どうりで強いわけだ。
今季の国内トップリーグではレッドカンファレンスを7戦全勝、4月24日から出場するプレーオフトーナメントで史上最多6度目の優勝を目指すサントリーは、日々、プレッシャーをかけ合う。レギュラー入りを狙う控え組が、主力組へひたすら圧をかける。
東京都は府中市内の多摩川沿い、南武線の高架下近くでおこなわれる練習は、社会情勢の変化を受け非公開が続く。
ただ……。
「本当に(控え組の防御が)抜けない。めちゃめちゃ強いです。逆に(レギュラー組が)やられたりする。逆にそういう日が続いている週の試合のほうが、調子はよかったりします。皆、(試合に)出たいので、皆、アピールする。そこでのやり合いは日々、あります」
知られざる日常を明かすのは堀越康介。入部3季目にして副将となり、主将の中村亮土から「若手のけん引」を任される。最前列のHOとしてスクラムのリーダーも担ううえ、何より、自らも激しい競争の只中にある。
「まずは、自分のパフォーマンスにフォーカスを当てて日々、過ごしています。自分のパフォーマンスがよくなければ説得力がなく、本当の意味で周りを引っ張っていくこともできないと思っているので。そのうえで、自分はFWなので、前5人(のポジションの選手)をフィールドで奮い立たせるとか、エナジーアップできるような声かけを意識してやっています」
全勝対決だったトヨタ自動車との第5節まで3試合連続で先発しながら、クボタとの第6節はベンチスタートだった。
それは4月3日、東京は秩父宮ラグビー場でのクボタ戦だった。先発HOだった中村駿太が効果的なジャッカルを連発するなか、後半12分に登場の堀越は「あまり自分のプレーには納得いっていないです。今季は」。持ち前の低重心の突進を披露したうえで、自らに高いハードルを課す。
「スタッツ(統計)を見たら悪くはないんですけど、試合をバーッと観た時、どこかで、もっとインパクトのあるプレーをしたい。相手をディフェンスでなぎ倒したり、キャリアでドミネートしたり。(今季は)そういうチームを勢いづかせるプレーをそこまでできていないので、もっとできるかなと」
身長175センチ、体重100キロ。帝京大の主将として大学選手権9連覇を達成する前から、日本代表デビューを果たしていた。
2019年も長きにわたり代表活動へ参加も、ワールドカップ日本大会の登録メンバーからは最終選考で外れた。8月の網走合宿を経て、HOにパナソニックの堀江翔太と坂手淳史、堀越と同じサントリーの北出卓也が入るのを見届けた。
捲土重来を期した2020年は、故障で出遅れる。堀越がトップリーグの舞台に復帰できたのは、シーズン不成立を迎える直前の第6節からだった。続く第7節では、先発予定だった。
結局、その折に水面下で編まれた約50名の日本代表候補には加われなかった。
「そりゃそうだろうな、とは思いました」
堀越は述懐する。
「トップリーグで1試合しか出ていなくて、しかもそれは後半の20分くらい(後半22分から出場)。それで入れるほどジェイミー(・ジョセフ ヘッドコーチ)から信頼されている選手でもないと思っています」
雌伏期間は1か月ほど「ダラダラした」という勤勉な戦士はいま、中村や北出と競い合いながら今年中の代表復帰を目指す。「信頼」されているからでもあろう。4月12日に発表された2021年の日本代表候補へは中村とともに名を連ね、2023年のワールドカップ・フランス大会を見据える。
「えー…楽しいです。楽しいというか、いい環境でラグビーができていると思います。日々の練習にも危機感がありますし、アピールしなきゃいけないと常日頃から考えている。楽しい環境でやらせていただいているなと思います。たぶん、駿太さんも、僕や北出さんがいるからああいういいプレーができている。逆に、僕も北出さんや駿太さんがいるからいいプレーができている。もちろん代表は狙っていますし、2023年にも出たい気持ちは強いです。ただ、それには――どの選手も言っていると思いますが――チーム内での競争に勝って、チーム内で与えられたチャンスを自分のものにして、いいパフォーマンスをしていくのが大事。3人が高いレベルで競争できていることをポジティブに考えて、この環境で試合に出ることに意味があると意識しています」
プロ選手として思うことは、「圧倒的な力というか、圧倒的なパフォーマンスを見せれば(激しい競争下にあっても立場は)違う」。ライバルが誰であっても最初に名前を呼ばれる、絶対的な選手になりたい。
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