198センチ、112キロのビッグマン。コロナ禍の影響もあり、ほったらかしにしていたら、いつの間にかワイルドになった。
そんな風貌の男の笑顔がはじけた。
3月28日、パロマ瑞穂ラグビー場(名古屋)。宗像サニックスブルースがHonda HEATに25-24で勝った。
背番号4の寺田桂太が笑顔でガッツポーズを見せたのは、後半3分、モールを押してNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコがトライを取った時だった。
3-10とリードされていたチームは、このトライをきっかけに逆転勝ちを収める。
寺田はガッツポーズの瞬間を振り返り、「(本来)ああいう反応をするタイプではないんですけどね」と照れた。
ブルースは、この試合で今季初めて勝った。寺田にとって新天地で手にした初勝利だった。
近鉄ライナーズから移籍してきた。昨年の初夏から宗像に暮らす。大阪を離れたのは、プロ選手として勝負したかったからだ。
「ラグビーに割く時間をもっと多くしたかった」
今季は開幕戦こそピッチに立てなかったが、2試合目から5試合目まで先発。4月3日のNTTコム戦(高知)でも背番号4をつける。
近鉄時代は社員選手だった。
大和西大寺駅が職場。朝のラッシュ時にはホームに立ち、乗客が電車の扉に挟まれそうになった時には押し込むこともあった。
「社員として働いた経験も貴重でした」と話す。
それも向上心の一部だろう。プロ志望の原点と言っていい。
いま、周囲にいるジェームス・ムーア(日本代表)やパディー・ライアン(元豪州代表)、マーク・アボット(元ハリケーンズ、サンウルブズ)ら、個性と経験が豊かな選手たちからもらう刺激が心地いい。
「ブッティーさん(福坪龍一郎共同主将)ら、日本人選手も含め、それぞれが、それぞれの強みを持っているチーム。みんなでレビューをしながらシーズンを過ごしています。学ぶことが多いですね」
日々成長し、試合で持っているものをすべて出す。そんなサイクルを繰り返す。
京都・伏見工業高校に入学後、ラグビーを始めた。帝京大学を経て社会人となった。
プロとしての生活を始めてみて思うのは、結局、やるかやらないかを決めるのは自分次第ということだ。
宗像に来て、希望通りにラグビーに取り組む時間は増えた。自分の時間も。結果、試合に向けて自身のペースで集中していく調整法を確立しつつある。それが、出場機会を多くつかむ基盤になっている。
しっかりと目的意識を持ち、自律しなければ、そうはいかなかったかもしれない。寺田は、自由を履き違えなかったから充実したシーズンを過ごせている。
セットプレーとディフェンスで貢献したい。
シーズン前にそう口にした思いを体現し続ける。
タックルのし方を変えた。ほぼ同サイズのアボットを参考にした。
「以前は、日本で(効果的と)よく言われる、低いタックルをしていたんです。でもいまは、高い、低いより、インパクトの強さを考えています」
大柄な自分が、よりチームへの貢献度の高い、相手を圧倒するタックルをするにはどうすべきか考えた。
「相手のお腹あたりに入る。そうすると、自分のパワーをもっとも効果的に伝えられる姿勢でタックルに入れる」
一つひとつの発見が自分を高める。これからも成長を続けていきたい。
SO田代宙士が「FWが頑張ってくれた」と評したHonda戦の勝利を思い返し、「BKのお陰です。FWが活躍できるようにエリアをとってくれたから」と話す。
仲間たちのことを「みんな、このチームが好き」と表現した。
「好きだから、勝ちたいと思っている。その気持ちを全員で練習から出して、細かいところまでディテールを追求し、もっともっとコミュニケーションをとっていけば、結果も残ると思います」
先発を重ねていても、決して「充実している」とは言わない。
「シーズンが終わって、すべてを振り返ったときにそう思えるようにしたいと思います」
いまは、瞬間瞬間の笑顔を積み重ねることに集中する。