いきなりタフに追い込んだ。6月7日の初のセッションを終え、布巻峻介は笑う。
「人数が少なく難しい状況でしたが、午前、午後と、最後は足がつりそうなくらいいい感じに追い込めて…。集まったばかりですけど、皆、積極的に参加して、本当にいい練習ができました」
サンウルブズへ呼ばれた。2020年まで国際リーグのスーパーラグビーに参加していた日本唯一のプロクラブは、12日、静岡・エコパスタジアムで日本代表と強化試合をおこなう。大久保直弥ヘッドコーチのもと、短期間でチームを作る。
今回の招集依頼を受けたのは5月下旬。パナソニックの一員として、今季のトップリーグを制した後のことだった。
2019年にはワールドカップ日本大会の直前まで日本代表に帯同。大会後には、2020年シーズン限りでスーパ―ラグビーから撤退するサンウルブズに在籍した。今回のツアーに身を投じるまでの心境を、こう述懐する。
「参加するまでは、このゲームにどういう形で臨めばいいのかまとまっていなかったんですけど、まず、日本代表と試合ができるところを楽しもうと考えました。それにプラスして、またサンウルブズというチームに参加できることも。自分にとって今後の選択肢を広げていけるゲームだとも思いますが、最初はシンプルに『楽しそう!』。…そう、思いました」
今度のサンウルブズの陣容は変則的だ。始動時は、発足した2016年から4季プレーしたエドワード・カーク主将ら少人数で活動。8日以降、大分で合宿をしてきた日本代表メンバーの一部を迎え入れる。多くの代表選手にゲームタイムを与え、ナショナルチームの底上げを促すためだ。
9日、サンウルブズの練習がメディアに公開された。
「コミュニケーションは100パーセント」
「ターンオーバーが起きても慌てない! コントロール!」
沢木敬介コーチングコーディネーターがこう音頭を取るなか、日本代表候補の梶村祐介が鋭い突破とキックを追う動きでアピール。控え組には、会場付近で活動するヤマハから派遣された面々も並ぶ。登録メンバーはいまのところ全部で24名だが、15対15の練習が成立する。
興味深いのは、ヤマハから今季限りで引退した山村亮も訪れていたことだ。元日本代表PRの山村は実戦練習に加わり、FWのスクラム練習では田村義和コーチとともにじっと塊を見つめた。
何より本体組へは、ベン・ガンター、ヘル ウヴェら代表組も溶け合っている。7日の時点で、布巻はこう話していた。
「ジャパンから来るメンバーにも調整が難しいところがあると思う。ラインアウトのサイン、フィールドでの動きは僕らが(予め)できる限り理解して、教えてあげられるくらいになろうという感じで話はしました。個々のポテンシャルは高いので、決められた大枠のなかで自由度を持ったアタックをすると思います」
静岡県内での調整は11日まで続く。オープンサイドFLを本職とする身長178センチ、体重98キロの28歳は、「準備期間がないなかでチームを作るというのがサンウルブズのひとつの魅力。試合が始まったら、ずっと相手にプレッシャーをかけていくことをしたい」と牙を研ぐ。