7月6日、東大・安田講堂で会見があり、丸和運輸機関が大きなプレゼントを東大に手渡した。
社会人チーム(トップイーストCリーグ)に所属する同社(以下、丸和)は、和佐見勝社長が個人として東京大学に20億円相当の寄付をすることを発表した。
◆柏に拠点を移す丸和。内山将文ヘッドコーチ(左)と眞野拓也主将
天然芝と人工芝2面あまりのグラウンドに、クラブハウスがついた「柏センシングフィールド」(仮称)を整備する。敷地は、東大の3大キャンパスである柏キャンパスにあり、広さ約5万2000平方メートル。フィールドが丸ごと計測機器となる設備で、これら「上物」のすべてが寄付で賄われる予定だ。
東大の藤井輝夫総長は、この施設を活用し、丸和ラグビー部と共同研究を行っていくとした。研究テーマは、ラグビー選手のための最先端の「フィジカル・メンタル強化システムの開発」。東大としては、この共同研究など、多くの研究を重ね、スポーツ科学の知見を蓄積。その成果を、高齢者や障害者の分野に応用、一般社会の課題解決に貢献させる。丸和ラグビー部は、共同研究のベースとなる、選手の身体能力、動作解析、戦略戦術などについて、生きたデータを提供することになる。
東大にとっては、大規模な研究施設と機会を得るパートナーシップとなった。実際のフィールドでさまざまな計測ができるメリットは大きい。東大ではこれまでも民間企業との共同研究を数多く行ってきているが、20億円もの初期投資に、年間1000万円(総額約2億円)の研究費提供がついた今回のケースは極めて、異例だ。
新施設を管理運営することになる東大内のスポーツ先端化学研究機構(UTSSI)の機構長、中澤公孝氏は新しいセンシングフィールドの可能性について、「最大の特徴は、本気で動き合っている選手をそのまま計測できること。実際の試合でも計測ができる」と説明した。ラグビーはもちろん、他競技の研究にも役立てられ、選手たちのよりリアルな身体操作についてのデータが得られるのではと期待される。
丸和ラグビー部にとっても、大きなプラスだ。社長の寄付で建造されるグラウンドやクラブハウスは、強化の上で現状を打破する要素になる。天然芝、人工芝に室内練習場もあり、これからは天候を気にせずセッションを組むことができそうだ。もちろん、共同研究のフィードバックの恩恵も、他チームにはないメリットとして期待できる。
移転、と言っても選手たちは生活には大きな変化はない見込み。新グラウンドは、それぞれの職場や自宅からクルマで20-30分圏内で、現グラウンドと大差はない。
チームが新施設で練習をスタートするのは、人工芝グラウンドとクラブハウスが完成する2022年春。秋(9月)には天然芝グラウンドが完成する。公式戦では移動スタンドを設置する計画がある。
新リーグの体制下においては実質6部リーグ所属となる丸和。今年も26人の新人を獲得し、関西地区にも社会人チームを持つ「ラグビー推し」企業が、上位昇格に向けてまた一つ、階段を上がった。