さまざまな困難を乗り越えて、東京2020オリンピックが開幕した。
新型コロナウイルスの影響で大会は1年延期となり、ほとんどの会場は無観客となるが、並々ならぬ努力と精神力でこの地にたどり着いたアスリートたちの檜舞台。ラグビーは2016年のリオデジャネイロ大会に続き、7人制ラグビー(セブンズ)が正式競技として実施される。
7月23日に国立競技場でおこなわれた開会式では、4か国の代表選手団でラグビー選手が旗手として行進した。
大役を務めたのは、ネイサン・ヒラヤマ(カナダ)、アンドリュー・アモンデ(ケニア)、サラ・ヒリニ(ニュージーランド)、ルシラ・ナンガサウ(フィジー)。
セブンズ男子カナダ代表はオリンピック初出場で、最も経験豊富なネイサン・ヒラヤマは共同主将のひとりとしてチームをけん引する。15人制でもワールドカップ2大会出場を含め代表23キャップを持つ万能選手のヒラヤマだが、2016年からは7人制に専念してきた。そして、33歳でついに夢の舞台に立つ。曾祖父母がカナダに移民した日系4世。自身のルーツがある日本で、メープルリーフの旗を持って誇らしく入場した。
ヒラヤマにとってオリンピックは初舞台だが、ワールドラグビーセブンズシリーズ363試合出場はカナダ代表史上最多。同シリーズ通算1,859得点は歴代世界3位の記録で、エースとして活躍が期待される。
ケニアは才能の宝庫といわれるアフリカで屈指のセブンズ強豪国であり、東京オリンピックには男女そろって出場する。特に男子代表はメダルが期待され、チームをけん引するのが37歳のアンドリュー・アモンデだ。ワールドセブンズシリーズ歴代世界2位のトライゲッターであるコリンズ・インジェラと並ぶスターで、2016リオ大会に続きセブンズ男子代表の主将を務める。
ケニアは陸上競技でメダル候補が多いことを考えると、ラグビー選手が旗手に選ばれたのはとても名誉なことであり、女子バレーボール代表主将とともにケニア選手団の先頭を歩いた。
ニュージーランド選手団の旗手に選ばれたサラ・ヒリニ(旧姓:ゴス)は、金メダルを狙う女子セブンズ代表の主将だ。5年前のリオでは、23歳の若さでキャプテンを務め、準優勝の涙を味わった。東京オリンピックで旗手に選ばれ、言葉を失ったというヒリニは、「たいへんな名誉です。私と家族にとって本当に、本当に大きなことであり、再び国の代表になれたこと、そして最大のステージで自分の国をリードできることにとても興奮しています」とコメントしていた。
先住民族マオリの血を引き、2019年に女性で史上初めてラグビーの年間最優秀マオリ選手に選ばれたことでも知られるヒリニは、東京オリンピックでニュージーランド選手団の顔となり、“ブラックファーンズ・セブンズ”の主将として悲願達成を目指す。
そして、7人制ラグビーが国技といわれるフィジーは、女子セブンズ代表主将のルシラ・ナンガサウが旗手を務めた。当初は2大会連続の金メダルを狙う男子セブンズ代表のジェリー・トゥワイ主将ももうひとりの旗手として開会式に参加する予定だったが、3日後に競技が始まるため休養となり、男子競泳選手が代役を務めた。
女子のナンガサウは前回のリオ大会も経験しており、チーム最強のハードタックラーで、力強いボールキャリアーでもある。
2016年のリオでは男子が優勝して母国に初めてのオリンピックメダルを持ち帰り、国民の熱狂的な祝福を受けた。女子チームもワールドセブンズシリーズなどで力をつけており、前回の8位を上回りたい。
ラグビー競技は東京スタジアムが会場となり、男子が先で、7月26日にキックオフとなる(28日が男子最終日。女子は29~31日)。