「また、しっかりやらんといかんな、と気が引き締まる思いです」(小松節夫監督)
先月11日の大学選手権決勝で早大を下し、初めての優勝を遂げた天理大学が新チームとして活動を再開した。
◆新主将に選ばれた佐藤康。出身は新潟県、天理高から天理大に進んだ
2月16日、天理大・白川グラウンドに、まず4年生が集まった。密を避けつつ効率的にセッションをこなすため、学年別に時間をずらしての分散始動。50人を超える特大規模の4年生を束ねるのは天理高校出身のHO佐藤康(こう)だ。
「連覇はあまり意識せず、関東の大学にもチャレンジャーとして向かっていきたい」(佐藤康)
もともと学年リーダーの肩書きがあった新主将は、1月に小松監督から指名を受け、就任が決まった。
指揮官は佐藤を指名した理由にまず、プレー面を挙げる。
「スクラムでは一列で8人を束ねる役回り、ラインアウトでもスローワーを務めていて、セットプレーの重要性を実感しているリーダー。まずプレーで引っ張っていけるのが頼もしい」
プレー以外の場面でも率先して動き、笑顔が印象的だ。出身の新潟では「ニシカンジュニアRFC」に所属しSOを務めていたが、天理高に入寮すると、すでにFWで登録されていたという。168センチ、96キロの短躯で走り勝つ姿はチームのスタイルを体現している。
象徴的なのは去年の起用をめぐる小松監督の話。
決勝で4トライを挙げた1学年上のCTB市川敬太(4年→中部電力)も、佐藤康も、今からちょうど1年前の段階では、レギュラー確定からは遠い存在だったという。
「HOには佐藤ではなく、1学年下の選手を構想していました」(小松監督)
「それがいつの間にか先発に定着です。市川に至っては、前年に準決勝で中野(将伍・現サントリー)にやり込められて、ちょっと起用はイメージできなかった。それが、一人黙々と練習して4年でいちばん伸びた。課題を克服して、もともとあったアタックのセンスで貢献してくれました」
無名校や、選手としての実績がない選手が集う天理が、練習の切磋琢磨を通して個の力をつけていることがわかる。
1年後にはどんな景色が広がっているのか。天理・佐藤康のチームが航海に漕ぎ出した。