ふたたび巡ってきたチャンスに結果を残したい。
4月25日、秩父宮ラグビー場でトップリーグ2021プレーオフトーナメントの2回戦がおこなわれる。トヨタ自動車ヴェルブリッツと戦う日野レッドドルフィンズの10番を東郷太朗丸(たろま)が背負う。
今季はリーグ戦で2試合に出場した。第5節のNTTドコモ戦には途中出場。リーグ戦最終戦(第7節)のリコー戦では先発した。
流経大から加入4シーズン目。公式戦で10番を背負うのは初めてだった。
本来のポジションでピッチに立つ。待ちに待った日は4月10日、駒沢陸上競技場だった。
結果は19-41。完敗だった。
前半は0-24。自身は後半からクリップス ヘイデンと交代した。
ホワイトカンファレンスの中で少しでも順位を上げたい。
そのためチームは勝利だけでなく、相手よりトライを3つ以上多く取って、ボースポイントを獲得しようと目論んだ。
しかし、「(得点を重ねたくて)攻め急いでしまった」。
ボールを手にして敵陣に入ってもスコアに至らず、相手にボールを渡す結末に終わる。そんな40分を過ごした。
チームは、後半だけなら19-17と相手を上回った。「スコアを見ればクリップスと自分の違いと言われても仕方ない」と話す。
この日のBKラインには、WTBの竹澤正祥以外、外国出身選手が並んでいた。普段の練習から外国出身選手たちとコミュニケーションをとっているが、この日は全員の意志を束ね切れなかった。
「10番をやっている人がゲームドライバー。もっと自分がイニシアチブをとってプレーすべきでした」
そう反省する。
プレーオフトーナメントの1回戦ではメンバー外となった。
しかし、今週末のトヨタ戦に向けての準備の中で思い切りのいい仕掛けをすると、周囲も好反応。いい結末を生むこともあった。
トヨタ戦でも、自分らしいパフォーマンスを出してチームを動かしたい。
東京都中野区出身。ワセダクラブ、北中野中でラグビーの基礎を作った東郷は、左足からのキックを得意とする練習の虫だ。
茨城の常総学院でプレーを続け、流経大で活躍した。
先のリコー戦は、流経大での学生最終戦(全国大学選手権3回戦/慶大と31-31の引き分けも、抽選で慶大が次戦へ)以来、公式戦で初めて10番を背負った試合だった。
応援してくれている人がスタンドに何人もいた。
東郷がその日の試合で履いていたスパイクは、職場の人たちからプレゼントされたものだ。
会社の架装・特装部で働く。昨シーズン、同じ部署の仲間たちがカンパして購入し、「頑張って」と渡してくれた。
練習のために仕事を早めにあがり、グラウンドへ向かう毎日。東郷のそんな生活を、周囲の人たちは応援していた。
「本当にありがたいですよね。みなさんのサポートがあってこそ、自分はラグビーをできている。なんとかプレーで恩返ししたいと思ってきました。でも、『何か身につけるものを』といただいたのが昨季で、リーグ戦が途中で中止となったので、なかなか機会がなかった。やっと10番のジャージー姿を見せられて本当に良かった」
試合に出れば、「見たよ」、「良かったよ」と声をかけてくれていた職場の人たちに、「いただいたスパイクでプレーしているところを、また見せることができたら」と言っていた。
そのチャンスは、思っていたより早く巡ってきた。
強敵が相手も、今度こそ最初から積極的にタクトを振り、チームを動かす。