関東大学リーグ戦2部の2021年公式戦が9月18日から始まった。
昨年度は2ブロックに分け同じ順位同士で最終順位決定戦をおこなった。1部との入替戦は無く昇格への思いは今年に持ち越された。
昨年度2位の山梨学院大と同7位・朝鮮大は今季、9月19日に無観客のなか開幕戦でぶつかり、山梨学院大が10トライの猛攻で64-17(前半33-10)で初戦を飾った。
山梨学院大は「朝鮮大の気迫タックルに押される場面もあったが、次につなげることができる」(梶原宏之監督)戦い。
前半開始、山梨学院大はキックオフのボールを確保すると30秒で右WTB菅野龍馬(3年、東海大相模)があっさりと右隅トライラインを越えた。11分には背番号は13をつけているが左WTBに入ったケーレブ・カブヴァティ(2年、スコッツカレッジ)がキックパスを受けて左中間インゴールへ走り込んだ。さらに1トライ追加後の19分にもオーストラリア出身、共同主将NO8ティモテ・タヴァレア(4年、ジョンポールカレッジ)がノーホイッスルトライを奪うなど前半で5トライ、26-0とほぼ試合の行方を決めた。
朝鮮大は28分、ルーズボールを拾った左WTB許龍旭(ほ・りょんうっ。4年、東京朝高)が5点を返すと、39分にはFB金慶生(きむ・きょんせん。3年、大阪朝高)が同じくルーズボールを奪い60メートルのランで2トライ目を決めた。
前半を33-10で折り返す。
山梨学院大は、後半3分、13分にはFB河野孝太郎副将(4年、大分東明)が朝鮮大ディフェンス網を破り連続トライ(前半の1つと合わせハットトリック)するなど、後半も5トライ31点を加点し、64-17で終えた。
この試合は1年生ルーキーも躍動した。山梨学院大唯一の先発メンバー入りとなり、インサイドCTB12番を背負った具志堅竣祐(しゅんすけ)は80分間、その立場を全うした。沖縄・名護高出身。左足からのキックが魅力だ。高校1年から花園(全国大会)に出場し、2年、3年時は10番司令塔を担った。朝鮮大戦でも自陣からの距離の長いタッチキックで味方を前に進めた。後半からはトライ後のコンバージョンキックを任され18分に公式戦初得点を挙げた。
「沖縄のエースが入ってくれました。トライにつながる仕掛けも見せてくれた。体もあるしスピードもある」と梶原監督は大きな期待を寄せる。
具志堅自身は「得点を取れて嬉しかった」と照れ気味に話す。将来は「上のレベル(リーグワン)でプレーしたい。名護の先輩たち(トップリーガー)に続きたい」と夢見る。本職のSOでなくCTBでのデビュー。名護OBで元早大ヘッドコーチを経て地元でデイゴラグビースクールを運営する銘苅信吾氏からは「CTBが良いのでは」と言葉をもらった。銘苅氏は「コンタクトに不安があるみたいなので、コンタクトが多いCTBが心も成長すると思いました」と教えてくれた。
一方、朝鮮は先発に半数の7名の1年生が名を連ねた。昨年度花園4強を果たした大阪朝高から右PR鄭善甫(ちょん・そんぼ)、左LO康明祐(かん・みょんう)、右FL姜征勲(かん・じょんほ)、NO8金智成(きむ・ちそん)、SO金秀鎮(きむ・すじん)にアウトサイドCTB金洸羽(きむ・ぐぁんう)だ。東京朝高から一人だけラグビー部に入った許泰旭(ほ・ごんうっ)は左FLで先発。6月に遅れて入部したSH金俊植(きむ・じゅんしっ、愛知朝高)はリザーブに入った。
司令塔のSO金は、山梨学院大の猛攻の前になかなかゲームを作る機会はなかった。自陣から見せた長距離のキックには相手ベンチから「良く伸びるな」と称賛する声が聞こえていた。兄は昨年度、最後のトップリーグで新人賞を受けたクボタスピアーズ(現 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)FB金秀隆(きむ・すりゅん)。本職はWTBで花園のピッチを駆け回った。SOは今夏の菅平合宿からという。試合中、ハーフタイムと仲間たちに声をかけ続けていた。
「今日は通用するところもありました。兄からは『相手は体がでかいと思うけど当たってみてレベルを感じて』と連絡がありました」と話す。兄は弟のデビュー戦を観戦予定も無観客開催で断念した。
体の大きい相手に朝鮮大は十分対抗できる場面があった。ラインアウトだ。山梨学院大はオーストラリア出身LOトーマ・ヴィタイオナ・ジュニア(2年、ウェズリーカレッジ)が201センチ、NO8タヴァレアが186センチなどフォワード2列、3列がすべて180センチ以上。朝鮮大はLOで主将の金誠宇(きむ・そんう、東京朝高)の178センチが最高。しかしマイボールラインアウトはほぼ確保、相手ボールでも絡みミスを誘った。後半24分、敵陣22メートル線内側の左ラインアウトを得る。試合が決したとはいえ、ボールを確保するとモールを組み、バックスも隊列に加わり仕留めることができた。
タックル、ラインアウトジャンパーでチームを牽引した金主将は「リーグ戦上位とはフィジカルでどうしても劣るが、セットプレーは良かった。上級生たちも引っ張っている」と手ごたえもつかんだ。
次戦は9月26日。山梨学院大は昨季8位・国士舘大と、朝鮮大は1位・東洋大と競う。なお、開幕戦では東洋大が58-10で国士舘大を圧倒していた。
※ 関東大学リーグ戦2部はすべて無観客試合で、会場と時間は非公表。