ラグビーリパブリック

近大・福山主将が「打倒天理」への思いを語る。関西のダークホースとなれるか。

2021.07.06

関西大学春季トーナメントで近大は5位に。写真は何度も前進したFL松田翼(撮影:早浪章弘)

 天理を本気で倒してみないか。

 近大の福山竜斗主将が同期にそう問いかけた。
 大学1年生の時だ。

 福山主将が初めて天理大と対戦したのは、1年時、秋の関西リーグ。SOで先発したが、チームは0-50と大差で敗れた。力の差を痛感したという。
「同じ大学なのにここまで差があるのかと。1年生の時から体づくり、チーム作りをやっていかないと、3年後には追いついてないと思った」

 そこで冒頭の言葉を同期にかけた。みんなが賛同して、意識を高く持ってくれる選手が増えたという。2年、3年とスコアは縮まらなかったが、力がついている実感はあった。そして今季、5月30日に行われた関西大学春季トーナメント2回戦で天理大を初めて追い詰めた。

 22-27。
 前半を5-20で折り返すも、後半に3連続トライで逆転に成功。後半30分に逆転を許し、勝利こそお預けとなったが手ごたえを掴んだ。

「今年は自信を持って天理を倒せると思えています」

 4年生には実力者も多く揃う。1年時から先発出場を多く経験するCTB福山主将、PR紙森陽太、FB中洲晴陽に加え、U20日本代表のPR辻村翔平、LO山本秀、そしてSH松山将輝、SO河井優、WTB宮宗翔らがいる。
 中島茂総監督も「FWが例年よりも重くなって平均体重100キロを越える。BKは経験豊富。今年の近大はFWで切り崩してBKで仕留めたい」と自信をのぞかせた。

近大・福山竜斗主将は天理高出身。天理大を倒すために近大へ入学した(撮影:平本芳臣)

 2021年度の春シーズンを締めくくる、春季トーナメントの5-8位決定戦が7月3日、天理親里競技場で行われた。

 近大はこの日、摂南大との5・6位決定戦に臨む。

 前半6分、ゴール前ラックからルーキーNO8、古寺直希が抜け出し先制すると、ブレイクダウン、スクラムで優位に立って3連続トライ。後半はCTBヴィリアミ・ツイドラキに何度も走られ点差を詰められたが、BKの展開力とモールでも強さを見せて突き放した。

 最終スコアは66-26。10トライを奪って大勝した。
 福山主将は「練習では走り込みを増やしてきたので、80分間通して足をつる選手が少なくなった」と言った。今季は神本健司チームディレクターも現場に積極的に関わる。朝練でのウエートトレーニングをグラウンド練習に変更して、走り込みを増やすなど体力強化に着手してきた。
 中島総監督は「ラグビーの原点に戻るべきと話をして、昨年よりも少しは走り込みが多くなった。後半20分で突き放せる天理大のような底力のあるチームを作っていかないと勝てない。そうしたチーム作りをしつつある段階」と説明した。

 春の関西セブンズフェスティバルでは天理大に勝利し、練習試合(40分1本)でも関西学院大、立命館大に勝っている。着々と力をつけ、関西のダークホースとなれるか。

摂南大・瀬川智広監督は「完全に力負け。日頃の練習出ていた小さなミスが試合に大きく表れた」と語った。写真はCTB東将吾(撮影:早浪章弘)
関西大はスクラムの練習がなかなかできない中で、フィールドプレーで相手を上回った(撮影:平本芳臣)

 同日に行われた7位決定戦では、関西大と大体大が対戦。大体大がスクラムで再三ペナルティを奪うも、詰めの甘さが露呈し、効率良くスコアした関西大が35-14で勝利した。

「勝ちがずっとなかった中で今日勝てたことは非常に良かった」と関西大のPR龍田恭佑主将は安堵する。
 先制トライを決めたのは龍田主将だった。前半3分、両PRでパスをつないでトライ。12分に同点とされるも、21分にFL池原自恩のラインブレイクを起点に突き放した。14-21で前半を折り返す。後半もディフェンスで粘りを見せて失点を0に抑え、2トライを追加した。

 コロナ禍の影響を受ける関西大は、現在も上限45人の人数制限下でトレーニングを行っている。ケガの離脱者により、繰り上がって練習に復帰した選手も体力を戻すところから始めるなど、厳しい現状だ。その中で勝利を収められたことは部員たちの励みになる。

 フィールドプレーに注力する関西大とは対極的に、大体大は安藤栄次HCが昨年から強化してきたセットプレーを軸に戦った。スクラムでは完全に圧倒。何度もペナルティを奪った。ペナルティの総数は大体大の4に対して、関西大は12。数字からもその強さが分かる。だが直後のキックやラインアウトでミスを重ね、スコアにつなげることができなかった。

 敗れはしたが安藤HCは沈むことなく言った。
「目指す方向が見えた試合だった。フィジカルのトレーニングや走り込みを弱音吐かずにやってくれている。失速しているイメージはない」

 メンバー23人のうち、4年生はたったの2人。NO8吉田海主将は「4年生が教育実習でごそっと抜けて苦しかったが、3年生以下のフロントローやLOの成長が特に著しかった。4年生が戻ってくるこれからが楽しみ」とレベルアップを誓う。

 Bリーグに所属する大体大は昨年入替戦が行われなかったとあり、今年にかける思いは強い。「この3トライ差を縮めて、どれだけ上回れるか。今はこの立ち位置を受け止めて、秋に勝てるチームを作りたい」と吉田主将は意気込んだ。

 また前週には1回戦を棄権した立命館大が龍谷大を20-17で辛くも下し、9位に入った。11位決定戦は朝日大の棄権により、IPU環太平洋大の不戦勝となった。

「若いメンバーでゲーム経験も少なく、これからゲームプレッシャーを経験していくしかない」と安藤栄次HC。写真はHO茨木拓也(撮影:早浪章弘)