地中海に面した町で極東の缶ビールが愛された。
「知名度が高いうえ、人間性が素晴らしかった! 彼にはビール会社のスポンサーがついていたため、私もワンカートン、ビールをいただきました!」
現在、日本のNTTコムでプレーする元オーストラリア代表のリアム・ギルは、今季限りで引退する元日本代表の五郎丸歩と親交を深めたことがある。五郎丸が2016年以降に在籍したオーストラリアのレッズ、フランスのトゥーロンでチームメイトだったのだ。
さかのぼって2015年、ワールドカップ・イングランド大会では、それまで大会通算1勝だった日本代表が歴史的3勝をマーク。同代表の副将だった五郎丸は母国で時の人となり、複数のコマーシャルに出演していた。まもなく海を渡った本人と一緒に楕円球を追い続けたのが、7歳年下で現在28歳のギルだった。朗らかに回想する。
「彼は素晴らしい人間でした。キックが素晴らしく、(最後尾の)FBにあって強い。ディフェンスもよかったです。レッズ入りが決まったタイミングからエキサイトしていましたし、トゥーロン入りのタイミングも同じだった。現地はやや孤立した町だったので、お互いに仲良く過ごすことが増えました」
トゥーロンを去った後はフランスのリヨンを経て、今季から日本のトップリーグに挑んでいる。レギュラーシーズンでは7試合中6試合に先発し、持ち味を発揮する。
3月26日、東京は秩父宮ラグビー場での第5節。チームは序盤、対する東芝の攻撃を前に反則を犯し、対する東芝へ自陣22メートルエリア右でラインアウトを与える。モールを組まれる。
もっとも最後は地上の攻防へ持ち込み、接点の球にギルが絡む。得意のジャッカルでペナルティキックを得て、ピンチを脱する。点差の開きだした前半終了間際にも自陣でジャッカル。後半26分までプレーし、45-19で白星をつかんだ。
振り返れば2016年5月21日、ブリスベンはサンコープスタジアムで国際リーグのスーパーラグビー第13節があり、同リーグに日本から挑んでいたサンウルブズがレッズとぶつかった。国内では五郎丸と他の日本勢との対戦が注目されるなか、レッズの7番をつけたギルは両軍最多の3度のターンオーバー(攻守逆転)を決める。35-25で勝った。
身長185センチ、体重103キロ。FWの第3列で強烈なタックルと機を見てのジャッカルを長所とする。技術を支えるタフネスぶりは、職場を日本に移しても変わらない。
「いつもディフェンスをしたいわけではないですが、チームのシステム上いい位置取りをして、いいタックルを決めていきたいと考えています。それによって相手からボールを奪えて、攻撃の機会が増えますから」
話をしたのは3月。チームが黒星を先行させるなか、「プレシーズン期に苦しい状態から調子を上げる経験をしている」と前を向いていた。
「前よりも向上しようというテーマでやっているので、うまくいっていない部分を理解し、そこを直すだけです。自分のNTTコム入りの決断にはすごく満足しています。速い試合展開でポジティブにトライを狙う(日本の)ラグビーのスタイルを楽しんでいます。これが、すごく自分に合っていると思う。(今季の目標は)チームの競争力を高めることです。例えばこのチームがトップリーグの決勝へ行けるよう、手助けをしたいです」
4月中旬までのレギュラーシーズンでは、五郎丸のいるヤマハとの対戦はなかった。振り分けられたカンファレンスが異なったためだ。フランスで友情を深めた日本人とオーストラリア人が今度フィールドで相まみえるとしたら、2人の所属する両軍が4月下旬以降参戦のプレーオフトーナメントで「決勝」へ進んだ時だ。
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