右肩上がりの明大が連勝発進。日大は敗戦も潜在力を証明
今シーズンのオープニングマッチとなったのは5月2日、Aグループの日大対明大戦だ。昨季対抗戦覇者の明大は世代屈指の俊秀がそろう学生随一の布陣で、前年のレギュラーが数多く残った日大も戦力を高く評価される注目の存在。両校は昨冬の大学選手権準々決勝でも熱戦を演じており(明大が34-7で勝利)、この試合も期待通りの好ゲームとなった。
試合は前半14分の日大HO林琉輝(日大高③)の先制トライを皮切りに一進一退の展開で進み、12-12で前半を折り返し。後半、風上に立った日大が先にトライを追加して先行したが、残り20分の勝負どころで明大が2連続トライを挙げ逆転する。終了間際の日大の猛攻もしのぎ切り、24-19で勝利した。
試合を通して目を引いたのは、日大の気迫あふれるファイトだ。NO8から今季PRに転向したシオネ・ハラシリ(目黒学院④)、LOテビタ・オト(トンガカレッジ③)ら留学生を軸にFW戦で真っ向勝負を挑み、紫紺の塊を何度も押し込んだ。ディフェンスでも懸命のカバーリングでエラーを誘うなど、粘り強さを発揮。勝利には届かなかったものの、潜在力の高さをあらためて証明した。
思い通りの展開ではなかったものの、ここという場面で集中力を見せて勝ち切った明大の地力もさすがだった。要所でスクラムを押し込んで流れを引き寄せ、後半はリザーブメンバーを次々と投入して勢いをつけるなど、層の厚さを披露。7番で先発したFL福田大晟(中部大春日丘①)をはじめ、途中出場のLO木戸大士郎(常翔学園①)、WTB金昂平(大阪朝高①)と、3人のルーキーも今季初戦で紫紺デビューを飾った。
白星スタートとなった明大は、1週後の流経大戦でさっそく進歩した姿を示した。開始直後にハンドリングエラーのこぼれ球をWTBイノケ・ブルア(スバグラマースクール④)に拾われ独走トライを許したものの、自陣から積極的にボールをつないで仕掛け続け、大型CTB児玉樹(秋田工④)の連続トライで23分に逆転。さらに3トライを追加して35-17で前半を折り返すと、後半も選手を入れ替えながら5トライを重ね、68-29で大勝した。失点の多さは課題として残ったが、スピードと運動量で上回って個の強みを生かす今季のスタイルの可能性を感じる内容だった。
完敗を喫した流経大も、29点を挙げて攻撃力の高さを実証した。これが初戦で相手は2戦目という試合勘の差があったのは確かで、さまざまな場面でポジティブな要素も数多く見られた。波に乗った時の爆発力を有するチームだけに、ここからの巻き返しを期待したい。
東海大、日本一へ向け好スタート。早大は期待の新人佐藤が初戦でデビュー
もうひとつのAグループの試合は、5月9日の早大対東海大戦。前半はお互い2本ずつトライを挙げ14-12と早大リードで折り返したが、後半に入ると東海大がFW戦の優位を生かして主導権を握る。4分に防御裏へのキックからCTB丸山凜太朗(東福岡④)が抜け出し逆転すると、自陣ゴール前でのピンチを守り切った後の11分にも丸山のキックに反応したFB酒井亮治(東海大相模④)が右中間に押さえ、リードを拡大。直後に早大FL相良昌彦(早稲田実③)がトライを返し5点差となったが、東海大はコンタクトエリアでしっかりと体を当ててペースをつかみ、そこから3トライを追加して48-26で攻め勝った。
東海大の勝因は、セットプレーやブレイクダウンなどでFWがプレッシャーをかけ、ベースとなる部分で早大の勢いを封じたことだった。FLノア・トビオ(札幌山の手④)ら留学生の推進力に加え、キャプテンのFLジョーンズリチャード剛(伏見工④)を筆頭にディフェンスでハードワークする意識が高く、ゲームが進むにつれて出足で相手を凌駕した。BKはCTB丸山、FB酒井に林隆広(石見智翠館④)、谷口宜顕(東海大仰星②)の両WTBと昨季から試合を経験してきた選手が多く残り、多彩な攻撃を仕掛けられる点が強み。悲願の大学日本一に向け、上々のスタートといえるだろう。
早大は再三敵陣に攻め込みながら仕留めの局面で精度を欠き、大田尾竜彦新監督の初陣を勝利で飾ることはできなかった。不安定だったセットプレーや簡単に突破を許すシーンがあった防御は、立て直しが必須の課題だろう。一方でこの日12番に入ったCTB長田智希主将(東海大仰星④)やSO吉村紘(東福岡③)、FB槇瑛人(國學院久我山③)らタレントがそろうBKは、アタックで多くの見せ場を作った。今季も相手にとって脅威となりそうだ。なお、期待のルーキー佐藤健次(桐蔭学園①)が後半23分からNO8で途中出場し、ハツラツとしたプレーを見せた。
覇権奪回期す帝京大が大東大を圧倒。法大は筑波大を破る
対抗戦、リーグ戦の4〜6位が入るBグループで鮮烈なインパクトを残したのは、昨季大学選手権4強の帝京大だ。5月16日、ホームグラウンドに大東大を迎えての初戦では、強力なスクラムと厳しい組織ディフェンスで大型選手が並ぶ相手を圧倒。9トライを奪って57-7で完勝し、充実ぶりをうかがわせた。
とりわけ際立っていたのはPR細木康太郎主将(桐蔭学園③)が牽引するスクラムで、何度も相手をめくり上げて攻守の起点を制圧。NO8奥井章仁(大阪桐蔭②)が圧巻のボールキャリーでたびたび突破口を開いたほか、SH片岡祐二(京都成章③)、高本幹也(大阪桐蔭③)の3年生HB団もセンスあふれるプレーで大量得点に導いた。また6番で先発した青木恵斗(桐蔭学園①)、交代でSOに入った小村真也(ハミルトンボーイズ高①)の大物ルーキー2人も、それぞれ持ち味を発揮して非凡なポテンシャルを示した。
敗れた大東大も激しく前に出るタックルを連発するなど、リーグ戦6位に沈んだ昨季からの成長を随所に感じさせた。劣勢を強いられたスクラムでもう少し対抗できていれば、スコアはもっと縮まっていただろう。リサラ・キシナ・フィナウ(青森山田①)ら突破力自慢の留学生を擁し、BKにもFB青木拓己(御所実③)ら力のある選手がそろっているだけに、今後が楽しみなチームだ。
Bグループもうひとつの試合では、昨季リーグ戦4位の法大が同対抗戦5位の筑波大に34-12で勝利した。接点で優勢の法大が序盤から相手のミスに乗じてスコアを重ね、20-0でハーフタイムへ。後半もキャプテンのNO8大澤蓮(長崎南山④)が2トライを加え、うれしい白星発進となった。筑波大は後半にFB松永貫汰主将(大産大附④)の個人技などから2トライを返したが、終始ハンドリングエラーが目立った。またこの試合では、法大の金侑悟(大阪朝高①)、筑波大の堀日向太(中部大春日丘①)と、昨冬の花園を沸かせた1年生SOが10番を背負って先発している。
このほかCグループでは、リーグ戦2部1位の東洋大が対抗戦7位の立大に57-14で快勝。リーグ戦7位の関東学院大と対抗戦8位青山学大の一戦は、関東学院が後半30分以降に2トライを奪って26-22で逆転勝利を収めた。なお、4月に複数の部員に新型コロナウイルス陽性者が確認された慶大の辞退により、5月2日に予定されていたAグループの慶大対流経大が中止になったほか、5月16日のBグループ日体大対中大、Cグループ専大対成蹊大も中止に。さらに東海大が学内運動部で陽性者が多数発生したことを受け5月23日まで全部活動が活動停止となったことから、23日に開催予定だった明大との注目の一戦も中止となった。困難な状況で懸命に活動する各チームが、何の不安もなく存分にグラウンドを走り回れる日々が一刻も早く戻ってくることを祈りたい。
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