昨今、日本の大学ラグビーを経ずに国内トップリーグへ挑む若者が相次いでいる。20歳前後のプロ選手がトップレベルの舞台で活躍するのは強豪国の潮流にも近い。
「試合に出ない限りは日本代表(への道)もない」
こう述べるのはメイン平。昨年リコーへ入った20歳は、早期の代表入りを期待されても、慎重な構えを崩さない。
奈良・御所実高時代は高校日本代表、7人制のユース日本代表にも選出されたファンタジスタ。卒業後は、日本の強豪大に誘われるなか父のマーティーさんの出生地であるニュージーランドへ渡った。そもそも幼少期から定期的にニュージーランドへ出向いていた。本来なら、中学を出てから海を渡りたかった。
「日本でラグビーをしていても誰も関心はないし、皆、『ラグビー? 危ない』という感じ。ニュージーランドでは学校の昼休みにも皆がラグビーをしていた。こういうのが強豪(国の形成)につながっていると感じました」
自分に声をかけてくれた日本の大学は、勤勉かつ力強いアスリートの育成に定評がある。それでも幼少期から自己主張を是とした青年は、「その立場(大学の選手)になって、僕は続けられるのかな」と考え、決断した。
「中途半端な気持ちで(日本の大学に)行くくらいなら、昔からの夢だった場所(ニュージーランド)へ行ったほうが成長できる」
ラグビー王国で向上心を燃やしていたメインにとって、2020年は転機となった。
一時帰国して臨んだジュニア・ジャパンの選考合宿では仕事量の不足を指摘されて落選した。
帰国後、春のロックダウンが明けると所属するノースハーバーマリストの試合に新たな課題を持って臨む。具体的には、ボールを持たぬ時の勤勉さを意識した。
声をかけてくれたリコーの小浜和己採用担当からも、契約に際し同種の課題を突き付けられていた。やがてメインは、このままニュージーランドにいるより日本のトップリーグへ挑む方がよいコーチングを受けられると直感した。
現に、リコー側に進化が認められてトップリーガーとなれば、日々の練習を多角度的に撮った動画で見返せる。向こうではできなかったことだ。
いまは、同じく新加入したSOのアイザック・ルーカスに師事する。2人は「身長178センチ、体重86キロ」と公式のサイズが同じだ。体格に頼らず荒波を乗り越える技術と知見を、メインはルーカスから学ぶ。
2月20日には東京・秩父宮ラグビー場で、初めて迎えた開幕節でデビューを飾った。パナソニックに14-55と苦杯をなめながら、28日の第2節ではFBで初先発の座をつかむ。大阪・東大阪市花園ラグビー場でヤマハに挑む。
「まずはリコーで活躍し、信頼されるプレーヤーになりたいです」
自分のしたいプレーに加え、周りにして欲しいと思われるプレーにも意欲的だ。