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沖縄・読谷高校、九州大会で躍動! 新入部員ゼロが続いたのはほんの数年前。プロセスは「一歩ずつ」

2021.02.26

数年前まで、新入生部員は「2人」→「なし」→「なし」……九州大会で存在感を見せた読谷高校(撮影:Hiroaki.UENO)

 2月22日の全九州新人大会2回戦、この日をもって大会は終了となる変則開催。九州から全国選抜へ5校の出場が決まった(東福岡、長崎北陽台、高鍋、佐賀工=以上2回戦勝者、大分東明=推薦による)。今年も感染防止対策のために影響を受け続ける高校ラグビーだが、困難の中で各チーム元気な姿を見せてくれている。

◆九州大会2回戦、全4試合の写真

 ラグリパ編集部の注目は沖縄1位で出場した読谷高校だ。

 沖縄予選では、前回花園にも出場している名護を48-0の大差で破って九州の舞台へ。1回戦で長崎南山(長崎2位)戦を乗り越え、高鍋にチャレンジした。結果は高鍋36-19読谷で選抜決定はならず(全国選抜実行委員会推薦枠の望みはあり。近日発表)。しかし、今回の足取りには、高校ラグビー全体を勇気づける光がある。

「九州の中でも、長崎代表、福岡代表のチームというのは、どこと当たっても強く、意識する相手でした」

 まず1回戦突破の喜びを語るのは読谷の久場良文監督。読谷高校の指導にあたって6年目になる。

読谷の部員は現1,2年生で20人。公式記録の選手欄は埋まらない陣容でも、必死に名門校、伝統校と渡り合った(撮影:Hiroaki.UENO)

 高鍋戦は、後半一時4点差に詰める時間帯も作ったが、高鍋のタフさに力およばず最後は15点差をつけられ安全圏へ逃げられた。それでも、ラックでのターンオーバーや、そこからの逆襲の判断、タックルなどで好場面も数多く作った。

 九州レベルでの勝利は2年前の九州大会(春)が初めて。鳥栖工を倒して同校の金字塔をたてた。かつては存続危機の部員不足に悩まされていた。久場先生が読谷にやってきた2015年度は新入生2名、その後、ゼロ、ゼロ、と続いて、2018年度に大量19名が加わって息を吹き返した。2020年度、100回大会花園予選では、決勝で名護21-19読谷の惜敗。終了直前に食らった逆転トライで散った。

 実はその前にエピソード・ワンがある。ちょうど一年前の新人戦沖縄決勝。読谷は同じ名護に3点差で敗れている。

「春は大会が中止で戦えなかった。よけいに、花園予選は勝つつもり満々でした。でも、いざリードして終盤を迎えると平常心ではいられなかった。リードして勝つという経験がなかった」(久場監督)

 メンタル。もう一つ、この試合の収穫は、強みにこだわる重要性を知ったこと。自信のあったFW戦を徹底できず、BKに出したところから逆襲を食らった。

 次のレッスンは、続くオータムチャレンジ(100回大会記念のブロック枠トーナメント)だ。相手は鹿児島工、決勝で敗れた時の経験を生かし、とことんFWにこだわって、やり切ったが、ゴールラインは遠く敗退した。

「だから今回は、やっとでした」

 久場監督は、この九州新人1回戦、南山戦の選手たちを自慢に思う。

「今回はバランスが良かった。強みを使ってどこで勝負するのか。ハーフタイム前にはFWで一つトライが取れていた。後半は最後の最後でFWががピック、ピックで取った。長崎のチームに逆転勝ちできました」

 ホップ、ステップをしっかり生かしてのジャンプだった。読谷高校はそれでも、今はまた部員20名の小さな所帯だ。卒業していく3年生も、入部時19人から、最後までプレーをした生徒は7人にまで減った。今、ラグビー部は2年14人、1年6人で戦っている。

「うちは読谷の子が通ってくる学校だし、クラブです。規模は小さくても、読谷中からのラグビー経験者もいる。なんとか頑張りたい」

 40歳の久場監督は「もう2回戦なんて、みんなクタクタですよ。ははは」とおかしそうに振り返る。練習も、規律にも厳しいほうだが、かつての新入部員ゼロ続きには、参った。

「以前は、その時に全部を伝えようとしていたけれど、一つひとついくか、と思うようになりました。今、目の前の子や部の状態も見てねって。だって生徒が辞めてしまったら、何も伝えられなくなるからね。ははは」

 以前、気になっていたことも一つひとつ片付いていった。今は、選手たち自らが指摘し合う空気に変わってきた。

 一つ、またひとつ。読谷の新チームは始まったところだ。

高鍋・湯浅大心はうまいコンタクトと瞬発力あるランで局面を打開する(撮影:Hiroaki.UENO)
東福岡124-5鹿児島実(撮影:Hiroaki.UENO)
東福岡124-5鹿児島実(撮影:Hiroaki.UENO)
長崎北陽台93-0専大玉名(撮影:Hiroaki.UENO)
長崎北陽台93-0専大玉名(撮影:Hiroaki.UENO)
佐賀工33-14大分東明(撮影:Hiroaki.UENO)
佐賀工33-14大分東明(撮影:Hiroaki.UENO)