ラグビーリパブリック

【ラグリパWest】次世代のラグビー選手を作る。 近鉄ライナーズ・アカデミー

2021.05.10

近鉄ライナーズのアカデミーの中心的指導員となる寺田京太、佐藤幹夫さん(左から)。2人はライナーズのコンディショニングとディフェンスのコーチでもある

アカデミーにはライナーズ所属で世界的SHであるウィル・ゲニア(前列右から2人目)も参加した


 近鉄ライナーズは敗れた。
 パナソニックに7−54。4月25日、トップリーグのプレーオフ2回戦である。

 二部のトップチャレンジにいるライナーズと一部の優勝候補との差は大きかった。
 2021年度のシーズンは終わる。

 その負けに関わらず、一方で紺×エンジのジャージーをつなぐ活動は続いている。小中学生のための有料のラグビー教室、正式名称は「HOS×LINERSアカデミー」である。

 私企業のHOS(ホス)は花園ラグビー場の管理を東大阪市から任されている。ライナーズの本拠地は同時にアカデミー会場にもなる。その指導員たちはチーム所属である。

 生徒のひとり、小5の冨田翔(とみた・しょう)のコメントは弾む。
「レベルの高い仲間、基礎からしっかり教えてくれるコーチ、みんなで天然芝の上でラグビーができて楽しいです」
 冨田は2学年下の弟・諒(りょう)とともに参加している。

 このアカデミーはラグビースクールなどで、競技経験のある子供を対象にしている。冨田の「レベルの高い」という表現はそのことを差している。

「初心者はラグビースクールに行って下さい、と言っています。生徒の取り合いをしたくないので、すみわけをしています」
 ライナーズのGMである飯泉景弘は話す。現場の最高責任者の言葉通り、冨田兄弟は地元の花園ラグビースクールに在籍しながら、このアカデミーに通う。

 クラスは3つ。小学校中学年(3、4年)、同高学年(5、6年)、そして中学。定員は各クラス30人をメドにしている。
 開講は週1回。火曜は中学年、水曜は中学、木曜は高学年。週末に開催されるラグビースクールとは、基本的にかぶらない。
 現在、小学校の2クラスは若干、中学はまだ空きがある。

 1回の指導は80分。学校終りの18時15分から19時35分まで。練習はナイターで、ライナーズが普段使っている第2グラウンドなどで行われる。

 指導の中心はライナーズの2人のコーチだ。チームではディフェンス担当の佐藤幹夫とコンディショニング担当の寺田京太である。41歳の佐藤が技術を6歳下の寺田は体作りを主にする。トップ選手を教えているコーチ陣の指導は、このアカデミーの魅力のひとつでもある。

 飯泉はアカデミー創設の理由を話す。
「元々、ミキオが『やってみたい』と言っていました。そこに新リーグの参入要件のひとつとしてアカデミーがあった。ラグビーの街として知られる市のためにも、チーム以外の貢献もしたかったのです」



 佐藤は、息子の競技開始に合わせて、現役選手と兼務の形で、生駒少年ラグビークラブで指導員をする。楕円球の普及・発展のためにも、子供たちへのコーチングは欠かせない、と考える。それに、チームは乗る。開校したのは昨年11月だった。

 佐藤と寺田のサポートにウィル・ゲニアが来たこともある。
「さすがに中学生は彼の顔をわかっていて、緊張していました」
 寺田は表情を崩す。オーストラリア代表キャップ110を誇る世界的なSHのみならず、自身のトレーニング後に、指導を手伝う選手も少なくない。

 この4月から新年度が始まった。開校して半年以上が経った。寺田の笑みは続く。
「楽しいですよ。子供たちは成長がすぐ見えます。練習の最後でスキルが上がります」
 現在、大阪はコロナによる非常事態宣言が出ているため、アカデミーも休講中だ。
「宿題を動画で送っています。ハンドリングとか、減速や止まり方の仕方など、これまでやったことの復習ですね」
 できることをやっている。

 冨田兄のコメントは明るく続く。
「毎月、違った内容の練習をするのも、その日に習った練習を家に帰って、弟と復習するのも楽しいです。これからも、色んなことをコーチから吸収して頑張っていきたいです」

 佐藤は始まったばかりのアカデミーで、その先を見る。
「今の形では、小学校から初めても、中学校で僕らのコーチングは終わってしまいます。将来的には、サッカーのように続けてもらうことはできないか、と考えています」

 サッカーはユースに代表される下部チームを持ち、優秀な選手はそこから引き上げ、トップチームの試合に出場させる。チーム一体となった強化がある。

 企業スポーツのラグビーはプロのサッカーと同じ俎上(そじょう)に乗せられない。しかし、いつの日か、アカデミーの教え子が、ライナーズを引っ張る夢を見る。

「この花園のグラウンドで何かを感じてくれたら。そして、また戻ってきてくれれば、うれしい限りですね」
 佐藤は視線を彼方に向けた。

■申し込み・お問い合わせ
東大阪市花園ラグビー場(電話番号=072−961−3668、受付時間は10時〜17時)
月会費=小学生6600円、中学生7700円、ユニフォーム代4400円(金額はすべて税込み、支払いは入会時)

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