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大学王者・天理大が始動。新主将は昨年、「逆転」で先発に定着の小兵HO佐藤康

2021.02.17

学年ごとに集合した天理大。2021のシーズンは体力測定から始まった(撮影:毛受亮介)

「また、しっかりやらんといかんな、と気が引き締まる思いです」(小松節夫監督)

先月11日の大学選手権決勝で早大を下し、初めての優勝を遂げた天理大学が新チームとして活動を再開した。

◆新主将に選ばれた佐藤康。出身は新潟県、天理高から天理大に進んだ

2月16日、天理大・白川グラウンドに、まず4年生が集まった。密を避けつつ効率的にセッションをこなすため、学年別に時間をずらしての分散始動。50人を超える特大規模の4年生を束ねるのは天理高校出身のHO佐藤康(こう)だ。

「連覇はあまり意識せず、関東の大学にもチャレンジャーとして向かっていきたい」(佐藤康)

 もともと学年リーダーの肩書きがあった新主将は、1月に小松監督から指名を受け、就任が決まった。

 指揮官は佐藤を指名した理由にまず、プレー面を挙げる。

「スクラムでは一列で8人を束ねる役回り、ラインアウトでもスローワーを務めていて、セットプレーの重要性を実感しているリーダー。まずプレーで引っ張っていけるのが頼もしい」

 プレー以外の場面でも率先して動き、笑顔が印象的だ。出身の新潟では「ニシカンジュニアRFC」に所属しSOを務めていたが、天理高に入寮すると、すでにFWで登録されていたという。168センチ、96キロの短躯で走り勝つ姿はチームのスタイルを体現している。

象徴的なのは去年の起用をめぐる小松監督の話。

決勝で4トライを挙げた1学年上のCTB市川敬太(4年→中部電力)も、佐藤康も、今からちょうど1年前の段階では、レギュラー確定からは遠い存在だったという。

「HOには佐藤ではなく、1学年下の選手を構想していました」(小松監督)

「それがいつの間にか先発に定着です。市川に至っては、前年に準決勝で中野(将伍・現サントリー)にやり込められて、ちょっと起用はイメージできなかった。それが、一人黙々と練習して4年でいちばん伸びた。課題を克服して、もともとあったアタックのセンスで貢献してくれました」

無名校や、選手としての実績がない選手が集う天理が、練習の切磋琢磨を通して個の力をつけていることがわかる。

1年後にはどんな景色が広がっているのか。天理・佐藤康のチームが航海に漕ぎ出した。

新主将に選ばれた佐藤康。出身は新潟県、天理高から天理大に進んだ(撮影:毛受亮介)