強さの理由を表した。
国内トップリーグで史上最多となる6度目の優勝を目指すサントリーは、プレーオフトーナメント突入後の4月28日、東京は江戸川区陸上競技場でクボタと練習試合を実施。おもに直近の公式戦で出番のなかった選手同士でぶつかり合いながら、42-12と快勝した。
ニュージーランド代表SOのボーデン・バレットら主力組、イングランド代表ヘッドコーチでチームのディレクター・オブ・ラグビーの業務で合流中のエディー・ジョーンズ氏が集まる会場で、クラブの層の厚さを証明した。
「チームの調子自体はすごくいいと思います。チャンピオンになるというひとつの方向性を持って、いいエネルギーを持って進んでいる」
戦前、こう話していたのは村田大志。2月下旬からのリーグ戦(レッドカンファレンス)を7戦全勝で終えていた背景に、約3年も王座から離れるチームの飢餓感を見る。
「シーズン開始当初から、目的はひとつ。このチームでチャンピオンになることです。そこに対して、深く考えることはない。(その時々の)ゲームの組み立ては別として、ひとつの目的に向かって突っ走っている感じです」
この日は13番をつけて先発し、約51分間、芝に立った。さらに試合終了14分前には、味方の故障を受けて戦列復帰。フィールドにいる間は、生来の持ち味を発揮する。
防御を引き付けながらのパスでトライを演出したうえ、鋭い出足のタックルで大外への展開を未然に防ぐ。特に守備時に渋く働いた。
一方で主力組は、NTTコムとのレギュラーシーズン最終節、プレーオフで初戦となったNECとの2回戦と、直近の2試合で続けて31失点を喫した。
序盤の猛攻でそれぞれ94、76得点を挙げて勝利も、就任2季目のミルトン・ヘイグ監督は不満げだった。
「ターンオーバーから相手にボールを与え、攻守の切り替えが遅く…。2試合連続で30点以上も相手に与えてしまったのが満足いかない点です。ディフェンスを改善し、次の試合に臨みたいです」
グラウンド中央に位置するCTBのポジションでは、身体接触への耐性、技巧、運動量と複数の特性が求められる。
村田は身長181センチ、体重88キロのサイズで、その役目を担ってきた。安定した守備と空中戦での強さが買われ、2014年に初めて日本代表入り。レギュラーとしてトップリーグ2連覇を味わった2017年度オフには、当時スーパーラグビーに参戦したサンウルブズへ追加招集された。
さらに今度の練習試合でも、「ディフェンスを改善」というチームの検討課題への解決の糸口を示したようもであった。
もっともサントリーは、部内競争の激しい強豪クラブだ。CTBの位置では現在、ワールドカップ日本大会で8強入りした日本代表の中村亮土が主将として君臨。定位置争いには他に、オーストラリア代表のサム・ケレビ、中村亮土主将とともに2021年の日本代表候補となった梶村祐介、早大卒2年目の代表候補でWTBと兼務の中野将伍が名乗りを挙げる。
今季の村田は「ノンメンバー」に回り、週末の試合の対戦相手を模倣してきた。ここで貫いた信念は、「練習台にならない」。レギュラー組を相手にした実戦練習は、翌週までにレギュラー組へ加わるためのアピールの場。その原則を忘れずにここまで来た。
「皆、試合に出るためにやっている。ライバルとしてやり合っていることが、結果としてそういう部分(レギュラー組の緊張感など)につながっている。(主力組の)練習相手になることにフォーカスしちゃうと、どうしても練習(全体)のクオリティが落ちる。まずはメンバーに入るためにやることが練習のクオリティを高めることにつながるし、結果としてそれがチームのためになる。もちろんそこにはノンメンバーの仕事(対戦チームの模倣)はありますが、それをやる心持ちは『自分の成長のため』じゃないと。前提を間違えないようにしよう、とは(周りに)話しています」
流大。2019年のワールドカップ日本大会で日本代表となった28歳は、サントリーのSHとして8戦中7戦に出場してきた今季ここまでの戦いについて、「村田大志さん」の名前を出して述べた。
「今季出場のない村田大志さんは毎回の練習で(その週の試合に登録されない)ノンメンバー側のスタンダードを引き上げてくれています。ベテラン選手ですがフルトレーニングをして、激しいプレーをし続けてくれる。僕らはかなりのプレッシャーを受けて練習しています」
小学1年で長崎中央ラグビースクールに入った村田は、長与ヤングラガーズ、長崎北陽台高、早大を経て2011年から社員選手として過ごす。
「(サントリーは)勝ちを宿命づけられている。だからこそ強くあり続けられている。これからもチームは成長していってくれるはずだと思っている。変わらず、いいチームであり続けて欲しいです」
5月29日には33歳となる。選手として残された時間について全く考えないわけではないようだが、まずは「(与えられた時間を)無駄にはしない」。常勝が義務付けられるビッククラブの一員として、責務を全うしたい。
「グラウンドに立つ以上は全ての時間を100パーセント(の力)でやろうとは思っています。個人的にも、チーム的にも、1日でも長く皆とラグビーできれば…」
組織は人間の物語の集合体。負けたら終わりのプレーオフトーナメント戦に挑んでいるサントリーは以後、最大で2つの公式戦へ挑める。