寒い夜だった。
それなのに、子どもたちの笑顔がたくさんあった。
3月2日、東京・町田市のキヤノンスポーツパークで『イーグルスラグビーアカデミー』の無料体験会が開かれた。
18時から始まった小学生の部(新5、6年生)と19時30分スタートの中学生の部(新1〜3年生)に合わせて約70人が集まった。
開校は4月6日を予定している。指導内容や雰囲気を一度味わってみてよ。そんな会だった。
小学生たちを前に、イーグルスの永友洋司GM、湯澤奨平普及・育成担当が同じ言葉を発した。
「みんな、きょうは来てくれてありがとう」
校長の位置に就く湯澤普及・育成担当はアカデミー開校の目的について、こう話す。
「(2022年1月発足予定の)新リーグは、(U15の)育成期間を有することも各チームに求めています。それがアカデミー創設のきっかけではありますが、日本のラグビーの発展を支えたい。平日にラグビーをする場を求めている子どもたちや、競技人口が少ない中学世代のためにやれることはないか、と考えました」
アカデミーのコーチングの中心となるのは、日本代表として活躍した小野澤宏時さん(WTB/キャップ81)と菊谷崇さん(元主将/NO8/キャップ68)。ともにイーグルスのOBで、現在は『Bring Up Athletic Society』(以下、BU)での活動に熱心だ。
ラグビーを通して子どもたちの人間形成に力を注ぐ。それを中心に、いろんなカテゴリーで指導にあたっている。
湯澤校長は、ふたりの指導を事前に何度か見学し、感銘を受けた。
「それが、今回お願いしたいちばんの理由です」
ふたりがチームのOBで良かったと笑う。
菊谷コーチが、「BUでやっていることはラグビーのテクニックを教えるのではなく人間形成です。子どもたちが主体性を持って動く指導をしています。それを、ここでも続けたい」と話す。
小野澤コーチが「それを認めていただいたので、一緒にやらせていただきたいと思いました」と続けた。
「例えばコーチの環境設定したもの(練習メニュー)をどうやって突破するのか、みんなで考える。いろんな役割の人が必要になる。そういうことをスポーツ、ラグビーを通して学んでほしい。それを使い、社会の中で楽しく生きていける子どもたちを送り出していきたい」
両コーチは、「ありがたい機会をイーグルスに与えてもらえたのは光栄なこと」と声を揃える。
湯澤校長は以前、ふたりのコーチング現場で、「子どもたちがグラウンドでよく話している光景」を見た。それが、イーグルスアカデミーでも再現されることを楽しみにしている。
そして、いずれチームのOBたちもコーチ陣に加わり、その思想を引き継いでいけたらと考える。
そうなればアカデミーは充実する。継続していける。少しずつイーグルスのカラーも生まれてくるだろう。
この日、子どもたちは笑顔で走り回った。アカデミーが目指すものが、はやくも感じられた。
4月の開校の日が楽しみだ。