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車いすラグビー日本代表は『金』候補。東京パラリンピック、いよいよ開幕

2021.08.24

主将で司令塔の池透暢(左)。写真は日本で開催された国際大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」。(撮影/張理恵)



 8月24日、東京パラリンピックが開幕する。全22競技の中で最も注目されている競技のひとつが車いすラグビーだ。
 パラリンピック競技の中で唯一、車いすでのコンタクトが認められている。ラグ車(ラグビー競技用車いすの通称)と呼ばれる鉄の塊のような車いす同士がぶつかり合う「タックル」の衝撃音は体の芯にまで響く。

 2000年のシドニー大会で初めてパラリンピック正式競技としておこなわれ、日本は2004年のアテネ大会から4大会連続で出場。前回のリオパラリンピックでは銅メダルを獲得している。

 日本が車いすラグビー強豪国として大きな存在感を示したのが2018年の世界選手権だ。決勝で世界ランキング1位のオーストラリアを倒し、日本史上初の世界チャンピオンに輝いた。
 東京パラリンピックで日本は「金メダル獲得」を目標に掲げる。

 そこに立ちはだかるのが、パラリンピック3連覇を狙うオーストラリア、アメリカ(世界ランキング2位)、そしてイギリス(同4位)だ。
 リオパラリンピック以降、この4か国の対戦では1点差で勝敗を分ける試合も多く、大会ごとに優勝国が入れ替わるほどその実力は拮抗している。東京パラリンピックでも熾烈な金メダル争いが予想される。

 車いすラグビーの試合でまず目を引くのが、豪快なトライやタックルなど派手なプレーが多い『ハイポインター』だ。
 選手は障がいの程度や体幹などの機能により0.5から3.5まで0.5刻みで7つのクラスに分けられるが、この数字が大きい=障がいが比較的軽い『ハイポインター』のレベルは日本が世界トップクラスを誇る。

 正確なロングパスと高さを生かした視野の広さが光る司令塔・池透暢。池崎大輔のスピードと巧みなチェアワーク(車いす操作)は超一流で、世界選手権ではMVPに輝いた。
 競技歴22年の大ベテラン・島川慎一のタックルの破壊力は世界一と言われている。次世代エース・19歳の橋本勝也は、クイックネスとボールへの執着心が持ち味だ。

 コート内4選手のポイントの合計は8.0以内というルールにより、一度にコートに入れるハイポインターは必然的に2人までとなる。
 日本はタイプの違う4人のハイポインターが揃ったことで、様々な攻撃スタイル、且つ常にフレッシュな状態で戦えるのが大きな強みだ。

 このハイポインター陣に献身的な守備で道を作るのが、障がいの重い『ローポインター』と呼ばれる選手たちだ。
 豊富な運動量と高いディフェンス力が持ち味の乗松聖矢、スペースの読みと判断力で守備に加え得点力でも貢献する今井友明、スペースを埋めるプレーが得意な若山英史、パスレンジと走力が武器の小川仁士らが揃う。

 そして、障がいが一番重いクラスでありながらスピードとボールコントロールに定評のある長谷川勇基、先読みに優れ体格の大きい海外選手にもひるまず立ち向かう倉橋香衣らがいる。
 職人のようなひたむきなプレーでチームを支え、攻撃のバリエーションに彩りを加える。

 オールラウンダーとして対応力が求められるミッドポインターには、野球経験を生かした正確なパスが強みの中町俊耶、リーチの長さを生かしたプレーが光る攻守の要・羽賀理之がいる。タイプの異なる二人が戦術の選択肢を広げる。



 結果として、日本は世界のどのチームにも対抗できるラインナップ(4選手の組み合わせ)を組む準備が整った。
 史上最強ともいうべきチームメイトについて、キャプテンの池は「一人ひとりが自分の色を持ち、お互いが信頼し合える12人」だと胸を張る。

 そしてもう一人、忘れてはならないのが、この12人が放つ色をダイナミックに融合させ金色へと輝かせるケビン・オアー ヘッドコーチ(以下、HC)の存在だ。
 アメリカ出身のケビンHCは、アテネパラリンピックでアメリカ代表を銅メダルに、ロンドン大会ではカナダ代表を銀メダルに導いた名将。基礎と理論に基づいた指導、経験によって培われた判断力の早さ、それに加えて、闘志みなぎるパッションでチームを鼓舞する。

 2017年の代表HC就任以降、日本はディフェンスのバリエーションが増え、若手の成長によって選手層が厚くなり戦術の選択肢と幅が広がった。
 また、試合中のタイムマネージメントへの意識が向上したことでゲームコントロールにおいても格段に進化を遂げている。

 しかし、飛躍の要因となったのは技術面の成長だけではない。そこには、ケビンHCが唱える『BELIEVE』という揺るぎない精神的支柱がある。
 目標を成し遂げるためにやってきた努力、トレーニング、犠牲、そして仲間、家族、自分自身…「信じる」力がチームをひとつにし、日本を強くした。

 東京パラリンピックでの日本の初戦は、開会式翌日の8月25日だ。
 予選ラウンドで日本(世界ランキング3位)を迎え撃つのはフランス(同6位)、デンマーク(同7位)、そして最大のライバル・オーストラリア(同1位)。上位2か国が決勝トーナメント(準決勝)へと進む。

 ケビンHCは予選ラウンドでの対戦国について「ハイポインターとローポインターで組むラインナップを中心にしているという点で、日本と似ている3チーム」だという。

 その中でもカギになると話すのが、初戦のフランス戦だ。
「上位進出というよりは1試合ずつにフォーカスして進めていきます。大会初戦の相手がフランスということでタフな試合になると予想しています。まずはそこに集中します」
 世界の強豪がプライドをかけ火花を散らす東京パラリンピック。金メダル獲得への日本の戦いは、いま始まろうとしている。

【車いすラグビー日本代表 試合日程/予選ラウンド】
8月25日(水)vsフランス
8月26日(木)vsデンマーク
8月27日(金)vsオーストラリア

情熱の指導者、ケビン・オアー ヘッドコーチ。(撮影/張理恵)
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