ラグビーリパブリック

惜敗も、準備してきたディフェンスに手応え。横河武蔵野、ホーム初戦を振り返る

2021.09.14

NO8ジェイデン・トア・マックスウェルは炎を見るような快さだ(撮影/山形美弥子)

前半に2トライを挙げたWTB西橋誠人。(撮影/山形美弥子)
緊迫の場面でも落ち着いてプレーしたSO衣川翔大。(撮影/山形美弥子)
若手に負けない軽快な走りを披露したCTB/WTB小沢翔平。(撮影/山形美弥子)


 興奮の季節がやってきた。今週、ジャパンラグビートップイーストリーグが開幕した。9月12日、横河武蔵野アトラスターズがホームグラウンド(東京・武蔵野市)でヤクルトLEVINSと対戦した。

 6月の春季交流戦で25−31の逆転負けを喫していたチャレンジャーの横河武蔵野にはこの日、前半から勢いがあった。実力が伯仲する対決に、セットプレーがモノをいった。

 前半23分、敵陣22メートルライン内側のラインアウトで15メートルのロングスローが見事に決まった。速い球捌きでFWとBKが連携を取りながら左右に展開してラインを押し上げる。まさに思い通りのプレーが出た。
 最後はHO佐藤公彦が放つオフロードパスをWTB西橋誠人がつなぎ、左隅に先制トライ、ゴールもねじ込んで7−0とした。

 さらに34分、再びラインアウトのロングスローインからNO8ジェイデン・トア・マックスウェルが鋭く縦に切り込んだ。
 気負い立つジェイデンは炎を見るような豪快さだ。オフロードパスを受けた西橋がゴール中央にもう1トライを積み増し14−0とした。
 ヤクルトは、敵陣深く攻め込むシーンもあったが、鎖の鞭で覆うような横河武蔵野のディフェンスに、インゴールを割ることはできずにいた。

 しかし14−0で迎えた後半、横河武蔵野のセットプレーが安定さを欠き始めた。ヤクルトは、それをそつなく得点に変えた。

 逆転ムードに士気を高めるヤクルト。横河武蔵野は14−12と迫られ、逃げ切りたい焦りからミスが出る。34分に3点を献上して14−15となった。
 ホームの力が選手たちを奮い立たせたが、激闘の終わりを告げるノーサイドの笛が鳴ったとき、歓喜したのはヤクルトの方だった。

 ゲームキャプテンを務めたNO8ジェイデン・トア・マックスウェルは、「悔しいですね。負けて悔しいですけど、まだまだシーズンは長く、チャンスはある」と言い切った。
 巻き返しの修正力に期待したい。

 この日、前半に2トライを挙げ、チームに主導権をもたらしたWTB西橋誠人は、「久し振りの試合でしたが、その分思い切ってプレーすることができました。チームとしてもやりたいことを前半は表現できたと思います。ただ後半は大事なところでミスが出てしまい集中力が徐々に下がった。受け身になってしまった。試合を通して良いパフォーマンスを維持する大切さを、身を持って感じました」と話した。

 33歳のベテランLO栗林宜正も、逆転された試合展開を悔やむ。
「ヤクルト戦に向け、特に注力して準備してきた、力強いボールキャリアに対して2人でタックルにいくことや、連携を取りながらディフェンスラインを前に出して止めることを体現できました。ディフェンスで粘りながら少ないアタックチャンスで確実にトライを取るという横河らしい形でゲームを運び、前半をいい形で折り返すことができました。
 しかし後半は、相手の勢いあるアタックや、セットプレーで後手に回ってしまった」
 今後、課題を修正して戦っていく。

 キッカーを務めたSO衣川翔大は172センチ、85キロの25歳。2019デビューシーズンから背番号10を背負い、冷静なゲームメイクとキックで信頼を得る。
 精神力があり、緊迫の場面でも落ち着いてプレーに集中できる司令塔だ。

 その衣川は、「後半に流れを持っていかれたとき、自分たちのやりたいことができなかった。戻らなきゃいけないところを立ち返れなかった結果が、最後の1点差に出てしまった」と振り返る。
 特に後半20分過ぎのタイトな時間帯、レフリングへの対応にも悔いが残った。「そこに相手が乗っかって来て、流れをとられた」と言う。

 各選手が悔しさを口にした80分。
 かつて日本IBMビッグブルーでプレーし、その後、清水建設ブルーシャークス、明治安田生命ホーリーズを経て今年5月に横河武蔵野に移籍した石井達士選手(34歳)も、「流れを引き寄せるタイミングは多々ありましたが、自分たちでチャンスを逃してしまった」と言葉に悔やしさを滲ませたが、ピッチ上の再会を喜んだ。
 旧友と体をぶつけ合える。それもラグビーの魅力のひとつだろう。

 石井は言う。
「個人的には、元チームメイトでマン・オブ・ザマッチを獲得したヤヌ・ベンダー選手と試合できたことが嬉しかったですし、おめでとうと伝えたいです。今後もお互いを高め合えたらと思います」

 32歳のベテランCTB小沢翔平は 厳しい状況の中での開幕に、「ラグビーをできた嬉しさと、楽しさはもちろんありましたが、勝つことにこだわって残りのシーズンを戦っていきたい」と話した。
「無観客試合でしたが、リーグが開催されたことに感謝しています。またYouTubeで多くの方に試合を見ていただけた。運営スタッフにも感謝しています」

 次節は26日(日)、クリーンファイターズ山梨をホームに迎え、対戦する。
 試合の模様は、横河武蔵野の公式YouTubeチャンネルでライブ配信される。

※試合の動画は、横河武蔵野アトラスターズの公式YouTubeチャンネルでご確認ください。

2019シーズンの怪我から復活し、今季初戦に先発したPR高田和輝(168センチ、104キロ/29歳)。「前半はディフェンスで身体を張れたが、後半はミスとペナルティが多く、相手のアタックを受けてしまった」。(撮影/山形美弥子)
 FL石井達士。MOMに選ばれたヤクルトのヤヌは元チームメート。(撮影/山形美弥子)
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