ラグビーリパブリック

【ラグリパWest】ビール・マスカラスと藤島鯛。中村直人 [なおかつ酒店社長]

2021.09.22

電話で指示を出すビール・マスカラス。感染防止にいつでもマスクはしています。なおかつ酒店社長の中村直人さんは若い頃、サントリー、日本代表のプロップで、現在は同志社ラグビークラブの理事長をつとめる。実は偉い人

こちらは、沈思黙考する藤島鯛
1999年ワールドカップのアジア予選時。右は、現在日本代表のスクラムを支える長谷川慎コーチ



 ビール・マスカラスに藤島鯛。Instagramには華麗なるパクリの世界が展開されておる。

 ビールさんはいにしえの人気覆面レスラーをヒントにする。ロープを駆使し、空中殺法を見せたミル・マスカラス。額にはMのイニシャルの代わりに生ビールが入った大ジョッキを張りつけている。体のたるみはご愛敬。元ジャパンだけに惜しいけど…。

 鯛さんは言わずと知れた「大さん」。目の座り、濁音を強調するしゃべり方はクリソツ。黒メガネは100均で買った老眼鏡のレンズを抜く。装いは紫の格子柄のシャツにグレーのジャケット。うーん、トリビアーン。推奨は故ドミニシのワインだす。

 彼らをインタビューするのは我らが晃一さん。プーンと汗臭いラグビー界で、爽やかさを一手に引き受けてはりますなあ。
「ホンモノがきぃーたーーーーー」
 晃一さんと組んで、ナオトこと中村直人さんのチャレンジが本格的に始まった。来年1月で53歳やで、しかし。

「村上さんは、放っておけない、やばい、と思って来てくれたと思います」
 ナオトは言う。アスファルトに腹ばいになって、黄色い花に話しかける動画を見たら、ほら、ほうよ(阪神の元監督調)。

 お酒、売れへんねん…。ナオトは「なおかつ酒店」の三代目。このコロナであっぷあっぷ。みな、そうやけどね。ナオトんとこは業務用が中心やから余計につらい。
「売り上げはええ時の8割減です」
 お店を救いにやってきたのは同じ京都に住む晃一さん。神か、おたくさまは。

 2大共演のInstagramはなおかつ酒店のホームページから飛べる。そこにはオンラインショップもある。名前は「NAON」。パクリまくり。このショップがなかなかの散らかりぶり。お酒のみならず、鼻洗浄の薬やTシャツ(マスカラスもあり)、シチューや米もある。
「みんなご縁のある人や会社のものなんです。せやから売らせてもらわんとあかんのです」
 あきんどとして筋は通ってるで。

 売り上げ回復のため、偽キャラを使った広告宣伝を考えたのは半年ほど前やった。
「タニがインタビューボードは効果がある、って教えてくれたんです」
 タニは同志社ラグビーの同期である。D社所属。ボードは会見の後ろの大きな幕やな。

 株式会社なおかつ、などの文言をコピー。それをはっつけて、ボードもどきをこしらえた。晃一さんがサントリーウイスキー角の2.7ℓ業務用をマイクに見立てて、横に立ったあたりで反響は大きくなる。

「インスタは7万人くらいが再生してくれたら、バズる、と言うらしいですが、多い時は10万くらい、いきますねん」

 そのご恩は形にするで。晃一さんにはちゃんとギャラを用意する。売れ残ったお酒、もとい、隅に飾ってあるお酒を渡す。



 サントリーの元戦友たちも協力する。動画を見てか、見らずか、知らんけど。
「キヨ、シン、ヒロアキ、ケイスケはそこらのスナックくらい買ってくれますわ」
 順にサントリー、代表、明治、キヤノンにいます。所属先で開店してるんかしらん。

 ナオトが経営に踏ん張るなおかつ酒店の創業は1933年(昭和8)。1世紀を超えると、このお公家さんの街では「老舗」と呼ばれる。あと12年。現在の従業員は5人や。

 そのラグビー歴は洛北、同志社、サントリー。右プロップとして日本代表キャップは20やで。反対側のプロップやったシンとは今でもいちゃいちゃする。店はその名前になっている父の直勝さんから12年前に任された。

 大手の量販店が幅を利かしている世の中で、なんで個人商店を継いだん? 世界のサントリーにおったら安泰やったやん。
「店を閉めるとしても、オヤジにそれをさすわけにはいかしまへん。そうなるなら、わたいがその役を引き受けようと…」
 泣かすんか、笑わすんか、どっちかにして。

 中村家は同志社一族。ナオトと父、さらに弟の勝人さん、長男の拓磨さんが大学ラグビー部OB。次男の優吾さんは高3でラグビー部。長男の職場はJスポーツ。そっからの鯛さんかっ。大さんは長男を高評価。
「感受性が鋭く、芯があります」
 制作の現場にはぴったりっすね。

 ナオトはラグビー部OB会の同志社ラグビークラブの理事長。タニが副理事長。この2人で基本、組織の先頭に立つ。
「大学ラグビーは4年間だけ。現役たちはそこで出し切って欲しいと思います」
 まっ、ナオトは勉強好きやったんで5年目があったんやけれども。ともあれ、同志社は9月18日、関西リーグの開幕戦で関大に75−8。6年ぶりの優勝へ好発進や。コロナの2年目、ものともせんよ。

「ここを耐えたら、いつかコロナが明ける。その時には、みんなで笑えます。ラグビーでもそうですやん。プロップって、スクラムを組まなあかんから、練習からしんどいけど、試合に勝ったり、優勝したり、その先に幸せなことがいっぱいやってくる。この先の人生も一緒ちゃうかなあ、って思っています」

 暗い世情も関係なく、笑いとお酒を届けます。ラグビーの人ってなんかええよね。

【なおかつHP】http://naokatsu.com/