最後のトップリーグもあっという間に、リーグ戦の佳境に入った。
トップリーグ2021はパナソニック、神戸製鋼、サントリーがここまで負けなしで圧巻の強さを誇る。サントリーに食らいついたトヨタ自動車とクボタがそれに続く形だ。
最終節、そしてプレーオフでは、その構図をかき乱す存在でありたい。
ヤマハ発動機ジュビロは、3勝3敗で4位にいる。第2節では昨季完封勝ちしたリコーに敗れ、4節はホームでのキヤノン戦、続く神戸製鋼戦も落とした。
悲願のトップリーグ制覇を目指すヤマハにとって、この結果は当然納得のいくものではない。連敗を喫して万事休すかと思われたが、4月3日に行われた第6節で息を吹き返す。今季好調のNTTドコモを33―21で倒した。
復調のきっかけは第5節で神戸製鋼に大敗した翌日にあった。灘浜グラウンドで神戸製鋼とBチーム同士の強化試合が行われた。
CTBで出場した白井吾士矛(あとむ)は「Bチームとはいえチャンピオンの神戸に挑むことになるので、いい姿勢で臨みました」。相手にはニュージーランド代表キャップ50を誇るSOアーロン・クルーデンもいた。
その試合でヤマハは神戸製鋼に26―24で勝った。
前日にトップリーグではヤマハスタイルをやり切れずに敗れた中、Bチームのメンバーはそれを遂行した。「80分間しっかりヤマハスタイルを体現したことで、神戸に勝つことができた」と白井は話す。
堀川隆延監督も「チームとして非常に良い流れだった」と振り返る。強化試合でパフォーマンスが良かった選手をそのまま翌週のドコモ戦で起用した。強化試合に出場して先発を飾ったメンバーには、LOマリー・ダグラスやFB五郎丸歩がいた。そこにトップリーグ初出場となる白井の名前もあった。
加入3年目での待望デビューだった。同期入団のCTB鹿尾貫太やWTB矢富洋則が先に活躍していたこともあって、「長かったですね」とようやくの出番に奮い立つ。「緊張はしたけどファーストコンタクトで緊張が解けました」。持ち味のボールキャリーでゲインを切るなど、求められる仕事を果たした。
「両CTBが日本人でもやれると言うのを、白井と石塚(弘章)が見せてくれた」と堀川監督は称えた。174㌢、102㌔の体躯は、同じボールキャリーを得意とする外国人CTBと比べるとサイズはいかんせん小さい。それでも「身長の低さは逆に良い部分もある」と白井は言う。
「小さいことで相手からしたらタックルに入りづらかったり、タックルポイントを絞りにくかったりする。そこをうまく生かせれば、外国人選手とは違った角度からボールキャリーの強みを出せる」
チームの副将でもあるCTBヴィリアミ・タヒトゥアの定位置を奪うことは簡単ではなかったが、貪欲さは失わなかった。
ドコモ戦では「ヤマハのスタイルを遂行することがどういう結果になるかを選手たちがゲームの中で感じてくれた」と堀川監督は話す。それは強化試合で先にBチームが示したからこそ、得られた収穫だった。
大戸裕矢主将も「今週は試合より厳しい状態をBチームの選手が作ってくれた。どのチームよりもBチームが強いと思う。僕たちもそのプレッシャーに勝たないといけなかった。チームとしては最高の準備ができました」と語る。
白井だけではなく、ノンメンバー全員にその貪欲さが備わっていた。
「自分たちはAに上がりたい気持ちが強くあって、普段の練習からAチームに対してチャレンジングなラグビー、ハングリーな姿勢で挑み続けられていた」
ヤマハが復調の兆しを見せた裏には、チームに勢いを与えたノンメンバーの突き上げがあった。
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