歴史的一戦の舞台となるのは、数々の名勝負のドラマが生まれたスコットランドのラグビーの聖地、マレーフィールドだ。
6月26日、日本代表がブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに挑む。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドを代表する一流選手を集めて4年に一度結成し、1888年からの歴史と伝統を誇るドリームチームのライオンズに、日本代表が挑戦するのは初めて。2019年のワールドカップで日本中を興奮させて悲願のベスト8入りを果たし、世界も認めた“ブレイブブロッサムズ”がテストマッチを戦うのは約1年8か月ぶりだ。
「すごく広いなと感じました。芝生もいい感触で、最高の場所だと思います」
日本代表の15番をつける山中亮平は、試合前日にマレーフィールドで練習したあと、そう言った。
今回の欧州遠征スコッドで最年長。スコットランドで33歳の誕生日を迎えた。円熟味を増し、常に冷静な男は、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦に先発する感想を聞かれ、「素直に嬉しいです」と答えた。「ライオンズと試合をする機会はなかなかない。小さいときからテレビで観ていたチームなので、そのチームと試合ができるのはすごく嬉しいです。ワクワクしています」
ライオンズはキックを多用してくると予想する。バックスリーとして特に気をつけるのは、ハイボールやキック処理だ。左WTBに入り、テストデビューとなるシオサイア・フィフィタとのコミュニケーションはしっかりとれていると山中は言う。右WTBで先発の松島幸太朗はワールドカップも一緒に戦った仲間で、連携は心配していない。
「キックをキャッチする人にプレッシャーがかからないように、まず、相手キッカーやラックでこちらがしっかりプレッシャーをかけることが大事だと思います。ボールをキャッチするときはスキルを使ってしっかり捕る。そして、バックスリーはいいアタックをしていかないといけない」
一方、FWで日本代表のキーマンになりそうなのは、LOのジェームス・ムーアだ。28歳のオーストラリア人である彼もまた、ワールドカップ8強入りに貢献し自信を深めたひとりで、ライオンズ戦に闘志を燃やす。
「とても興奮しています。世界でいちばん有名なチームと戦えるので、エキサイティングな気持ちでいっぱいです」
対面となるのは、世界歴代最多の157キャップを誇るウェールズの闘将、アランウィン・ジョーンズだ。身長195センチ、体重110キロのムーアに対し、ジョーンズは198センチ、122キロ。ラインアウトやキックオフボール争奪、ブレイクダウンなどで激しいバトルが予想される。
「彼は世界でも最高のプレーヤーのひとりなので対戦できることは楽しみです。でも、彼がどういうことをしてくるかよりも、自分の仕事にフォーカスすることが大事で、しっかり遂行したいと思っています」
スクラムについても、合宿でしっかり取り組んできたと自信を持つ。ワールドカップ時から後退しているとは思っていない。テクニックも忘れていない。「さらに磨きをかけて準備してきました」とムーア。
欧州遠征前に日本でおこなったサンウルブズ相手の強化試合ではブレイクダウンが課題として見えたが、「FWとしてしっかり修正してきました。ゲームプランに関わる部分なので具体的なコメントは控えますが、キーポントということでフォーカスして取り組んできました」。モールディフェンスも、時間をかけてしっかり準備してきたと自信を持つ。
自分たちのラグビーを最初から出したい。そして、思い切り挑戦する。
ちなみに、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズがホームで試合をするのは2005年にカーディフ(ウェールズ)でアルゼンチン代表と対戦して以来となる。基本的に、ライオンズは南半球へ遠征するため地元で試合をするのは珍しく、新型コロナウイルス感染症対策のなかで入場が認められた16,500人の観客は歴史的一戦の目撃者となる。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ vs 日本代表の試合は、今夜、日本時間23時(現地時間15時)にキックオフ。日本では、日本テレビ系列(地上波)、hulu(フール―)、J SPORTS 1、J SPORTSオンデマンドで生中継・ライブ配信される。