ラグビーリパブリック

ついに登場。現役ワラビーズ、ネッド・ハニガン[栗田工業]が釜石戦先発

2021.04.02

日本食も大好き。「さしみ、焼肉、うどん。からあげ、みそスープも」。(撮影/松本かおり)



 ついに、この男が暴れる。
 金髪をかき乱して戦うダイナミックさが持ち味。オーストラリア代表キャップ25を持つネッド・ハニガンが4月3日におこなわれる釜石シーウェイブス戦(広島総合ラグビー場)に栗田工業ウォーターガッシュのNO8として先発する。
 同チームでのデビュー戦だ。

 195センチ、112キロ。立派な体躯ながらよく走るバックローは、2019年こそケガの影響でワールドカップ出場を逃したものの、 2017年以来テストマッチで活躍してきた。
 昨年10月もオールブラックスやアルゼンチンと戦い、活躍した実力者だ。
 スーパーラグビーでも2016年以来、ワラターズで活躍。50試合以上に出場した。

 今季、栗田工業に加わった。プレシーズンマッチでも活躍し、チームに勢いを与える存在と期待された。
 特に1月30日におこなわれた開幕前最後の試合、日野レッドドルフィンズ戦は、トップリーグチームを追い詰める内容。そこで先頭に立って戦った。
 しかし同日、タックルを受けた際にケガ(左外旋筋肉離れ、臼蓋剥離骨折)を負う。治療とリハビリを経て、今季ラストゲームで出場に漕ぎ着けた。

◆2017年、テストマッチ後にリーチ マイケルとジャージーを交換するハニガン

 荒馬のように走り、ラインアウトジャンパーとしても優秀な25歳は、オーストラリアのニューサウスウエールズ州の内陸部、ダッボーの出身。実家は牧場で、牛や馬を放牧している。
 ハニガン自身も乗馬は得意。現在もオフには実家を手伝うことがあるという。

 田舎育ちの少年が都会に出たのは高校時代からだ。シドニーにあるセントジョセフカレッジ・ハンターヒルズに進学した。
 少年時代はトウタイ・ケフ(元オーストラリア代表NO8/トンガ代表監督)、カーロス・スペンサー(元NZ代表SO)に憧れていた。

 幼い頃から国代表、ワラビーズを夢見て過ごした少年が、その夢を叶えたのは22歳の時。フィジー戦で6番のジャージーを着た。
 それから何度も国を代表して戦った。悔しい思いをしたこともあれば、オールブラックスに勝ったことも。しかし、そんな中でもっとも印象深い試合を「昨年のオールブラックス戦(2020年10月18日)」と話す。

 7-27と敗れた試合をよく覚えているのは、特別な瞬間だったからだ。
「前年は脳震とうでプレーできる時間が短く、ワールドカップのメンバーからも外れました。そんな状況からハードワークを重ねて、ふたたびテストマッチの舞台に戻れた。苦しい間に支えてくれた人たちへの感謝を強く感じた試合だったので忘れられません」
 今週末の試合は、1月のケガ以来、悶々とした時間を過ごして迎える一戦。好漢の胸の高鳴りは容易に想像できる。

 母国以外でのプレーは、代表選出には決してプラスとはならないが、「デイブ・レニー監督はとても優秀な人」と前置きして、こう話す。
「栗田でハードにプレーできていれば、きちんと評価してくれる。彼はオーストラリアでいちばん優れた選手たちを選ぶ人だから」
 テンポのはやい日本ラグビーの中で、フィットネス、フィジカリティをさらに高め、進化を続けたいと上を見る。

「ラグビーをプレーするのが大好きで、試合へ臨む気持ちは、テストマッチでも日本の試合でも変わらない」と熱い男は、オールブラックスにも勝ったことがある経験を振り返り、こう話した。
「強敵に勝つには、入念に準備をして、すべての力を出し切る。それが条件。それ以外にない」
 日本でのデビュー戦が今季ラストゲーム。チームがベストパフォーマンスを発揮するための発火役になる。

2017年11月4日の日本×オーストラリア(横浜)後、リーチ マイケルと
ジャージーを交換するネッド・ハニガン。(撮影/松本かおり)