12チーム中11位。前回の4位入賞を受けてメダル獲得を狙うも、順位を落とした。男子7人制ラグビー日本代表は、東京オリンピックで苦杯をなめた。
2016年のリオデジャネイロ大会後、日本ラグビー協会は新たな制度を作っていた。男子7人制日本代表チーム専任選手契約だ。普段は15人制のクラブに属する選手たちに、年間150日以上はある男子7人制日本代表の活動へ優先的に参加してもらうための仕組みである。
しかしそのシステムは、本番までの都合5年間でどこまで機能していたか。8月11日の総括会見では、その点が詳細に問われるだろう。オリンピック経験者の多くが一時15人制の活動に注力していたこともあり、ダミアン・カラウナ前ヘッドコーチ体制、岩渕健輔現ヘッドコーチ体制とも、2017年以降に発掘した選手の育成にも時間をかけていた。
その間、抜擢された1人が加納遼大。2021年6月下旬、東京オリンピック時の司令塔候補として意気込んでいた。
「常日頃、僕に求められるのはゲームメイク、周りを見てどのプレーを選択するかということでした。そのため練習のなかで考えなきゃいけないことがあって、最初はいっぱい、いっぱいでした。ただ、慣れてくることで余裕ができてきたのかなと」
身長172センチ、体重72キロと小柄も、切れのある動きと防御を引き付けながらのパスで頭角を現す。2017年のワールドセブンズシリーズ第3戦(ニュージーランド)で初めて代表のジャージィに袖を通し、2018年のワールドカップ・セブンズでもプレーした。元15人制日本代表の藤田慶和、リオ組の羽野一志が岩渕体制下に加わったのが2019年であるのを考えると、加納は東京組の黎明期を支えた1人と言えよう。
幼少期に葛飾ラグビースクールへ入り、中高生の折はベイ東京ジュニアラグビークラブ、茨城の常総学院高で楕円球を追った。明大を経て所属した明治安田生命のラグビー部は、地域のトップイーストBに加盟する。部員が社業に割く時間は、国内トップレベルのクラブよりは多いだろう。加納は一時、採用試験の面接官を務めたほどだ。
各所で「スーパーサラリーマン」とも注目された29歳は、「去年くらいからは(会社に)ほぼほぼ行っていないような状態で」。東京オリンピックで登録メンバー入りを果たした際、かねて競技活動へ専念しやすくなっていた状況に感謝していた。
「日本代表として出ることが決まった。落ちた選手の分も背負わなければいけないという思いは、より強く感じましたね。僕が7人制をやり始めて4~5年、経ちます。その時から一緒にやっていた、本当に家族みたいな存在になっていた人が目の前で脱落、落選した姿を見ていると、そうした感情がわいてくる」
果たして本番は満足に出番を得られず、なにより1勝に終わった。悔しい体験をどう肥やしにするかが注視されるいま、3年後のパリ大会へどのような思いを抱いているのだろう。
「オリンピックというものがでか過ぎて、それが終わらないと(この先の)イメージがわかない。終わってから考えようかなという感じですね。(15人制への注力は)ないとは言い切れないですが、いまはそのまま7人制をやるふうに…と希望はしています」
かように明かしていたのは、6月下旬の共同取材時である。大会後の心境、今後の意思決定が注目される。