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連敗も「準備はできつつある」。生え抜き、三友良平(キヤノン)の証言

2021.03.04

3戦目のパナソニック戦はメンバー外も、チームを支え続ける。(撮影/松本かおり)



 結果を出せていないのだから、チームの状態がいいとは言えない。
 チームの最古参、12年目の三友良平はそう話す。
 キヤノンイーグルスは今季のトップリーグで、開幕から2連敗とスタートダッシュに失敗した。初戦のNTTドコモ戦は逆転負け。次戦では神戸製鋼に73点を奪われた。

 三友自身は、初戦はメンバー外で、2戦目はベンチからピッチに立った。生え抜きのベテラン。正確なキックとハードタックルで信頼を得る選手だ。
 チームに長く在籍しているから、沢木敬介新監督を迎えて刺激を受けているイーグルスの変化を感じている。

「まだ結果を残せていませんが、いまやっていることを続けていけば、シーズンの残りの試合で勝利を続けられるとか、来シーズンの上昇など、そういう形につながると感じています」
 チームが掲げる『エキサイティング&クォリティー ラグビー』のクォリティーの部分が、まだ足りない。そこが整えば、描くアタッキングラグビーを体現できると感じている。

 神戸製鋼に大量失点を喫した後の記者会見で、沢木監督は「コンタクトプレーが嫌ならラグビーをやらなければいい」と、あえて辛口のコメントを発し、その言葉が報じられた。
 辛口の指揮官に、選手たちが萎縮することはないのだろうか。三友は、「僕自身はネガティブに捉えている者はいないと思います」と言う。
「そこだけを切り取ればきつく聞こえますが、実際は愛情を込めて言ってくれていました。言葉の裏にあるものが伝わってくるので」

 新監督に加え今季から先頭に立つ田村優新主将も、就任時から「自分は何も変わらない」、「できる、できないはあるけど、やる気がないのならやめてもらっていい(と他のメンバーに言った)」など、歯に衣着せぬ発言をしてきた。

 こちらも特に若手などは、捉えようによっては圧力を感じそうだ。ベテランは、その言葉にも「優しさを感じます」と言う。
「(主将は)もともと気配りのできるタイプです。厳しい言葉も、言わなければいけないことを言ってくれているだけ。それも(チームのこと、その選手のことを本気で考えている)優しさだと感じています」

 新体制になって半年以上が経った。三友は34歳になって、あらためて教わったことも少なくないと言う。
「沢木さんは細かいスキルを教えてくれます。ボールのもらい方。もらう前のポジショニングなども」
 学べる幸せを感じている。

 一方で、自分たちに委ねられる時間も増えた。
「昨季までは一日のスケジュールが詰まっていることも多かったのですが、いまは午前中が練習で、午後はリカバリーということが多い。個人練習をしたり、自分のために充てる時間が増えた」
 とことんやるも怠けるも自分次第。本当に強くなりたいのか否か、問われている気もする。

 チーム愛。新指揮官は、チームに合流してすぐ、それが大事だと言った。
「そこは、いろんな状況で強調されます。たとえば神戸製鋼戦で、(FBの)SP・マレーがインターセプトから走ったシーンがありました(後半16分過ぎ)。でも走り切れず、切り返されてトライを奪われた。あのとき神戸製鋼はみんなで必死に戻り、止め、そこから攻めた。その神戸と比べ、自分たちは仲間をサポートする愛情が足りなかったのではないか、と」
 そんな新しい感覚を、心地よく感じている。

 爆発力があるわけではない。首脳陣や仲間、ファンを飛び上がらせるようなビッグプレーもない。
 だけど三友は、指揮官のやりたいラグビーを理解し、自分が期待されていることを知り、それを確実に遂行する選手として生きてきたから、長く持ち場を任されてきた。
「自分のスタイルは変わりません。ただ、チームは変わった。昨年までは堅実なラグビーを目指していましたが、今季はリスクをとっても攻めるようなスタイル、ボールをスペースにどんどん運ぶラグビーを目指しています。いまうまくいっていないことを良い経験値にして、自分たちの描くプレーをやれたらきっと結果はついてくる」

 埼玉県深谷市出身。NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公として描かれている渋沢栄一の生家と実家は数百メートルしか離れていない。
「日本資本主義の父」と称されたその人の思想のひとつ、『蟹穴主義』は自身の信念とも重なる。
「身の丈を知る。ただ、そこにとどまるのではなく、まずそこで全力を尽くし、最大の貢献をする」
 地元の英雄のことを知っておこうと初めて著書を手に取って感銘を受けた。『渋沢ブーム』は、その直後に来た。不思議な巡り合わせと笑う。

 チームマンのスピリットを長く貫いてきた。それが揺らぐことは決してない。経験からも、開幕2連敗が地獄への入口でないことは知っている。
「爆発する(チームが上昇する)準備はできているつもりです」
 自分たちがやっていることを信じ切ってこそ、新しい景色が見える。それを自らの姿勢で示す。

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