静岡ブルーレヴズ(旧ヤマハ発動機ジュビロ)の堀川隆延監督が言った。
「何も心配いりません」
トップリーグ2021ではホワイトカンファレンスで3勝4敗と負け越して6位。プレーオフトーナメントでも、クボタスピアーズに2回戦で12―46。16強に終わる完敗だった。堀川監督は「あれだけ悔しい思いをした。こんなオフは過ごしたくない」と振り返る。
さらにシーズン終了後にはチーム唯一の日本代表だったヘル ウヴェがクボタに移籍した。山村亮、五郎丸歩といった長らくヤマハを支えた功労者も引退。来季を不安に思うファンも多いだろう。
それでも、堀川監督は「何も心配いりません」と言い切る。
「リーマンショックを経験したのは矢富(勇毅)しかいません。確かに世代交代の過渡期ではありますが、矢富を中心としたシニアメンバーと何度もミーティングを重ねてきた。チームづくりにこれまでのカルチャーをどう継承していくか。それも僕ら(コーチ陣)からではなくて、彼らがこういうチームづくりをしていきたいと話に来てくれた。こういうリーダーが本気で何かをやろうとする姿は見ていて心強い。だからそこの心配は全くない」
7月26日には新体制が発表され、静岡ブルーレヴズとして初のミーティングがおこなわれた。「ヤマハらしさ」、「ヤマハスタイル」という慣れ親しんだ言葉は「All for Shizuoka」(クラブスローガン)、「Revs Style」(チームコンセプト)へと生まれ変わる。
だがヤマハから築いてきたカルチャーが消えることはない。「育成」は柱のひとつとして残る。
「育成という軸はぶらしません。(昨季ファイナリストの)パナソニックやサントリーは日本の選手たちが活躍していた。もう一度自分たちの大切にしてきたスタイルのベースをきっちり作り上げる」
トップリーグ2021では若手選手に多くの出番が回ってきた。「彼らは将来、日本代表になれるポテンシャルがある」と堀川監督は期待する。
「選手たちのポテンシャルを最大化するためのサポートをする。やはり育成を大事にしている以上、名もない選手たちが日本代表になっていく。これは本当に嬉しいことなんです」
HOにはケガで離脱した日野剛志に代わり、江口晃平、平川隼也が定着。FL庄司拓馬、FB奥村翔はチームに合流してまもなくプレーオフに抜擢された。さらにサンウルブズの練習に参加したFB中井健人に、CTB石塚弘章、WTB矢富洋則、CTB白井吾士矛、LO三浦駿平といった面々が出場機会を掴んだ。
「彼らは良い経験をしたし、この経験は必ず生きる。若手の台頭はここ数年なかった。これは(リーマンショック後の)2011年頃に似ている」
2014年度の日本選手権では日本一を経験した。その過程をもう一度歩む。
ただ日本一を目指すうえでは、育成だけでは届かないことも分かっている。トップリーグ2021でNTTドコモが躍進したように、世界の一流選手を獲得する必要性も痛感した。
「一流選手と化学反応が起きるチームづくりをやらないといけない。だから補強もしっかり整えて、育成と2つの両軸でやっていく」
チームがプロクラブとなり、名称が変わったことによる影響も期待する。
「何かが変わる、何かを変えるんだという熱が選手の意識の中に必ず芽生える。そういう覚悟を持って臨まないといけないシーズンになります」
日本ラグビー界で初のプロクラブとして、その方向性を示し、ワンリーグ初年度に先陣を切る責任を果たす。
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