日本ラグビー界屈指のトライゲッターである山田章仁が、アメリカの地で新しい挑戦をすることが決まった。北米プロリーグのメジャーリーグラグビー(MLR)で2018、2019年と連覇を遂げた強豪のシアトル・シーウルヴズに入団することが日本時間4月6日に公式発表された。
シーウルヴズによれば、山田が現在所属しているNTTコミュニケーションズから派遣という形となる。NTTコミュニケーションズも派遣について合意したことを認め、「今回の山田選手のMLR挑戦は、新リーグを控えた日本ラグビー界並びにアメリカラグビー界の双方にとって、大きな発展につながる機会になると確信しております」とコメントしている。
山田も自身の公式ブログで報告し、「多くの方々のご理解あってのものであり、感謝しかありません」とコメント。MLR挑戦は以前から噂されていたが、正式合意に向け、両チームと慎重に歩調を合わせていたとのこと。また、ビザ申請に時間がかかり、新型コロナウイルス等の問題もあり、このたびの発表になったという。山田によれば、渡米の日程は未定で、「ビザがおり次第ということでパスポートは枕元に置いております」と述べている。
昨年は新型コロナウイルスの影響で不成立となったMLRだが、4季目となる今年は3月20日に開幕し、アメリカの11チームとカナダの1チームが参加して熱戦を繰り広げている。ボストンを拠点とするニューイングランド・フリージャックスには、山田と同じ35歳で、日本代表として一緒に戦ったプロップの畠山健介が昨季から所属しており、2015年のワールドカップで世界を驚かせたブレイブブロッサムズがMLRで新たな夢を追う。
2019年には、NECグリーンロケッツのプロップ瀧澤直がオースティン・エリート(現 オースティン・ギルグロニス)でプレーしており、山田は日本人選手として3人目のMLRプレーヤーとなる。
快速ウィングの山田は、慶應義塾大生時にオーストラリアへラグビー留学し、海外のクラブに自らを売り込むなど、かねてより海外志向が強かったといわれている。大学卒業後はホンダヒート、パナソニック ワイルドナイツ(旧:三洋電機ワイルドナイツ)でプロ選手として活躍し、29歳だった2015年には、オーストラリアのパースを拠点とするスーパーラグビーチームのフォースに加入。2019年には、シャイニングアークスとパートナーシップを締結したフランスのリヨンに期間限定で加わり、新しいカルチャーを学んだ。国際リーグのスーパーラグビーでは、フォースを経験したあと、日本チームのサンウルブズで活躍し、2016年には7人制ラグビーでオリンピックに挑戦するためシーズン途中で離脱したものの、それまでに9トライを挙げ、南半球の一流選手たちとともにトライ王を争った。
ジャパンラグビートップリーグでは、リーグ戦通算93トライを記録。最多トライゲッター賞には2度輝き、2012-13シーズンには20トライを挙げてシーズン最多トライの新記録を樹立するなど、日本最高峰のフィニッシャーである。
日本代表としては25試合に出場し、2015年ワールドカップ・サモア戦の“忍者トライ”を含め19トライを決めている。
MLRは近年、世界的スターたちも参戦するリーグとして注目が高まっており、今年は、元ニュージーランド代表のLOアイザック・ロス(オースティン・ギルグロニス)、SHアンドリュー・エリス(ラグビーユナイテッド・ニューヨーク)、元オーストラリア代表のCTB/SOマット・ギタウ(LAギルティニス)、CTBアダム・アシュリークーパー(LAギルティニス)、元イングランド代表主将のFLクリス・ロブショウ(サンディエゴ・リージョン)、元アルゼンチン代表のFBホアキン・トゥクレット(トロント・アローズ)、カナダ代表としてワールドカップ4大会に出場した万能BKのDTH・ファンデルメルヴァ(LAギルティニス)、元ワールドラグビー年間最優秀セブンズ選手のセシル・アフリカ(サンディエゴ・リージョン)などもMLRでプレーする。
山田が2019年から所属するNTTコミュニケーションズシャイニングアークスでは、2つの「V」、VICTORY(勝利)とVALUE(価値)を掲げている。勝利を目指すことと同時に、チームのさまざまな価値を高めていこうというもの。これは山田自身も大切にしていることであり、「今回の挑戦と価値が、近い将来にしっかりと結びつくようなものにできるよう、個人的には大きな責任を感じています。それと同時に、このMLR挑戦そのものが今後のシャイニングアークス、シーウルヴズ双方にとって素晴らしい機会になるのではないかと確信もしています」とブログで述べている。
今回の挑戦を応援し、支えてくれたすべての人々に感謝しているという山田。そして、次のように決意表明した。
「皆さんの期待にお応えできるよう、スポーツ大国アメリカで日本にない新しい2Vの形を見出し、吸収してきたいと思います。そしてみなさんへ、新しい山田章仁を披露できるよう今後も精進していきたいと思いますし、自分自身、新しい自分に逢えるのを楽しみにしています」