Honda HEATでは、ユーモアあふれるスクラムハーフがチームを牽引している。
「レイドロー選手を見て、まずイケメンやなあと思いましたね。ダンディーやなあと」
2月20日の開幕戦。NTTコムと戦ったSH山路健太は、スコットランドの英雄と対峙してそう思った。冗談に続けて、
「試合をしていくうちに、やはりレジェンドといいますか。ラグビーをとても知っていて、強風の中でもチームを勝利に導くゲームプランはさすがだなと思いました」
Hondaは13―41の大敗で、開幕戦を落とした。特に風下に立った後半は、キックが伸びずにエリアが取れず。ボールを回したところでミスやペナルティが重なり、スコアを一方的に離された。自身とレイドローの差をこう分析する。
「風が強い中でどういうキックをするのか。ペナルティをもらった際にタッチに蹴るのか、ゴールを狙うのか。そうした1回1回の分岐点のところで、(レイドローは)いい判断をしていた」
山路はHonda在籍9年目の31歳。加入初年度のHondaはまだトップウエストで戦っていた。一昨季に獲得した最高位である9位までの成長曲線を知る、数少ない選手である。
「昔と比べて正直、一人ひとりの意識が高いなと。特にいまの若手は練習後も個人練習をみっちりやって、細かいところまで意識高くやっている。僕が入った時は、練習後はすぐに帰ったりしてたので(笑)。すごくもったいないことをしていた。いまの子は積極的にコーチ陣にもレビューを話し合って、コミュニケーションを取っている。それがいい方向にいっている」
そんな若手たちを見て、負けず嫌いの山路も奮起する。
「自分はおじさんですけど、まだまだ負けんぞと。フィットネスでは誰にも負けない気持ちでいつも前の方で走ったり、筋トレでもパワーでは勝てないけど、その分フォームや細かいところを意識したり。ただフィットネスのテストをすると、もう根塚(聖冴・SH、24歳)選手に負けてしまいますね。残念ながら(笑)」
それでも、トップリーグ全体を見渡しても明らかに若手主体のHondaにとって、山路の経験は貴重だ。それはHondaでの公式戦出場数は72試合で、現役の中で2番目に多い数字からも分かる。
「僕自身は若い子たちとしっかりコミュニケーションを取るようにしています。今日の練習どうやった?とか、ここもう少しこうした方がいいんじゃない?とか。些細なことですけど、そういうことの積み重ねでチームは良くなると思うので。(開幕戦でリザーブに入った)根塚選手とは、試合後にレビューのし合いをして、細かいところを2人で共有しました」
NTTコム戦で通用した部分もあった。グラウンドを大きく使って展開できれば、最初のトライのようにスコアはできる。そのアタックの根幹を支えるのは、やはりスクラムハーフだ。
「まずはポイントに早く寄って早くさばく。前を見てどこにチャンスがあるのか、右なのか左なのか、裏へのキックかを瞬時に判断したい」
レイドローと戦った次節・サントリー戦は、次期日本代表と目される齋藤直人とのマッチアップにもなる。
「有名な選手なので楽しみです。こんなおじさんがどこまでいけるかわからないですけど(笑)。精一杯やりたい」
鈴鹿出身で四日市農芸を卒業した山路は、今季唯一のホーム戦への思いも強い。
「本来であれば4試合あったホーム試合が、(日程の変更で)1試合になってしまった。最後のトップリーグで、ホームのラストゲームということで、たくさんの方々に見ていただいて、少しでも多くの子どもたちに夢を与えられたらなと思います」
第2節・サントリー戦は2月28日、三重交通Gで14時キックオフ。