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東福岡高校・八尋主将、選抜王者となるまでに磨いた「意思統一」の方法。

2021.03.31

右から2人目が八尋祥吾。主将として東福岡をまとめる(撮影:長尾亜紀)


 ぶつかり合いを制した。タックラーに捕まっても簡単には倒れなかった。

 3月31日、埼玉・熊谷ラグビー場。各校の1、2年生たちによる全国高校選抜大会の決勝で、東福岡高が大会3連覇中だった桐蔭学園高を46-31で下し、2016年度以来の優勝を決めた。全国タイトル奪取は2017年度の7人制大会以来となる。

「自分たちの部内試合でどんどん身体を当ててきたので、(決勝でも)相手にひるむことなく身体を当てるラグビーができた」

 こう語るのは八尋祥吾。主将として6番をつけて先発した。昨冬の公式記録で「169センチ、89キロ」と小柄も、常に地上戦へ顔を出す。

 前半2分には大きな展開とラック連取の延長線上で先制トライを挙げ、幸先の良いスタートを切った。八尋らFW陣はこの午後、優勢を保った。スクラムを押し、前半24分にはモールでインゴールを割った。ハーフタイムまでに31-7と大差をつけた。

 SOの楢本幹志朗とインサイドCTBの平翔太が目の前の防御をひきつけて大外へパスができるとあり、その手前へ入るFW陣が当たり勝ったためよりトライチャンスを増やせた。

 守っても要所で圧をかけた。鍛えたフィジカリティを活かした。

 特に、相手の大外からの折り返しの攻撃へは果敢に仕掛けた。リーダーは迷わない。

「折り返しは(左右のうち)片方しか(パスを投げる)選択肢がない、どんどん前に出て(攻守逆転などを)狙っていこう」

 つかまれたあとの踏ん張り、機を見てのカウンターラックはどのポジションの選手も貫いていた。

 新チーム始動にあたり、従前から取り組んできた身体作りをブラッシュアップ。今年1月までの全国大会(花園)ではFWが踏ん張り4強入りしたとあり、「FWが強いチームが勝つと再確認できた」と八尋。日々、高い壁を乗り越えんとする。

「ウェイトトレーニングには去年以上に取り組んでいます。以前はメニューが組まれて、それをこなす感じ。今年は重量を意識してやります」

 次年度の3年生にあたる2年生は、2019年9月、各強豪校の1年生同士がぶつかるアンダーアーマールーキーズカップを制覇。さらにその多くのメンバーは、中学時代に福岡県代表となって第24回全国ジュニア・ラグビー大会で頂点に立っている。

 勝ち続けた実績は、個々の能力と主体性に裏打ちされているのだろう。まもなく就任10年目を迎える藤田雄一郎監督は、いまの最上級生の特徴をこう説く。

「(始動からまもない)この時期にしては積極的です。ミーティングもよくするし、言っていることが的確。こちらへもリクエストが多いです。ラインアウトの分析をしてください、映像を見せてください、休ませてください、FW合宿をしましょう…と、こちらがやろうとしていたことを向こうから言ってくる。…こっちは、大変ですけどね」
 
 自信のみなぎる2019年度入学組にあって、船頭を任されるのが八尋なのである。東福岡の主将は、卒業する3年生の推薦をもとに藤田監督が決める。八尋の就任は「満場一致」だったようで、指揮官は「考えてものを言う。いい主将です」と太鼓判を押す。

 本人は、選手層の厚いクラブで先頭に立つにあたり「試合中どうコントロールするかで勝敗が決まる。そこの責任は大変、大きいと思います」。自らの立場を「認識を合わせるシンボルみたいな形で主将をしている」と俯瞰し、「皆に意思統一をさせるのが僕の仕事です」と言い切る。

「これだけの選手がいるから、意思疎通ができて一人ひとりが思い描くプレーができたら問題ない。(具体策は)復唱と言って、監督の言葉を繰り返すこと。また前回の試合(準決勝)では、片方のプレーヤーが言ったつもりになっていても、もう片方が受け取れていなかった…ということも課題になりました。『それでは伝わっていないのと同じだから、言う側はちゃんと言って、聞いた側はその内容がわかったと示すことも意識しよう』。…この大会中、そういう決めごとを作りました」

 てっぺんに立つまでに、才能を結果に昇華する術を学んだのだ。自らは26日、松山聖陵との2回戦で足を打撲。ファイナルへは「この2日間でケア、アイシングと自分なりにできることで修繕して、こちらに挑ませてもらいました」。聡明さとタフネスぶりを長所に、冬の決勝までフィールドに立ちたい。

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