1月に前チームが全国の頂点に立ってから、まだ2か月ちょっと。それなのに、コンタクトレベルの高さをあらためて示した。
9か月後、完成形はどれくらいのものになるのだろう。
花園で連覇を果たし、開催中の全国選抜大会で4連覇を目指す桐蔭学園(神奈川)が、その偉業まであと2勝とした。
3月28日に熊谷ラグビー場でおこなわれた準々決勝で天理(奈良)と対戦し、勝利を手にした(24-12)。
立ち上がりに持ち味を発揮したのは天理だった。
よく鍛え込まれた選手たちが、ボールを下げず、チーム全体で前へ出る。最初からバチバチ体を当て、相手陣地に攻め入った。
キックオフから桐蔭陣内に居座ること5分超。ラインアウトから攻撃を重ね、最後はトライラインまで数センチのところまでボールを運んだが、惜しくもノックオンというシーンもあった。
桐蔭の先制点は、その直後だった。
自陣ゴール前のスクラムからSH小山田裕悟②が左へ走る。そして、高速の15番へつなぐ。FB矢崎由高①が相手防御を切り裂いて走り、最後はWTB森田翔大②にラストパス。鮮やかなトライを奪ってみせた。
◆大活躍の桐蔭学園FB矢崎由高①や天理のチャレンジ
効果的なランを見せた矢崎は、その後も光を放ち続けた。
前半10分。天理の反則から得たラインアウトでなんとかボールを獲得した後のアタックでは、ラストパスをもらう。巧みなステップでインゴールにボールを運んだ(10-0)。
天理にモールからトライを返された(17分)後の前半28分には、仲間を走らせた。スクラムからの攻撃にライン参加し、防御裏にショートパント。WTB森田のトライを呼んだ。
桐蔭が17-7とリードしてハーフタイムを迎えたこの試合。後半は互いに1トライずつを取り合う展開で勝負はついた(桐蔭の後半15分のトライもFB矢崎の好走からWTB松田怜大①とつないだもの)。
天理の戦いぶりも印象的だった。スクラムにボールを入れる選手は背番号9に限らず、10番、11番、8番のことも。状況によって攻撃陣形を自在に変化させるなど、最後の最後まで工夫と強さを見せた。しかし、王者の巧みさ、逃げない姿勢に、攻略することはできなかった。
勝者にとっては、決して満足できる内容ではなかった。
特に課題となったのはラインアウトだ。7回の機会(マイボールラインアウト)に確保できたのは2回だけ(クリーンキャッチなし)。ゲームキャプテンを務めたLO小椋健介②は「前の試合でもうまくいかなかったので、相手に合わせるのではなく、先に並び、自分たちのペースでやりたかった。でも、それができませんでした。試合中に修正もできなかったし、前にも出られず、FWは負けていました」と話した。
藤原秀之監督もFWの出来には苦言を呈したが、体を張り続けた防御は評価した。
大会前の実戦不足は不安だったが、大会に入って試合ごとにチーム力を高められている。日頃の練習密度の濃さがあってのことだろう。この日のパフォーマンスについて、「相手の攻撃については事前に頭に入れておきました。よく対応できていたと思います」とした。
ボールを持つ時間は天理の方が長かったはずだ。それだけ多くタックルしながら、桐蔭は効率よく攻めた。
奪った4トライはすべてセットプレーから(うち3つがスクラム)。3トライは1次攻撃で取り切るなど、狙うスペースとプレー精度の確かさが際立った。
冷静にゲームを作ったSO大賀雅仁①は、「(事前の分析で)外にスペースがあるのは分かっていました。そこにボールをどう持っていくかを考えてプレーしました」と話した。
勝っても負けたと悔やむリーダー。
体を張り続けた全員と、勝因を淡々と話す司令塔。
このチームが勝利を手にし続ける理由が、あちこちにあった。