歓喜の時はトライを奪われたあとに訪れたからか、最初は控えめに喜んだ。
しかし、次第に真っ赤なジャージーの円が大きくなった。みんなで跳びはねた。
6月26日、27日におこなわれた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2021の第4戦(今季最終戦)、鈴鹿大会で東京山九フェニックスが優勝した。
27日におこなわれたカップ決勝でながとブルーエンジェルスを14-10のスコアで退けた。2015年シーズンの第2戦、東京大会以来、2回目の優勝だった。
2日間、6試合にすべて勝った。攻守に前へ出るスタイルを貫き、決勝でも多くの時間を敵陣で過ごした。
鈴鹿大会のMVPに選出され、このファイナルでも先制トライを挙げた鹿尾みなみ主将は、6位だった今季第4戦、熊谷大会の反省点から、「チームとしてボールキープを重要視した」と話す。
ただ、ボールを保持することにフォーカスし過ぎて消極的になるのではなく、個々が思い切り動くことを重要視した。
「人任せにするのではなく、一人ひとりが全力で攻め、サポートする」
試合中、よく声が出ていたのも、その姿勢からだ。
前半2分の先制トライもサポートプレーから生まれた(Gも決まり7-0)。
その2分後にトライを許し2点差に迫られるも(7-5)、前半6分にふたたび前へ、前へとボールを動かし、14-5として前半を終えた。
後半は無得点に終わるも、与えたトライは試合終了直前のひとつだけ。決してすべてがうまくいったわけではなかったが、全員でつかみとった優勝だった。
鈴鹿大会では頂点に立ったフェニックスだが、第3戦の熊谷大会は6位、第2戦の静岡大会は2位、第1戦の東京大会は4位。全4大会の総合成績で争う年間総合順位は2位だった。
年間チャンピオンとなったのは、鈴鹿大会で準優勝だった、ながとブルーエンジェルスだ。
今季第1戦から鈴鹿大会まで、順に3位、3位、2位、2位。優勝こそなかったが、安定して力を発揮し続けたシーズンだった。
特に、ほぼサクラセブンズで構成されたチャレンジチームをプール戦とファイナルで追い詰めた熊谷大会の印象は強い。
コロナ禍で来日するはずだった外国人選手の数は、予定の3分の1となったが、その現実が選手たちの結束を固くした。
「やるしかない、と」
藤崎春菜主将は、全員で覚悟を決めたと話した。
日本人選手たちは奮起し、コミュニケーションをこれまで以上に取るようになった。
2人の外国人選手も、より大きくなった責任感から仲間との連係をより強くし、信頼されるプレーを続けた。
ながとにとっては、予定された4大会のすべてが中止となった2020年シーズンを挟み、2019年シーズンに続いての年間チャンピオン。
連覇には違いないけれど中身はまったく違うものだから、喜びの味も格別だった。