新たにノンキャップ13人を選出。LOトンプソンとWTB福岡の後継者は!?
現時点での最後のテストマッチであるラグビーワールドカップ2019日本大会の南アフリカ戦から数えて、実に600日あまり。勇敢なサクラの戦士たちが、久々にピッチに帰ってくる。
コロナ禍による空白期間を乗り越え、2023年のワールドカップフランス大会へのスタートを切る新生日本代表の最初の対戦相手に指名されたのは、サンウルブズ。ジャパンの対になる存在として多くの選手がここで経験を積み、2019年大会の躍進を支えたチームだ。会場は忘れがたきあのアイルランド撃破の舞台となった静岡県のエコパスタジアム。その先に控えるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとの歴史的一戦(6月26日、日本時間23時キックオフ@スコットランド・エディンバラ)に向け、さまざまな意味で話題満載の一戦となった。
5月24日に発表された日本代表36人の顔ぶれを見ると、2019年のワールドカップ出場メンバーで引き続きスコッドに名を連ねたのはFLリーチ マイケル主将を筆頭に 19人。残りの17人のうち、13人がノンキャップという構成だ。世界トップ8入りを果たした従来の主力を軸に据え、これまでのスタイルを継承しつつ、目指すラグビーにフィットする新しいエッセンスを加えて、戦い方のさらなる進化とスケールアップを図る――という狙いが、そこから浮かび上がる。
発表に際し、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチはこうコメントしている。 「準備の時間が限られているので、トップリーグでいいプレーをしていた選手、仕上がっている選手、コンディションのいい選手、フィットネスに優れている選手を選んだ。経験がある選手も重要になる。同時に、2023年に向け若い選手も入れている」
2019年のチームとの比較でひとつのポイントになるのは、LOトンプソン ルークとWTB福岡堅樹が抜けた穴を誰が埋めるかという点だ。トンプソンはキックオフおよびラインアウトにおける高さと密集戦での驚異的な仕事量、福岡はスピードを生かした幅広いカバーリングと何よりトライを取り切る力で、いずれも欠かせない存在だった。似たタイプの選手でカバーするのか、それとも持ち味の異なる選手を入れてまた違った強みを押し出すのか、首脳陣の意思が見てとれる部分になるだろう。
LOではポスト・トンプソンとして期待されていた197cmのマーク・アボットが故障で途中離脱する中、所属先のパナソニックで主にNO8で活躍したジャック・コーネルセンが評価を上げている。195cmと国際級のLOとしては小さいものの、豊富な運動量を生かして献身的に体を張り、ラインアウトジャンパーとしてのスキルも高い。強豪国ともっとも差があるといわれるポジションで、日本代表の救世主となれるか。
WTBは選出された5人中、2019年経験者はレメキ ロマノ ラヴァだけで、4人が初選出(江見翔太はケガで離脱)。もっともどの選手もかつてサンウルブズでプレーしており、連携面で大きな不安はない。卓越したフットワークが魅力のセミシ・マシレワ、直線的なスピードと特大のキック力を誇るゲラード・ファンデンヒーファー、圧巻の強さとCTBもこなすスキルをあわせ持つシオサイア・フィフィタと、それぞれの個性をいかに活用するかが注目される。
ライオンズ戦に向けた貴重な実戦機会。バックロー、CTB陣、10番争いも注目
今回のサンウルブズ戦はジャパンにとって久しぶりの実戦であり、ライオンズ戦を前にした唯一の試合機会だ。そのため、より多くの代表選手に少しでも長くプレータイムを持たせるべく、別府合宿に参加した日本代表スコッドから9名をサンウルブズ側に加えて、紅白戦に近い形で実施されることになった。ライオンズ戦に向けた数少ないアピールの場だけにどの選手も並々ならぬ意気込みで臨んでくるのは明らかであり、手の内を知る者同士ゆえに地力が表れやすい側面もある。むろんサンウルブズメンバーとして招集された面々にとってもまたとないチャンスで、単なる対戦相手で終わるつもりはないだろう。同ポジションでのせめぎ合いやセットプレーの仕上がり具合、新戦力との連携など、見どころは尽きない。
先述したLOとWTB以外のポジションで興味がふくらむのは、リフレッシュのため今回は選出を見送られた堀江翔太、流大が2019年大会で先発を務めたHOとSHだ。HOでは前回大会を経験している坂手淳史を、帝京大の後輩である堀越康介が追いかける構図か。SHは10キャップを持つ茂野海人がリードしている状況だが、ユース時代から次世代のジャパンの9番候補と評されてきた齋藤直人に期待する声も多い。
マッチアップという点では、名手が並ぶFW第3列で激しいバトルが繰り広げられそうだ。日本代表はキャプテンのリーチをはじめ、ピーター・ラブスカフニ、アマナキ・レレィ・マフィ、さらには抜群の推進力を誇るテビタ・タタフに仕事人の小澤直輝と、組み合わせが楽しみなキャラクターがそろう。一方のサンウルブズ側も、今回のキャプテンに指名された“ミスター・サンウルブズ”、エドワード・カークを筆頭に、布巻峻介、日本代表から回ったベン・ガンターと、インパクトある顔ぶれになった。
そのほか、中村亮土&ファエレ ティモシーの鉄壁コンビに新顔のシェーン・ゲイツが加わったジャパンのCTB陣に対し、今年10月の代表資格取得を嘱望されるディラン・ライリー、高校時代から大器と謳われてきた梶村祐介がどんなプレーを見せるかも焦点のひとつだ。こちらも天才と称され代表定着を待望されてきた山沢拓也と、田村優、松田力也の司令塔対決にも、多くの関心が集まるだろう。
この試合のために再結成されたサンウルブズを率いるのは、2020シーズンのスーパーラグビーで指揮を執った大久保直弥ヘッドコーチと沢木敬介コーチングコーディネーターの2人。2020年の開幕戦でレベルズを撃破するなど短い準備期間で確かな実績を残しており、今回の試合でも存分に選手たちのポテンシャルを引き出して果敢にチャレンジしてくれるだろう。日本代表も戦法設計の要であるトニー・ブラウンアシスタントコーチがスーパーラグビートランスタスマンに出場するハイランダーズを離れて別府合宿に参加し、着実に準備を重ねてきた。2023年ワールドカップへ向けた旅の第一歩となる一戦。必見だ。
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