女優の井川遥に似てるな。正統派のべっぴんさん。癒しも漂う…。
タイチはん、そう思わへん？
「思います」
ライナーズの偉い人のあいづちには、若干、間があったような気がせんでもない。まあ、ええわ。
秦亜希子（はた・あきこ）はん。Kitchen & Café QUEEN’S COURT（クイーンズ・コート）の看板娘やで。少しばかり、とうは立っているかもしれんけれど…。
お店は近鉄東花園駅から徒歩1分。なので、＜東花園の井川遥＞。かなり地域限定やけど。
「言われたことはありませーん」
そうおっしゃったらこの物語は成立しませんのよ、おほほほほ。ごめんあそばせ。
河内の女やのに、おくゆかしいなあ。
お店は花園ラグビー場のある駅北側。ライナーズのおひざ元。井川遥はホール係なり。
「ありがとうございます」
注文をもらった後、感謝の返しを忘れへんで。華やかにKeep Smiling。子供は3人やけど、体はスリムなまんま。大体大時代にダンス部だけあって、健康的で、その動きにはキレがある。
ここの味、タイシンくんは大好きや。
「週3で行く勢いです。なんか、落ち着くんですよね。食堂と違って、カフェやから、食後にコーヒーも飲めてゆっくりできるんです。現役の頃は、目玉焼きやウインナーをサービスしてくれたのもうれしかったですね」
料理は洋食が中心や。人気はカレーとハンバーグがひと皿に乗った「コンビネーション」（980円）。カレーは辛さの中に溶けだした肉と野菜のうまみが広がる。ハンバーグは表面かためで中はふわっ。香ばしい焦げ目のあとから濃い肉汁がしたたる。やばい、やばい。
海老フライや鶏のから揚げなど4種類がメインの「クイーンズランチ」（1200円）は、ミキオくん推し。大学の2つ後輩、ツボイくんが勝手に作ったスペシャルはチーズ乗せハンバーグに唐揚げ。そんなわがままも聞いてもらえる。
「カレーは中で炊いていますし、海老フライは、まず海老そのものが大きい。衣も中でつけて、一から作っています」
井川遥は自家製に胸を張る。調理責任はマスターで夫でもある比呂武（ひろむ）はんや。
この苦み走ったいい男は、大のライナーズファン。
「選手寮が店の近くにあって、みんな食べに来てくれました」
オフィシャルハンドブックは出し始めと思われる2005年から保管。ファンクラブには翌年から加わっておる。
ベンファー・キバルの名前とか、フッカーやった子のあだながブルとか、コアなことが、立て板に水のごとく出てくる。
「そこのテーブルでトーエツと木村さんが入団について話し合っていました」
ライナーズの歴史を知ってるで。木村さんは今、愛媛近鉄タクシーの社長やな。
社会人ラグビーはこれから変わる。新リーグが創設され、トップリーグにあたるグレードは12チームと従来から4つ減る。そこに、2部のトップチャレンジやったライナーズが入るのは難しいかなあ。
それでも井川遥はライナーズを応援する。
「もっともっと強くなってほしい。またJスポーツで試合を流してもらえるようになったらうれしいです。中継があった頃は楽しく、面白かったなあ」
最上のリーグにおらへんと、中継はないわね。週末もお店で働いていたら、なんぼラグビー場が近いとはいえ、生で試合を見る機会はあらへんねんわ。
クイーンズ・コートの店内は茶系で、くつろぎ感ありありや。表の扉と窓を取り払って、開放感も抜群。晴天のこの時期、生駒山から薫りのいい風が吹き下ろしてくるで。あっ、コロナもあるのね。対策は万全や。
マスターがお店を開いたのは2000年。今年で22年目。早ければ3か月で閉まる、と言われている飲食店にしてはご長寿さんや。素晴らしい。店名はマスターがイギリスから採った。かの国の留学経験者でもある。
開店の翌年、2人は結婚した。ともに地元出身で、共通の友人の紹介で知り合った。そこから基本、二人三脚でやってきた。嫁は美しく、働き者。家でも店でもずーっと一緒や。
果報者でんな、マスター。
「まあ、店では仕事ですから」
マスターは木で鼻をくくったような返事やけど、ラブラブなんは見ていてわかる。
せやけど、おうちでは、井川遥が主導権を握ってるんとちゃうやろか。クイーンズだけに、「女王さま」。
おあとがよろしいようで。
Kitchen & café QUEEN’S COURT（キッチン＆カフェ クイーンズ・コート）
■〒578−0924 東大阪市吉田7−1−9 SEビル1階
072−960−0808
■営業時間 午前7時〜午後5時（コロナ期間、通常は午後6時まで）
■店休日 水曜
■座席数 34（2人、4人テーブル、カウンターやテラス席などを合わせて）