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「RISE」上を! 2部昇格を目指す 2021東京都立大ラグビー部

2021.09.06

ラインアウトボールをキャッチする都立大のFL加藤洋人。今春入部した2年生(撮影:見明亨徳)


 関東大学ラグビー秋の公式戦が今週、対抗戦で始まる。ラグビーにかける熱い思いは「大学日本一」を目指す上位校だけから溢れることはない。
 関東大学リーグ戦3部に所属する東京都立大(以下:都立大)は今季「RISE(一丸となったチームは、自分たちの積み重ねを信じ、ひたすら上を目指して突き進みます)」をスローガンに掲げ3部優勝、2部との入替戦勝利で初の2部昇格を描く。

 秋雨が降り肌寒い日が続いていた9月5日、日曜午後。八王子市南大沢駅に隣接する都立大グラウンドで対抗戦Bの上智大と練習試合をおこなった。試合前に雨はやんでいた。

都立大(白黒ジャージー)はブレークダウンへこだわった(撮影:見明亨徳)

 30分ハーフ。都立大が後半勝ち越し、26-12(前半 7-12)で制し夏の練習試合3連勝とした。前半6分、都立大が敵陣22メートル左中間でラインアウトを得る。モールを組むとHO高尾龍太(3年、府高津高)が最初のファイブポインターに。コンバージョンもWTB根立耕直(4年、県川越高)が決め7-0とする。15分でウォーターブレイクに。16分、再開後、試合の主導権は代わる。上智大がハーフラインのスクラムからつなぐ。右WTB宮尾柾紀(3年、攻玉社高)が都立大ディフェンスをはねのけNO8新拡樹(4年、本郷高)へ。新が右中間へトライ。ゴール成功で同点に追いつく。さらに3分後、タックルが甘くなった都立大を上智大が攻め、敵陣でつなぐとインゴールへボールをころがす。右隅で宮尾が押さえ逆転、7-12で前半を終えた。

前半中盤から上智大が逆転へつなげたが…(撮影:見明亨徳)

 後半は都立大が気持ちを切り替えた。6分、上智大22メートル内の右中間スクラムを得る。オープンへ運ぶ予定もスクラムが少し回ると、2年前の主将NO8辰巳紘奨(院2年、本郷高)が切り替えてライン際へ持ち出す。後輩たちがモールを組み押し込むと、そのまま同点トライとなった。10分にはボールを奪い返しCTB松川拓矢(3年、桐光学園)が逆転のランナーになる。松川はコンバージョンも決めて19-12。そして残り1分、ベンチから「残り1分、ゲームメークを考えて」と指示の声が飛ぶ。ここで上智陣でのラインアウトに。最後は先制点と同じくモールで取り切り、26-12。

後半10分、都立大CTB松川拓矢が勝ち越しトライを決めた(撮影:見明亨徳)
都立大の藤森啓介ヘッドコーチ。「これからゲームメークを教えていきたい」(撮影:見明亨徳)

 タックル、ブレークダウンで体を張った今季のスキッパーLO谷村誠悟主将(4年、都青山高)は話す。「後半、モチベーションを上げて勝ちにつながった。4年生が一人一人声を出して引っ張ることができた」。
 2季目となる藤森啓介ヘッドコーチ(前・早稲田摂稜高監督)の丁寧なコーチングを受けている。その成果が3連勝につながった。藤森コーチは「きょうはブレークダウンが良かった」。
 試合前の木曜日、雨中の練習で都立大は少人数でボール運び、コンタクト、ブレークダウンへの入り方を繰り返していた。上智大戦前の試合は2勝1敗をふまえて。

 最初の試合は6月、東京都内の国公立大が競う大会。26-36と東京大に惜敗したが、前半は19-19のイーブンだった。東大が後半、修正をかけ、都立大は対応できなかった。7月、同じリーグ3部のライバルである東京工業大には22-14で勝利。8月は対抗戦Bの一橋大を19-12と接戦を制し、連勝をとげた。東工大、一橋大に勝ったのは部史上初めて。「うちと上位とはフィジカル、スタミナが違う。最後に負けてしまう。練習では、藤森さんも意識してコンタクトを入れている。ウェートトレーニングも個人で意識してこなかったのですが今年から記録をとるように変わった。(東大戦後)粘り強さがでてきた。一橋戦はきつかったが、そこで頑張れることができた」(谷村主将)。

 都立大は2018年シーズンに3部へ昇格。以降5位、6位、5位と8チーム中下位グループにいる。コロナ禍の昨年度は8チームを二つのブロックに分けて同じ順位で最終順位決定戦をおこなった。今季も試合形式は同じになる。優勝にはブロック1位が最低条件となる。
 10月17日に防衛大と初戦を戦う。残り2試合は昨年度1位玉川大、国際武道大だ。
 残り1か月、「ゲームメークなどを落とし込んでいく」(藤森コーチ)。「タックルの甘さ。ルーズボールへの働きかけの遅さ」(谷村主将)と課題は見えている。

「試合の経験不足が出た」という上智大の北真樹監督。立て直しへ(撮影:見明亨徳)

 秋の試合、初戦となった上智大はチグハグさが目立った。今季、バックスを教える元トップリーガー(パナソニック ワイルドナイツ出身)の大澤雅之コーチ。試合後、円陣で「最後に誰がトライを決めるか。試合に勝ちたいか。その気持ちが見えてこなかった」と語りかけていた。北真樹監督は「7月の試合は成蹊大と前半のみ(悪天候で後半中止。続く玉川大戦は緊急事態宣言のため中止に)。試合経験の無さが出た。すぐに開幕戦がある(9月12日、東大戦)が、立て直しを図っていきたい」。こちらもチームスローガン「貫」を構築したい。

都立大でラグビーと出会った畠山友翔。試合出場を目指す(撮影:見明亨徳)

 2年間に及ぶ新型コロナウイルス感染拡大は全国のすべての学生スポーツへ、特に新入部員獲得で影響を与えている。都立大は昨年4月からオンライン授業となり、対面式も一部は復活しているが、学生がキャンパスにいない状態も続く。もともとラグビー強豪校のように入部希望の学生が押し寄せる状況ではない。丁寧な新入生勧誘で部員を増やしてきた。
 2年生は4名(選手3、マネージャー1)、1年生6名(選手3、マネージャー3)。4年と3年合わせて25名(選手18、マネージャー7)の半分以下。

 この日、FLでラインアウトジャンパーを務め、2本のモールトライに貢献した2年生の加藤洋人は今年4月に入部したばかり。大阪の府立高津高で楕円球に親しんだ。入学したのはシステムデザイン学部。「東京に来たのは今年春からです。去年1年間は実家。オンラインで授業を受けていた」という。体験入部でラグビーの良さを実感した。

 左PR船津丈(仙台三高)は花園出場を果たせなかった思いがある。「高校3年、全国大会宮城県決勝で仙台育英に3-31で負けました。2年のときは決勝で0-59でした。差は縮めたが越えられなかった。大学では不足している部分を鍛えてチームに貢献したい」。悩みは「同じ学部の知り合いができない。ラグビー部の知り合いが多い」ことか。

 LO大滝康資も花園を逃した。強豪・國學院久我山出身だ。「本郷に負けました。同期がいろんな大学に進んでラグビーを続けている。対戦したい。部員が少ないがこれまで先輩たちがつないできたものは守っていく」

 2年生唯一のマネージャー八木幸音(都新宿高)は部の雰囲気に魅かれた。「ラグビーは体がぶつかりあうスポーツ、魅力を感じます。先輩たちも良い雰囲気」

 今季の1年生、畠山友翔(FW希望、都立川高)は楕円球と触れ合うのは初めてだ。これまで水泳・長距離種目を専門にしてきた。長身、体幹もしっかりしている。試合を見つめながら「早くジャージーを着て戦いたい」とデビューを見据える。

 首都圏で有力な田園ラグビースクール出身、中原亮太(HO/FL、県湘南高)はリザーブから出場した。「都立大のラグビーは考えてたくさん頭を使うところがある」とラグビーに必要な別の一面に出会った。

 丁野真菜(マネージャー、県厚木高)も「やりがい」を感じている。

 4年、マネージャー長の西山真奈美(山手学院)は2部昇格とコロナ禍の役割を実践している。「選手の勝ちたい気持ちを支えていく。試合映像も研究して一人一人の動きを撮るなど工夫しています。コロナ感染対策では特に消毒に注意をしている。(健康福祉学部)看護学科のマネージャーが資料を探して対応することも支えになっています」

 コロナ禍、2度目のシーズンを迎える。