「兄弟対決ですし、自動車メーカーダービーでより一層力が入る。頑張ります!」
開口一番、そう意気込んだ秋山陽路は、弟のことになると楽しそうに喋り出す。Honda HEATに加入して6年目。先月29歳になった。
弟はHondaのライバル会社・トヨタ自動車で、陽路と同じLOのポジションで活躍する秋山大地だ。
「弟は真面目で黙々とやるタイプ。僕はどちらかというと『わーわー』やりたいタイプで、兄弟でもタイプは違うかもしれません(笑)」
3月6日におこなわれるトップリーグ第3節。Hondaはトヨタ自動車とパロマ瑞穂ラグビー場で対戦する。4日にはメンバーが発表され、陽路はリザーブに入り、大地は背番号4で先発出場することが決まった。
5つ離れた兄弟は同じカテゴリーに属することがなく、直接対決がなかなか実現しなかった。初めて体をぶつけ合ったのは、大地がトヨタ自動車に加入した1年目の昨季。シーズン途中で中止となったトップリーグ2020の第4節だった。
そのときは今回と逆の立場。陽路が先発で、大地がリザーブ。大地は後半開始と同時にグラウンドへ。陽路が後半16分に交代するまでの短い間、初の兄弟対決が実現した。
「(2人ともグラウンドにいたのは)10分くらいでした。タックルを一度だけ受けたと思うんですけど、そのときは必死過ぎて、弟がいつ入ってきたかもあんまり覚えてなかった(笑)。
なので今回は、シェイプなどチーム内の役割はありますけど、もし前に立っていたら狙ってったろうかなと考えてます(笑)」
6日は2度目の対戦となるが、前回の対戦を兄弟同士で話したことはない。仲は良いのかと問われると、「小さい時はよく泣かしてたんで、向こうがどう思ってるのかわからないです」と笑う。それでも、「SNSで『頑張るぞ!』みたいな投稿すると、『負けないように頑張るわ』と(レスポンスが)返ってきます」とほんわかエピソードを明かしてくれた。
さて、連敗スタートとなっているHonda。ダニー・リーHCは課題のひとつとして後半の失速を挙げる。
「80分間、パフォーマンスをし続けることができていない。大事になるのは『task to task (仕事を終えたら次の仕事へ行く)』。その集中力を、サントリー戦では選手たちに求めました。やり続けてはくれましたが、最後の瞬間まで達成できなかった。これからも課題として考えていく」
ダニーHCは続けて、個々が役割を80分間まっとうすることができれば、昨季29―58で大敗したトヨタ自動車にも勝機はあると強調する。
「自分の仕事を理解してやり続けることで、相手にプレッシャーをかけたいところでかけられる。(トヨタ自動車は)強豪とはいえ人間ですので、プレッシャーをかけ続ければ必ず疲弊してミスは生まれる。そこで出てきたミスを僕らが突きたい」
陽路は開幕から3試合、新人の中川真生哉に先発の座を譲る形になっているが、リザーブメンバーとして後半の課題に対する自分の役割を分かっている。
「途中から入って元気なので、一番はチームに勢いを与えること。声を出して、しっかり体を当てて、さらに勢いを強くしたい。
始めは新人選手がスタートで出ることに悔しさはあったんですけど、チームで勝っていかないといけないので。サインやムーブなど同じポジションとしてしっかり(中川と)コミュニケーションは取れています」
新人であってもリスペクトの気持ちを忘れない。それは中川と同い年の弟・大地へも同様だ。
「弟の試合はよく見ますし、純粋なリスペクトがあります。それでも、弟に負けたくない。弟にやっぱ兄ちゃん強かったなって思われたいというのもあるので(笑)。戦う姿勢を見せていけたらなとは思います」
兄として、やっぱり弟には負けられない。