秩父宮ラグビー場は、どこか温かい空気に包まれていた。
会場にいる全員が、今季で現役引退を表明している五郎丸歩を見守った。
トップリーグ第3節、ヤマハ発動機ジュビロとNECグリーンロケッツの対戦が3月6日、秩父宮ラグビー場でおこなわれた。前半はNECの追撃もあり7点差で折り返したが、ヤマハは後半に5トライを挙げて引き離し、59―31と大勝した。
前半は両チーム合わせてトライが7本生まれるなど、スコアがよく動いた。
先制トライは開始1分だった。NECがラインアウトから大外にふり、FB五郎丸と35歳の同級生対決となったFB吉廣広征が抜け出し、最後はWTB宮島裕之がフィニッシュ。鮮やかに先制した。
だが、ヤマハも直後に返す。WTBマロ・ツイタマのキックチャージが決まり、そのままボールを拾ってトライ。すぐさま同点に追いついた。
さらにその5分後に訪れた自陣でのピンチには、相手ボールスクラムで思い切り押してコラプシングを奪った。これで勢いに乗ったヤマハは19分から33分までに3トライ。33分は、ファンブルしたボールを五郎丸が拾い上げ、そのままインゴール左隅まで駆けたものだった。
26―7と引き離したが、NECはここから食らいついた。37分、先制トライと同じような形でFB吉廣が抜け出し、WTB宮島が左隅にトライ。終了間際にも、SH中嶋大希がブラインドサイドを抜け出して、パスを受けたPR瀧澤直がインゴールへ。19―26。7点差まで追い上げてハーフタイムに入った。
このまま追いつきたいNECだったが、その機会を自分たちの手で手放す。またも相手のキックチャージを浴びて、後半開始早々に失トライ。その後もヤマハの絶好調WTB、ツイタマに再三ラインブレイクを許して、53分までに19―45。勝機を失った。
33分に宮島がハットトリックとなるトライを決め、37分にもドライビングモールで追加トライを奪うなど前半同様、終盤に奮闘したが遅かった。
浅野良太ヘッドコーチは「前半最初のラインアウトからのトライなど、準備してきたことが通用していたことは選手たちにとっても自信になった。
ただ、ゲームを構築していく上で、 2度キックチャージでトライを取られるなど、自分たちが崩してしまったことはもったいなかった」と悔んだ。
一方のヤマハは終わってみれば、9トライの大勝。前節リコーに敗れたヤマハはこの試合を「自分たちのプライドを取り戻すゲーム」と位置づけて臨んだ。
堀川隆崇GM兼監督は「勝ち点5を取って勝利できたことは満足してるけど、内容としてはまだまだ成長が必要な部分が多くあった。特に前半と後半の最後に取られた4トライ。ここはわれわれが今年強みとしてきた時間帯で、失点を重ねてしまったことはしっかり修正したい」と振り返った。
また、この試合のマン・オブ・ザ・マッチには今季初先発の五郎丸が選ばれた。
堀川監督は五郎丸について、「(前節課題となっていた)前半最初の20分、ゲームをコントロールすることが重要になるゲームだった。そこでの彼のリーダーシップ、パフォーマンスは非常に良かった」と評価。今後についても「期待して良いでしょう」と笑顔で会見を後にした。
ヤマハは次節、今季唯一のホーム戦(@ヤマハスタジアム)に挑む。3月14日、対戦相手はキヤノンだ。
一方、3連敗で是が非でも勝利を掴みたいNECは、3月13日にこちらもホームの柏の葉で日野と対戦する。
NECの中嶋共同主将は「試合の結果はがっかりだけど、次につながるプレーも多く見られた。下を向いている暇はないので、ホームでファンの皆さまにしっかり喜んでもらえるように、しっかり準備したい」と話した。