各ブロックの代表など全国から強豪32チームが集う全国高校選抜大会が、3月25日に1回戦を迎える。昨年はパンデミックの影響で中止となったこの大会へ向け、各チームの鼻息は荒い。感染対策に万全を期し、トーナメント方式の短縮日程で開催される。
「自分たちの立ち位置を確かめ、年間の大枠のプランを立てる基準になる」とは、前回花園(全国高校大会)の優勝校、桐蔭学園の藤原秀之監督だ。
新シーズンの戦力地図が浮かび上がる高校シーンの重要なトーナメントとして定着した春の全国選抜大会。主な出場校を、すでに発表されている対戦カードと合わせ紹介しよう。
興味深いチームは多いが、トップ争いを見据えるならば注目は近畿3校に九州の雄・東福岡、前回花園王者の桐蔭学園だ。
近畿からは5校が出場。編集部注目は常翔学園(近畿大会優勝)、大阪桐蔭(同2位)、東海大仰星(同3位:天理と同順位)の3チームだ。
常翔学園は2月の近畿大会決勝で34-17で大阪桐蔭を下した。フィジカルでは全国トップレベルの両校のこの対戦で、セットプレー、特にスクラムでは常翔学園が圧倒した。瞬発力に長けた選手が揃い、スピードと強さでは随一の存在だ。チームは3年目の司令塔・仲間航太が一皮むけた統率を期待される。
近畿大会決勝で常翔学園に敗れた大阪桐蔭は、昨年は花園出場ならず。現2年生は下級生時から出場経験を積む面々だ。サイズ、フィジカルは常翔と変わらない充実ぶりで、1月のサニックス予選会では決勝で天理を破り優勝している。選抜ではポテンシャルの高さを存分に示すだろう。
東海大仰星は感染拡大防止の観点から、近畿大会準決勝と天理との順位決定戦を辞退した。貴重な試合機会を失いはしたが、実力は掛け値なし。今年も体格、スピード、戦術理解に長けたチームで、3年前には東海大仰星中として全国優勝(連覇)したメンバーも多い。有力な優勝候補だ。
近畿勢を打ち破ろうと牙を研ぐのは東福岡、そして前年花園優勝の桐蔭学園だ。東福岡は全九州新人大会2回戦で鹿児島実業に124-5と大勝。練習試合でも近畿勢を突き放すケースがあり、2016年度以来の花園優勝を視野に入れる。SO楢本幹志郎は昨年から司令塔を務める。
ここでいったん組み合わせを見渡しておく。
32校は4校ずつ8つのトーナメントに分かれ、ベスト8決定後に抽選で再度、組み合わせを決める。常翔学園は2回戦で茗溪学園と当たる山に入り、大阪桐蔭は明和県央、長崎北陽台、仙台育英と難敵揃いのドローとなった。東海大仰星は開志国際、朝明、日川と同居する。
桐蔭学園は1回戦で高鍋と対戦、勝てば、京都成章と札幌山の手の勝者と戦う。京都成章と当たれば、前回花園決勝の再戦だ。桐蔭学園は神奈川県大会、関東大会が中止となり、ぶっつけ本番で全国へ踏み出すことになった。藤原監督は、高鍋のしつこいタックルや、京都成章の全国決勝の経験値を高く評価していて、「うちは、本当に危ないと思う」と危機感を強めている。
「昨年のように、現段階で軸となる選手がいるわけではないから。試合を重ねながら力をつけていきたいところなので、ここからですね」(藤原監督)
昨年の各校は、ほぼ全国的に春、夏の試合経験を失った(感染拡大状況のため)。一方で、体づくり、動きづくりなど、例年のスケジュールではできなかった取り組みを積極的に生かしたチームが上位に入った。こうした経験を、今年、どんなふうに循環させるのか。当たり前だったこれまでのルーティーンを見直し、強化を捉え直したアプローチが見られるのか。各校それぞれの文化や哲学が試される。2021年シーズンの高校ラグビーにはそんな見どころもある。
スタートラインに並んだ、各地の強豪たち。号砲は3.25。
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