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NZで挑戦中の姫野、マン・オブ・ザ・マッチの活躍にも「おちおちしていられない」

2021.04.16

ブルーズ戦でも気合が入っていたハイランダーズの姫野和樹(Photo: Getty Images)


 序盤のジャッカルはピンチだったチームを救うビッグプレー。ハーフタイム前にも決めた2本目のターンオーバーはチームの逆転トライにつながった。そして、自らも前半にハイランダーズでの初トライを挙げるなど活躍し勝利に貢献した姫野和樹は、『ハイランダー・オブ・ザ・マッチ』に選ばれた。

「とりあえず、勝ててホッとしているという状況です」

 姫野は試合後のオンライン取材で、開口一番にそう言った。
 ニュージーランドで開催中のスーパーラグビー アオテアロアはレギュラーシーズン終盤の8節に入り、2勝4敗で4位だったハイランダーズは、4月16日のブルーズ戦に敗れればプレーオフファイナル進出の可能性は消滅するところだった。

 そんななかでの大活躍。ハイランダーズにとってはホームでの今季初勝利となった。35-29で競り勝ったハイランダーズは暫定3位に浮上し、2位ブルーズとの勝点差は1ポイントに縮まった。

「ブルーズに勝つことは絶対条件だったので、勝ててホッとしています」

 絶対に負けられない大事な試合に、背番号8をつけ3試合連続の先発出場となった姫野。トライを決めたのは前半15分だった。チームは敵陣深くでペナルティキックを得、主将のSHアーロン・スミスがクイックタップから仕掛けてゴールに迫った。これについていった姫野は、リサイクルからボールをもらって突っ込み、仲間の後押しを受けてインゴールにねじ込んだ。

「みんな意思統一がとれていて、ああいう形で自分が最後にフィニッシュした。チームメイトのサポートに感謝しながら、今日はおいしいビールでも飲もうかなと(笑)。日本語も通じないなか、単身こっちに来て、チームでうまくやっていけるか不安もあったなかで、みんなといいラグビーができて、すごく幸せな気分です」

 2つのジャッカルも、ゲームの流れを変えたビッグプレーだった。それについてはこう答えた。

「僕がいちばん大事にしているのは、タイミングとイメージ。相手がどういうふうにタックルされて、どういうふうに倒れてくるかというのを予測しながら、いち早くそのタイミングに入るというのはすごく重要かなと思っています。そのタイミングに入れば、あとは、しっかり耐える。ただただ耐える(笑)」

 確かに、姫野はマン・オブ・ザ・マッチにふさわしい活躍だった。
 でも、今日の自分のパフォーマンスには満足していないという。もうひとつの強みであるボールキャリーについては、6キャリー、12メートルゲインと、物足りない数字に終わった。

「なかなかボールキャリーで自分の持ち味を出せず、不完全燃焼のような感じになってしまった。もうちょっといいところでボールを持ってキャリーできるようにしたいです」

 そして、50分(後半10分)で交代させられたのも悔しさとなっている。3月26日のデビューから4試合連続で出場し、そのうちの3試合はスターターだが、またもフル出場できなかった。

「もう少しプレーしたかった、というのはあります。自分の感覚的に、試合勘というのもだいぶ取り戻してきて、すごくいい感じのフィーリングではあったんで、もう少し、80分通してプレーしたかったというのはあります。ただ、ブラウニー(トニー・ブラウン ヘッドコーチ)がフレッシュな選手をどんどん入れていくという方針であれば、それは本当に間違いないと思う。ブルーズのFWは強いので、どんどん使っていくという意図もあるし。ただ、個人的にはもうちょっとやりたかったです」

 姫野のポジションであるFW3列(バックロー)はチーム内競争が激しい。ニュージーランド代表で、姫野が目標とするシャノン・フリゼルは6番をつけて5試合連続のフル出場。姫野と同じ26歳であるフランカーのビリー・ハーモンは72分まで奮闘した。この日ベンチスタートだったマリノ・ミカエレトゥウは期待の若手で、スコッドに追加招集されたヒュー・ネントンなどハングリーな選手がたくさんいる。

「(彼らは)練習中からケンカするくらいアピールする。『俺が出るんだ!』というハングリー精神は練習からすごいあるので、いい相乗効果になっていると思います。一人ひとりのレベルがかなり高いので、自分も焦るし、まずチーム内の競争に勝たなきゃいけないというプレッシャーはあります。そういったなかで毎日練習するのは、自分にとってすごくいい刺激になるし、成長につながると思います」

 4月12日には2021年度の日本代表候補52人が発表された。バックローには、2019年のワールドカップを姫野と一緒に戦ったメンバーや、代表復帰を狙う者、ニューフェイスもいる。

「トップリーグの試合も毎週見ていますが、すごくレベルが高くて、自分と同じポジションの選手もすごくいい選手が多いので、おちおちしていられないと、メンバーを見て率直に思います」

 そういう姫野は、2023年のワールドカップへ向けて自分がもっと成長するために、いまニュージーランドで挑戦している。

「自分が強くなることで日本代表の力にもなると思うので、まず、しっかり自分にフォーカスしてやりたいと思います」

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