、26日には慶大戦を迎える。浅見は2戦連続の先発が決まった。
「慶應はラグビー理解度が高い。ディフェンスも真面目で穴がないです。そこで筑波のアタックがどう機能するかがキーになる」

 すでにチームの核となりそうなルーキーが泰然として、対抗戦初勝利を狙う。