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東福岡46-17東海大仰星。強みのコンタクト、後半に全開。因縁の「インジャリー18分・同点試合」対決を制す−選抜準決勝レビュー−

2021.03.31

「中」のコンタクトを攻略した後の「外」の展開。東福岡が後半に圧倒した(撮影:長尾亜紀)

 3月29日、熊谷ラグビー場で全国高校選抜大会の準決勝が行われた。第1試合では東福岡が46-17で東海大仰星を破って決勝進出を決めた。決勝は3月31日11時に開始される。

「花園でも4大会、決勝にいっていませんので。ようやく、ここに辿り着きました」とは準決勝後の藤田雄一郎監督。前監督時代から練習を指揮し、体を当てあう練習を激しく、精度高く行うことで、東福岡の強さの基盤を作り上げてきた。このチームの華やかなランやハンドリングは、その前と後のぶつかり合いのたくましさに支えられている。

 現時点の総合力では一歩上をいく東海大仰星に対して、東福岡はその強みを押し出して、後半に逆転、後半6トライで大きく差を広げた。

「もう今日は、体当てていけと伝えてありました」(藤田監督)

 前半は東福岡12-14東海大仰星と拮抗。両チームとも中盤からランで仕掛け合う見応えのあるシーンが続き、連続アタックで構成力を発揮した東海大仰星がG差でのリードを奪った。前半23分の仰星のトライは、カウンターから。ステップで相手防御を切り裂いたWTB御池蓮二のキレが際立った。中盤で杭を打つような強さを見せるCTB中俊一朗のパワーも目を引いた。

「シンプルにいこう」。

ハーフタイム、東福岡の指導陣からは異口同音のアドバイスが飛んでいた。

 後半、東海大仰星の戦い方を見た東福岡は、原点にかえった。自らの土俵に相手を引きずり込むために、「わかっていても防げない」圧力を、相手に押し付けた。効果的なBKの仕掛けからフィールドの真ん中でクラッシュを起こす。ここで相手を大きく押し下げて、さらに向こう側にあるスペースでパス&ランのスキルを生かした。

 仰星側は、横にスライドするような「流す」ディフェンスと、激しいコンタクトを両立させて前半を凌いだが、後半は、フィールド中央で圧力を受け、その横の流れを分断されてしまった。さらに遠くへボールを運ぶ東福岡は、タッチライン際に外から走り込むような角度とスピードで突破、こうしたシーンが相次いだ。

 1分、9分、13分…とトライを重ねた東福岡が、後半だけで34得点を挙げて突き放した。

 東海大仰星とは、前回花園(冬の全国高校大会)の準々決勝でも対戦するなど、過去何度も死闘を繰り広げてきたライバル関係にある。前回花園は同点のままゲームが切れず、後半なんと18分間におよぶインジャリータイムを戦い、互いへの尊敬を深めている仲だ。その花園では同点抽選となり、東福岡は準決勝出場を譲っている。

「あの試合では、接点でやられていた印象。花園の後はトレーニングで体重を増やしました」(東福岡FL大西一平)

 自らのオリジナリティと、「同点試合」への思い。この日、東福岡のコンタクトが特に強烈だったのには、そんな背景もある。

「きょうは、久しぶりの決勝に向けた関門でした。なんとしてもそこまでは連れて行ってやりたかった。去年の対戦のこともある。力が入った試合でした」(藤田監督)

 選抜では第17回大会に優勝して以来、5大会ぶりの決勝の舞台だ(この間に開催された3大会ではいずれも決勝に進むことができていない)。数年続いた準決勝の壁を抜けた東福岡は、精神的にも充実した状態でファイナルの舞台へ上がる。