名手を苦しめる。
クボタのルアン・ボタは3月6日、東京・江戸川区陸上競技場で国内ラグビートップリーグの第3節に先発する。対するNTTコムのグレイグ・レイドローのボックスキックを、接点の後ろからはたき落とす。南アフリカ出身の29歳は、自身より6つ年上の元スコットランド代表主将へ圧をかけ続けたのだ。
特に後半開始早々のチャージは、チームのトライにもつなげた。最後は34-24と、開幕3連勝を遂げた。
どうやら、レイドローとは千葉県内の同じ建造物に住んでいるようだ。
身長205センチ、体重120キロと堂々たる体躯。朗らかな口ぶり。
「チャージダウンは自分の得意なプレーです。レイドローさんとは一緒の場所に住んでいますが、ラグビーは仕事だから(圧力をかけるのは)仕方のないことです」
2018年に初来日した。就任5季目のフラン・ルディケ ヘッドコーチは、ボタの母国でブルズを率いて2009、10年のスーパーラグビーを制覇。ずっと南アフリカで選手生活を過ごしてきたボタは、首脳陣に「ドミネート(圧倒)を」と期待されるという。チームの得点源たるラインアウト、モールの芯となり、守ってはチャージに加え、相手をつかみ上げるチョークタックルでも魅する。
「もともと日本のラグビーについてはまったくわからなかったですが、南アフリカ人のコーチがいるのが大きかった。クボタはすごくいい環境です」
いずれは日本国籍も欲しい。日本代表になれたらなお嬉しい。
外国出身者が日本代表資格を得るには、原則的に他国代表歴、それに準ずるキャリアを持たないまま、この国にある程度のスパンで住み続けなくてはならない。求められる連続居住の期間は2022年1月以降、3年から5年に延びる。
ボタは2017年には南アフリカ代表のツアーへ参加も、キャップ(代表戦出場の証)はゼロ。母国代表のツアーに招かれながらキャップを得ずに日本代表となったのは、クボタの同僚でやはり南アフリカ出身のピーター“ラピース”・ラブスカフニだ。
ただし2019年には「もっと成長したかった。他の国で経験が欲しかった」からと、イングランドのロンドン・アイリッシュに在籍。トップリーグ2季目となった昨シーズン中断後も、第2子のライアン君の誕生を見届けるべく帰国している。居住期間の領域で壁はありそうだが、本人は笑顔で現状を受け止める。
「最近は、パスポートを取りたいと思っています。子どものためには代表でもプレーしたい。(資格取得に関する)詳細はわからないですが」
3月14日には千葉・ゼットエーオリプリスタジアムで第4節へ挑む。部内競争を経て、ホンダの前にそびえ立つ。