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桐蔭学園 24-12 天理。ハードに守り、賢く得点。王者、凄みを見せる−選抜準々決勝−

2021.03.29

中央が先制トライを決めた桐蔭学園WTB森田翔大。(撮影/長尾亜紀)



 1月に前チームが全国の頂点に立ってから、まだ2か月ちょっと。それなのに、コンタクトレベルの高さをあらためて示した。
 9か月後、完成形はどれくらいのものになるのだろう。

 花園で連覇を果たし、開催中の全国選抜大会で4連覇を目指す桐蔭学園(神奈川)が、その偉業まであと2勝とした。
 3月28日に熊谷ラグビー場でおこなわれた準々決勝で天理(奈良)と対戦し、勝利を手にした(24-12)。

 立ち上がりに持ち味を発揮したのは天理だった。
 よく鍛え込まれた選手たちが、ボールを下げず、チーム全体で前へ出る。最初からバチバチ体を当て、相手陣地に攻め入った。
 キックオフから桐蔭陣内に居座ること5分超。ラインアウトから攻撃を重ね、最後はトライラインまで数センチのところまでボールを運んだが、惜しくもノックオンというシーンもあった。

 桐蔭の先制点は、その直後だった。
 自陣ゴール前のスクラムからSH小山田裕悟②が左へ走る。そして、高速の15番へつなぐ。FB矢崎由高①が相手防御を切り裂いて走り、最後はWTB森田翔大②にラストパス。鮮やかなトライを奪ってみせた。

◆大活躍の桐蔭学園FB矢崎由高①や天理のチャレンジ

 効果的なランを見せた矢崎は、その後も光を放ち続けた。
 前半10分。天理の反則から得たラインアウトでなんとかボールを獲得した後のアタックでは、ラストパスをもらう。巧みなステップでインゴールにボールを運んだ(10-0)。
 天理にモールからトライを返された(17分)後の前半28分には、仲間を走らせた。スクラムからの攻撃にライン参加し、防御裏にショートパント。WTB森田のトライを呼んだ。

 桐蔭が17-7とリードしてハーフタイムを迎えたこの試合。後半は互いに1トライずつを取り合う展開で勝負はついた(桐蔭の後半15分のトライもFB矢崎の好走からWTB松田怜大①とつないだもの)。
 天理の戦いぶりも印象的だった。スクラムにボールを入れる選手は背番号9に限らず、10番、11番、8番のことも。状況によって攻撃陣形を自在に変化させるなど、最後の最後まで工夫と強さを見せた。しかし、王者の巧みさ、逃げない姿勢に、攻略することはできなかった。

 勝者にとっては、決して満足できる内容ではなかった。
 特に課題となったのはラインアウトだ。7回の機会(マイボールラインアウト)に確保できたのは2回だけ(クリーンキャッチなし)。ゲームキャプテンを務めたLO小椋健介②は「前の試合でもうまくいかなかったので、相手に合わせるのではなく、先に並び、自分たちのペースでやりたかった。でも、それができませんでした。試合中に修正もできなかったし、前にも出られず、FWは負けていました」と話した。

 藤原秀之監督もFWの出来には苦言を呈したが、体を張り続けた防御は評価した。
 大会前の実戦不足は不安だったが、大会に入って試合ごとにチーム力を高められている。日頃の練習密度の濃さがあってのことだろう。この日のパフォーマンスについて、「相手の攻撃については事前に頭に入れておきました。よく対応できていたと思います」とした。

 ボールを持つ時間は天理の方が長かったはずだ。それだけ多くタックルしながら、桐蔭は効率よく攻めた。
 奪った4トライはすべてセットプレーから(うち3つがスクラム)。3トライは1次攻撃で取り切るなど、狙うスペースとプレー精度の確かさが際立った。
 冷静にゲームを作ったSO大賀雅仁①は、「(事前の分析で)外にスペースがあるのは分かっていました。そこにボールをどう持っていくかを考えてプレーしました」と話した。

 勝っても負けたと悔やむリーダー。
 体を張り続けた全員と、勝因を淡々と話す司令塔。
 このチームが勝利を手にし続ける理由が、あちこちにあった。



大活躍の桐蔭学園FB矢崎由高。チャンスを作り、自らも決めた。(撮影/長尾亜紀)
天理は攻守とも前に出続けた。(撮影/長尾亜紀)
最後までハードに戦い抜いた天理。(撮影/長尾亜紀)
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