ラグビーリパブリック

天理大は何者か。2連覇達成へ見つめる足元。

2021.06.21

天理大は明大相手に接点で引けを取らなかった。LO亀沖泰輝の突進(撮影:長岡洋幸)


 自分たちが何者かを理解していた。

 対戦校に高校時代から有名だった大型選手が並ぶのを、天理大ラグビー部の岡田明久FWコーチは「うちはそんなん、慣れてますわ」と受け止める。

「(自軍は)ちっさいのが当たり前やから。ちっさいのを(負ける)理由にせんように鍛えてきましたんでね。工夫と、走力と、大きいチームにはないもんで勝負してますから」

 確かに天理大は、サイズに頼らぬ強さを魅力とする。

 身体をぶつけ合う競技特性があるなか、岡田コーチの担当領域となるスクラムでは低くまとまった塊を錬成。その他、防御の背後を通すパス、集散のスピード、持久力、相手の下半身へ突き刺さるタックルでも光る。昨季、加盟する関西大学Aリーグで5連覇を果たし、全国大学選手権では初の日本一に輝いている。

 2021年6月20日、激戦区の関東勢とのゲームを今季初めておこなう。前年度の大学選手権準決勝で制した明大を、長野・飯田市松尾総合運動場で迎える。

 全国の俊英を各学年に揃える明大に対し、天理大は留学生と無印の星を軸に据える。さらに今回に至っては、現近鉄で日本代表のシオサイア・フィフィタら前年度までの4年間のレギュラー選手を卒業させている。

 今季の佐藤康主将は、「関東のチームとやるのは自分も久々で、初めての選手もいた」。身長169センチ、体重97キロ。スクラム最前列のHOとしてこの日はリザーブスタート。新陳代謝の求められるクラブの象徴は、決意表明にらしさをにじませる。

「自分たちはチャンピオンですけど、関東のチームにはいつでもチャレンジャー(の姿勢)で臨みたい」

 前半7分に先制し、続く20分には14-7と勝ち越した。ハーフタイム間際に向こうの堅守に苦しめられ、一時14-21とリードされるも、後半15分、ラインアウトからの用意された攻めで21-21と同点に持ち込む。

 試合終了間際の失点で21-26と敗れ、「なんで負けたのかを考えながら、夏、秋に向けて頑張りたい」「最後(試合終盤)にはスクラムも組み負けているのが自分たちでもわかっていた」と反省こそすれ、「緊張のなかでも、自分たちのやりたいことを出せた部分もあった」。自身を含めた多くのレギュラー候補に発破をかけるよう、こう続ける。

「切磋琢磨し、それぞれのポジションでいい争いができたら」

明大戦で伸びるランを見せた天理大WTBアントニオ・トゥイアキ(撮影:長岡洋幸)

 就任27シーズン目の小松節夫監督は、今度の明大戦を受け「(春季大会や招待試合で全国上位の)東海大さん、帝京大さんと揉まれているチームに対して(今季の天理大が)どういう感じ(で戦える)かな…と思って臨みましたが、やはり簡単ではない」。本来なら上回りたかった動き出しの鋭さ、粘りで後手を踏んだと見て、脱帽した。

「明大さんの方がアグレッシブだった。逆にうちがもっとクイックにラグビーしたいんですけど」

 この先は、明大と同じ関東大学対抗戦A所属の筑波大と練習試合をする。夏合宿期間も、全国上位を占める他の関東勢とトレーニングマッチを組みたい。

 小松監督は昨季、部内のクラスター発生に泣かされながら頂点に立った。その際に活かしたのが、一昨季までの「経験」だった。大学選手権で明大、早大の分析力、業務遂行力を見せつけられた悔しさを胸に、昨季は終盤になって攻撃陣形を微修正するなど新たな手を打った。

 ディフェンディングチャンピオンとして臨むシーズンも、「経験」を肥やしに這い上がろうとしている。

「経験を積むしかない。きょうの負けを含め、経験を積んでいけばなんとか(大学選手権で)戦えるかなと感じているんですけどね」

 自分たちが何者かを理解し、自分たちがどうしたら勝てるかを模索する。かくして再び凱歌を奏でたい。

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