ラグビーリパブリック

日本代表デビュー間近? 強化試合で活躍のガンターがかねて語った決意とは。

2021.06.16

サンウルブズのNO8として日本代表に挑み、活躍したベン・ガンター(撮影:松本かおり)


 6月12日、もっともインパクトを残した1人だった。

 静岡・エコパスタジアムでのラグビー日本代表の強化試合で、「JAPAN XV」名義の代表主力格へサンウルブズの一員として出場。得意のジャッカルで反則を誘い、ただただ謙虚に総括した。

「仲間がいいタックルをしてくれた。チームのおかげです」

 ベン・ガンター。このほど初めて日本代表となった23歳だ。オーストラリア出身でタイ国籍を持つ。8日までの別府合宿に参加し、強化試合では過去に自身も在籍したサンウルブズへ回った。

 ポジションはFL、NO8といったFW第3列。身長195センチ、体重120キロと大きな身体で「いかに地面から速く起き上がるか、試合に戻るかを意識しています」。倒れた直後の素早い起き上がり、相手の接点へ絡む回数としぶとさが光る。

 所属先のパナソニックでは以前、オーストラリア代表きってのボールハンターであるデービッド・ポーコックとプレー。現在も同じFLでやや小柄な元日本代表、布巻峻介とともに地上戦の自主練習を重ねている。

 その積み重ねが、以後の選手選考に関わりそうな80分で活きた。

「ポーコックがチームにいた時から一緒にいろんなドリルをやって、いかに試合に戻るかのスピードにはこだわって練習してきました」

 サイドは刈り上がりトップの長髪が結ばれる。一時はトップがドレッド風に編まれて一部は赤かった。大きな瞳や高い鼻によく似合う。

 その見た目以上に鮮烈なのが、ぶつかり合いでのインパクトである。

 ジャッカルや突進の他、相手を狙いすまして決めるタックルも圧巻の一言だ。国内トップリーグのある試合で相手をのけぞらせ、その映像が日本のスポーツバラエティ番組で紹介されたこともある。

 異国のテレビでの扱われ方を知り、不敵な笑みを浮かべたものだ。

「そのイメージで知られていることには驚いていますが、ポジティブに伝わっているのを祈ります」

 パナソニックの飯島均ゼネラルマネージャーいわく、「皆さんの知られていないところで相当な下積みをしています」。母国でプロ契約が勝ち取れず、オーストラリア軍への入隊を考えていたところに来日の機会を得た。

 2015年に練習生として群馬に訪れ、一時帰国の後に合格を知ったのが2016年だった。以後、元オーストラリア代表ヘッドコーチのロビー・ディーンズ率いるクラブで、心身を磨いてきた。

 2019年秋のワールドカップ日本大会時も、本来なら日本代表でプレーしていてもおかしくはないと見られていた。しかし、国際統括団体のワールドラグビーに、当時、代表資格を得る条件だった「連続居住36か月以上」を果たしていないと判断された。目指していた日本代表でのプレーは、一時、お預けとなった。

 今年4月、日本代表候補へ加わった。回り道を経て、欲しいものに近づいたのだ。それでも気持ちを聞かれれば、自身の喜びばかりを語るわけではない。同僚の初の候補入りにも触れる形で、こうまとめた。

「率直に自分の名前を見つけた時は嬉しかった。目標のひとつだったので。ただ同時に、チームメイトであるディラン(・ライリー)、ジャック・コーネルセン、クレイグ・ミラーらの名前を見つけたことも嬉しかった」

 果たして、秋に代表資格取得見込みのライリー以外の3名が日本代表となった。ガンターがアピールした強化試合を経て、チームは欧州へ渡る。

 26日以降、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズなどとのテストマッチに挑む。代表デビューとその日の活躍が期待されるガンターは、かねて強調していた。

「私自身、長期の目標を立てるタイプではない。一週間、一週間、いいパフォーマンスを発揮することが目標です。その先に、大きな目標(の達成)があると信じています」

 まずは、次の練習に全力を注ぐ。

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