リーグ戦ではNTTドコモ→神戸製鋼→キヤノンと悔しい惜敗を重ねてきたリコーが、負けたら終わりのプレーオフで勝ち切った。
プレーオフトーナメントは2回戦を迎えた。リコー(ホワイト4位)は4月24日にパロマ瑞穂ラグビー場で東芝(レッド5位)と対戦。27―24で3点差をものにした。
「どちらが勝ってもおかしくない、厳しい試合でした」とリコー・神鳥裕之監督。「我々はこれまで接戦を落としてきたので、最終的にスコアで上回れたのはチームとしての成長です」と選手たちを称えた。
先制トライは東芝がスムーズな流れで取った。前半3分、FW・BKともに体を当てながら前に進み、フェイズを重ねてゴール前まで迫る。最後はWTBジョネ・ナイカブラが仕留めた。
だが前半を優位に進めたのはリコーだった。直後にPGで迫ると(3―5)、ブレイクダウンとセットプレーを制圧。ブレイクダウンではターンオーバーを重ね、スクラムでは相手のペナルティを誘い続けた。14分にはモールで押し切り逆転(10―5)。24分にもゴール前スクラムでプレッシャーをかけて、脇を突いたSH高橋敏也のトライにつなげた。
20―5で前半を折り返したリコーは、後半立ち上がりも敵陣で攻める。アンストラクチャーの状態でSOアイザック・ルーカスがラインブレイクし、ボールを託された交代出場のメイン平が左隅に置いたように見えた。
だがTMOの結果、猛追していたWTBナイカブラの好タックルで、直前にタッチラインに出ていた。「リコーのBKはカウンターアタックに優れているので、内側からハードに対応しようと思っていた。最後コーナーに出せたのは幸運でした」とナイカブラ。
ここから風向きが徐々に変わり始める。
東芝をさらにポジティブにさせたのは、控えのメンバーだ。8分に加入3年目のPR藤野佑磨が登場。ピッチに入るや否やスタンド上段まで届く声でチームを鼓舞した。
「チームにエナジーを与えられるようなプレーをずっと心がけていました」(藤野)。
ゲームキャプテンを務めたFLリーチ マイケルも「藤野はチームにかなりいい影響を与えてくれた。それは試合だけではなくて、練習でもチームにパッションを与えてくれる存在」と7つ下の後輩を称える。
東芝は得意のラインアウトを起点に、21分はモール、24分にはWTBナイカブラがトライを奪って、17―20と3点差まで詰めた。
逆転の機運が高まる中でターニングポイントになったのが、試合終盤35分ごろのスクラムだった。ゴール前まで迫った東芝だったが、5㍍スクラムでコラプシングの判定を受けた。「PRの一番仕事で自分がペナルティをしてしまって、東芝の流れを切ってしまった」とPR藤野は悔やむ。
直後にリコーのFL松橋周平共同主将が値千金のジャッカルを決めて、まもなくSH山本昌太の勝負を決めるトライが決まった(27―17)。
勝因となったスクラムについて神鳥監督は、「(フロントローの)若いメンバーが日々成長するスピードが加速している。3人は常にオープンマインドで、その姿勢がいまのパフォーマンスにつながっている」と語る。
この日先発のフロントローは左から西和磨、武井日向、笹川大五。西は3年目で、武井・笹川は1年目のルーキーだった(ともに明大卒)。「(若い)自分たちが引っ張っていこう、くらいの気持ちで取り組んでいる」と武井。
さらに神鳥監督が強調するのは、「日頃からスクラムで相手になっているベテランFWの選手たち」が若手3人の活躍に一躍買っていることだった。「彼らの力は欠かせない。チーム全体で作り上げている感じがします」。
武井もそれに頷く。
「先輩たちがいろんなスキルを教えてくれる。わからないことがあれば自分たちも聞きにいくし、それに答えてくれるいい関係がある。それはフロントローだけではなく、全てのポジションにある」
チーム一丸となって掴んだ接戦の勝利だった。
リコーは5月9日(日)に大分・昭和電工ドームでサントリーと対戦する。
一方敗れた東芝はシーズンが終了。リーチが最後にファンに感謝を述べる。
「思うような結果ではなかったけど、毎試合毎試合応援してくれたファンに感謝しています。自分たちも結果がついて来なくても、自分たちを曲げずに戦うことができた。選手たちをすごく誇りに思います。東芝には若くてポテンシャルの高い選手がたくさんいる。この経験を生かして、来シーズンまでに倍以上にレベルアップしていきたい」