4月30日に活動終了を発表し、55年の歴史に幕を下ろすこととなったコカ・コーラレッドスパークスが、公式ウェブサイトで『全てのファン・サポートいただきました皆さまへ』と題してメッセージを掲載した。
「長きにわたり、共に歩み、寄り添っていただきましたファン、そしてサポートいただきました皆さま、および55年の礎を築いていただきましたOB諸氏のご尽力に心より感謝申し上げます。勝敗はつきものの世界ですが、負け続けたとき、大敗を喫したとき、降格したとき、全ての局面において我々を常に前へ向かせたのは間違いなく皆さまです。皆さまの温かい声援が何より我々の背中を押してくださいました。皆さまの後押しを受け日本代表、7人制日本代表へ選手を送り出すことが出来、日本ラグビー界へ微力ではありますが貢献できたのではないかと思います」
レッドスパークスの歴史が始まったのは1966年。日米コカ・コーララグビー部として創部した。福岡社会人ラグビーBリーグで活動を開始し、その後は西日本社会人リーグでも力をつけ、2000年度には悲願だった全国社会人大会に初出場。トップキュウシュウAリーグで全勝優勝した2003年度には日本選手権大会の舞台にも初めて立ち、新たな歴史を刻んだ。そして、2004年にはカンパニースポーツクラブとして強化スポーツクラブに認定され、会社のバックアップ体制が整い、2006年にトップリーグ初昇格。
日本最高峰リーグへ導き、レッドスパークスにとって最後となる2020-2021シーズンも指揮を執った向井昭吾・部長兼監督は、当時をこう振り返る。
「2004年にラグビー部監督として、『3年でトップリーグ』と選手のマインドセットから始め、徐々にチームが育っていったことを走馬燈のように思い出されます。1年目は『目指せ・トップリーグ』の旗印のもと、毎日が合宿と思うような激しい練習を毎日積み重ね、2年目に入り少しずつ実力もつき、練習試合など強豪チームに胸を借り、確認の日々が続きました。そして最終戦で近鉄さんとのトップリーグ昇格をかけた試合で勝利することができ、ここは私の中では勝ってしまったという思いでした。そして3年目からトップリーグに参戦することができました。この年に、ここで少し九州の地に恩返しができたかなと感じた瞬間でした」
トップリーグでの最高成績は2009年度の8位。
日本代表にも選手を送り出し、「ミスターセブンズ」と呼ばれた桑水流裕策は2016年のリオデジャネイロオリンピックで7人制日本代表の主将を務め、4位入賞の快挙を成し遂げた。2019年にはワールドカップ日本大会でウィリアム・トゥポウが活躍し、15人制日本代表初のベスト8入りに貢献。そして、同じくレッドスパークスの誇りを持つ副島亀里ララボウ ラティアナラと津岡翔太郎は現在、東京オリンピックを目指して頑張っている。
チームが活動終了となり、引退を決めた者や、新しい道を探している者もいる。いま、全選手・スタッフは必死に前を向こうとしている。これからは一人ひとりが新たな夢への挑戦となる。
向井部長兼監督は、「スローガン『良きラガーマンの前に良き社会人たれ』という言葉通り、選手は仕事とラグビーの両立をしっかりと体現して、地元福岡のみなさまをはじめとして九州そして全国のファンの方々に応援され、また愛され支えられてきたチームです」と述べる。そして、チームを代表してこうコメントした。
「これまで、レッドスパークスの活動は全国のファンの皆さま、地域の皆さま、関係者の皆さまの想いとそして会社の理解があったからこそ、55年の歴史と伝統を築き上げることができたものと感謝いたします。これからも日本ラグビーへの貢献は微力ながら続けて行きたいと考えております。最後に、わたしたちは引き続き社会貢献活動を通じて、地域社会や、スポーツ文化のさらなる発展に寄与してまいります。本当に長い間サポートいただきありがとうございました。これまでのご支援や応援に心より御礼申し上げます」
コカ・コーララグビー部は、ある意味、雑草軍団だったかもしれない。
そう語るのは、創部50周年を祝った2016年に監督を務めていた臼井章広氏だ。たくさんの人にサポートしていただいて50周年を迎えられたと感謝する臼井氏は、こんな逸話を教えてくれた。
「かつて、きな粉会というのがあったんです。仕事が終わって、九大さんのグラウンドなどを借りて練習していたそうですが、土のグラウンドで汗だくになってやると、体がきな粉だらけみたいになるでしょ。そういう歴史があって、いまがあるんですよね。環境は整っていなくても、一生懸命やることが大事だと教えていただきました」
伝統を受け継いだ選手たちは、相手が根負けするくらい懸命にタックルを繰り返し、そのひたむきなプレーはファンの胸を打った。
ありがとう、コカ・コーラレッドスパークス。
チームの公式ウェブサイトでは、レッドスパークス一同としてこんな言葉で締めくくっている。
我々が愛するラグビーを愛してくれた全ての方に、
レッドスパークスを愛してくれた全ての方に、
ラグビーをENJOYしてくれた全ての方に、
心から感謝します