ラグビーリパブリック

トップリーグMVPは福岡堅樹! 新人賞は竹山晃暉と金秀隆。稲垣、バレットらベスト15

2021.05.24

福岡堅樹は意外にもMVP初受賞。有終の美を飾った ©JRFU


 ジャパンラグビートップリーグ2021の年間表彰式が5月24日におこなわれ、MVPにはパナソニック ワイルドナイツの優勝に大きく貢献した福岡堅樹が輝いた。医師を志し、今シーズン限りで引退することを表明していたWTBの福岡は、ワールドクラスと呼ばれたスピードを武器に、リーグ戦とプレーオフトーナメント(10試合出場)で計14トライを挙げ最高のフィニッシャーであることを証明し、ベストフィフティーンにも選出された。

「引退する最後の年にこのような最高の栄誉をいただいて、本当に光栄に思う。残された試合が何試合とかいっさい考えずに、目の前の一試合一試合に、自分ができる最高のパフォーマンスを少しでもファンのみなさんに届けたい、自分自身も後悔が残らないように全力を尽くしたいという思いで目の前のことに集中してやってきた」

 学業との両立でハードスケジュールをこなしながら、有言実行で見事に有終の美を飾った。

プレーオフ準決勝のトヨタ自動車戦ではハットトリックの活躍だった福岡堅樹(撮影:高塩 隆)

「ここまで自分自身を高めることができたのはラグビーのおかげ。(少年時代は)まさかここまでラグビーを続けるとは思っていなかった。トップリーグに入ることすら考えていなかった。いろいろと挫折は経験しているが、挫折を挫折のままで終わらせない。それを少しでも次の成功のもとにできるように、すぐ切り替えて、常に前向きにやってきたことがなんとかここにつながったのかなと思う。これからもラグビーとの関わりは大事にしていきたい。医師としてだけではなくて、何かしらラグビーに貢献できることがあれば、探しながらやっていきたい」

 そして、これまで応援してくれたファン、ワイルドナイツ、チームメイト、サポートしてくれたすべての人たちに感謝を述べた。

2015年度以来5回目の優勝を遂げたパナソニック ワイルドナイツ。
規律もよく、フェアプレーチーム賞も受賞した(撮影:高塩 隆)
新人賞の竹山晃暉(左)と金秀隆 ©JRFU

 新人賞は、昨シーズンのトップリーグが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で不成立となったため、2020年大会および2021年大会の新人賞対象選手からトップリーグ2021のリーグ戦7節で最も活躍した選手各1名が選ばれることとなり、パナソニックのWTB竹山晃暉とクボタスピアーズのFB金秀隆が選出された。

竹山晃暉はパナソニックに2019年度加入。6試合だけの初年は全試合先発(撮影:松本かおり)

 パナソニック入団2季目だった竹山は、リーグ戦全7試合に先発して6トライを記録。「チームの優勝に貢献できたことはうれしい」。しかし、練習中の負傷によりプレーオフの舞台には立てず、悔しい思いも抱いた。
「チームに貢献できることはもっとたくさんあると思うので、次のシーズンへ向けて切り替えて準備していこうと思う」
 日本代表にもどんどんチャレンジしたいという竹山は、パナソニックのロビー・ディーンズ監督を通してサンウルブズに加わりたいという思いを伝えている。6月12日に静岡で日本代表の強化試合の相手を務めるサンウルブズに、チャンスがあれば、いつでも試合に出られる準備はしていると話した。

出身校は関東大学リーグ戦2部の朝鮮大。無名の星になった金秀隆(撮影:早波章弘)

 金はクボタのルーキーながら開幕から背番号15をつけ、チームの全10試合(プレーオフを含む)にフル出場し活躍した。
「まさか新人賞に選ばれるとは思っていなかった。うれしいの一言に尽きる」
 金は朝鮮大出身。そのころ育んだチャレンジャー精神はいまも活きているという。
「朝鮮大という(関東大学リーグ戦)2部の下のチームでやってきた。そのなかで、2部のトップチームや1部のチームと練習試合などをさせてもらったが、常にチャレンジャー精神を持っていた。その気持ちは、トップリーグでのパフォーマンスにもつながっていると思う」
 さらなる成長を期待される金も、「100%、日本代表を目指したい」とハッキリ口にした。

最多トライゲッターのマロ・ツイタマ(左)とテビタ・リー ©JRFU

 最多トライゲッターは2人で、リーグ戦で10トライを挙げたサントリーサンゴリアスのWTBテビタ・リーとヤマハ発動機ジュビロのWTBマロ・ツイタマが初受賞となった。

 リーは、リーグ戦第7節までの55試合を対象にゲインメーターの記録が最も高かった選手に贈られる「Opta賞」も受賞し、ベストフィフティーンにも選ばれている。
 しかし、彼も負傷でプレーオフには出場できず、笑顔でシーズンを締めくくることはできなかった。
「悔しい思いがあふれている。昨日(プレーオフ決勝で)プレーできなかったことがすごく悔しいので、そういった思いを胸に、より強く、速くなって、来年優勝できるようにチャレンジしたい」
 ニュージーランド出身の26歳は、将来的に日本代表を目指したいという思いも持っている。

得点王のボーデン・バレット ©JRFU

 サントリーの背番号10をつけてファンを魅了したニュージーランド代表のボーデン・バレットは、惜しくも優勝することはできなかったが、リーグ戦7試合で6トライを含む128得点を記録し、得点王となった。また、ベストフィフティーンにも選ばれ、表彰式に出席した。

「サバティカルでニュージーランドから来ると、休暇で来ているという見方をされるかもしれないが、全然そんなことはなくて、日本のトップリーグのレベルというのは、トップ6~8チームはスーパーラグビーのスタンダードがあると思う。プレーオフの準決勝、決勝になってくると、クボタ戦やパナソニック戦で経験したように厳しいチャレンジングな試合になるので、すごくレベルの高い経験ができたと思っている」

 来季はニュージーランドのブルーズでプレーする予定。そして、オールブラックス(ニュージーランド代表)として2023年のワールドカップを大きな目標とする。近年、オールブラックスでは15番(FB)を任されることが多いが、10番(SO)への思いが強い。

「ブルーズでもオールブラックスでも10番でプレーしない期間が長かったので、サントリーで機会を与えてくれてありがたかった。自分としても10番でプレーすることを楽しんだし、ニュージーランドに帰ってからもいまのいいパフォーマンスが継続できるようにしていきたい」

全方位スキルでファンを魅了したボーデン・バレット(撮影:高塩 隆)

 ベストキッカー賞は、ゴールキック成功率87.0%だったキヤノンイーグルスのSO田村優が初受賞している。

 また、トップリーグ2021において最も優秀だと思われるレフリーに贈られる「マニフレックス賞」は久保修平レフリーが初受賞した。

シーズン通して堅いディフェンスを披露したパナソニックの稲垣啓太(Photo: Getty Images)

 ベストフィフティーンは、優勝を遂げたパナソニックから4人が選出され、7季連続7回目の受賞となったPR稲垣啓太は、「たいへん光栄。あまり賞にはこだわらない方だが、自分が取り組んできた結果がこうやってある種ひとつの形として残るということは、自分がやってきたことが正しかったと、そう認識できるひとつのきっかけだと思う。この賞をいただいたことで、さらに自分を律してレベルアップしていきたい」とコメントした。

 稲垣のチームメイトであるFLベン・ガンターは初受賞。オーストラリアの高校を卒業するとき、国内でラグビー選手としてのオファーを得ることができず、軍隊へ入ろうとほぼ決めかけていた青年は、パナソニックからチャンスをもらい、いまに至る。トップリーグ2021でのパフォーマンスが認められ、プレーオフ決勝の翌日は日本代表に選出された。
「今シーズンのメインフォーカスとして、リラックスして試合に臨むこと、それから味方やゲームプランを信じてプレーすることをすごく気をつけながらやった。その結果、パニックになることもなかったし、熱くなってしまうようなこともなく、リラックスしてプレーすることができたのが大きかったと思う。これまでやってきたことを継続して、より良い選手になるように努力し続けたい」

 そして、プレーオフ4試合すべてでトライを挙げ、決勝でも試合序盤にインターセプトからの独走トライを決めてパナソニックに勢いをもたらすなど活躍したCTBディラン・ライリーもベストフィフティーンに選出された。
「(決勝のインターセプトトライは)狙っていたわけではないが、時々、感覚的に鼻が利くというか、“ここだ”というのがある。それが昨日のトライだったと思う。自分でも非常にラッキーだったと思っている。ゲームのなかでのアタッキングプレーに関してはそれなりにいいと思っているが、ディフェンスについてはもっと成長したい」
 オーストラリア出身の24歳であるライリーは2021年度日本代表候補のひとりだが、36か月間継続居住の条件をクリアして日本代表として試合に出られるのは10月以降ということもあり、6月・7月の欧州ツアースコッドには入っていない。
 それでも、今週から始まる別府合宿に参加するようにと言われているそうで、「とても楽しみにしている」と答えた。

ベストフィフティーン初受賞となった三菱重工相模原のマイケル・リトル(撮影:松本かおり)

 準優勝のサントリーからは3人が選ばれ、PR垣永真之介は初受賞。日本代表復帰も決まり、気持ちは充実したままだ。
「サントリーで試合に出るのが難しいので、サントリーの競争で勝つことだけを考えていた。その先に日本代表とベストフィフティーンという結果につながったのは本当にうれしく思う」
 今年は新型コロナウイルスの影響でシーズン前の準備期間が長かったため、青木佑輔コーチと一緒に、とにかくスクラム練習をしていたという垣永。
「そこがウィークポイントだと思ったので、自分の強みになれるように。あと、タックルとジャッカルの練習もして、それも、うまくできたかなと思っている」
 日本代表としては2014年にデビューして以来、9キャップを獲得してきたが、2015年と2019年のワールドカップには出られず悔しい思いをした。だからこそ、2年後の大舞台へ向けても強い思いはある。
「23年、チャンスがあるならば、しっかりつかめるように、プランニングして頑張っていきたい」

 そして、初のトップリーグ4強入りを果たしたクボタスピアーズからも3人が選ばれ、初受賞で日本代表としても活躍が期待されるFLピーター“ラピース”・ラブスカフニは、「受賞できて大変うれしい」と喜んだ。
「チームのおかげ。チームメイトと一緒にたくさん学んでたくさん成長する機会があった。コーチたちの尽力にも非常に感謝している。とてもエキサイティングなシーズンだった。トップリーグ全体を見ても、タレントの多さは今シーズン特に突出していたと思う。豪華な顔ぶれで、それがこの大会自体をすごいものにしたと思うので、そのなかでベストフィフティーンに選ばれたことは本当に光栄に思っている」

 ほかの受賞者は以下のとおり。

ドコモ旋風の立役者となったTJ・ペレナラ。正確なキックも世界クラスだった(Photo: Getty Images)

<ベストフィフティーン>

■PR1: 稲垣啓太(パナソニック ワイルドナイツ/7季連続7回目)
■HO: マルコム・マークス(クボタスピアーズ/初受賞)
■PR3: 垣永真之介(サントリーサンゴリアス/初受賞)
■LO: ブロディ・レタリック(神戸製鋼コベルコスティーラーズ/初受賞)
■LO: ルアン・ボタ(クボタスピアーズ/初受賞)
■FL: ベン・ガンター(パナソニック ワイルドナイツ/初受賞)
■FL: ピーター“ラピース”・ラブスカフニ(クボタスピアーズ/初受賞)
■NO8: クワッガ・スミス(ヤマハ発動機ジュビロ/2季連続2回目)
■SH: TJ・ペレナラ(NTTドコモレッドハリケーンズ/初受賞)
■SO: ボーデン・バレット(サントリーサンゴリアス/初受賞)
■WTB: 福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ/3季連続3回目)
■WTB: テビタ・リー(サントリーサンゴリアス/初受賞)
■CTB: ディラン・ライリー(パナソニック ワイルドナイツ/初受賞)
■CTB: マイケル・リトル(三菱重工相模原ダイナボアーズ/初受賞)
■FB: ウィリー・ルルー(トヨタ自動車ヴェルブリッツ/初受賞)


<特別賞>

【リーグ戦通算100試合出場今季達成選手】(達成順)
平原大敬(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)
トーマス優デーリックデニイ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)
ニリ・ラトゥ(日野レッドドルフィンズ)
瀧澤直(NECグリーンロケッツ)
橋本大輝(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)

【リーグ戦通算最多トライ】
小野澤宏時(サントリーサンゴリアス・キヤノンイーグルスOB) 109トライ

【リーグ戦通算最多得点】
五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ) 1,282得点

【リーグ戦通算最多出場】
山村亮(ヤマハ発動機ジュビロ) 173試合出場

<J SPORTS賞>

NTTドコモレッドハリケーンズ
第3節: NTTドコモレッドハリケーンズ vs リコーブラックラムズ
後半40分 NTTドコモのトライ(TJ・ペレナラ)

※ トップリーグ2021 第7節までの55試合を対象に、J SPORTSが厳選した5つのシーンの中からTwitterで投票を募り、最も印象的なシーンを「J SPORTS賞」として表彰